『宇宙創世はじめの3分間』S・ワインバーグ
●今回の書評担当者●ジュンク堂書店池袋本店 福岡沙織
『宇宙創成はじめの3分間』、大興奮しました。大概、「何故、あれで!?」と驚かれます。私が感激屋だから。もちろん、大きな要因のひとつです。が、驚きの中身に「宇宙論に関する本で、なぜ興奮するのか。貴方には、難しくて理解するだけで精一杯だったのではないか」という疑問が混ざっていると感じることがあります。
対して私、いつもぎゅっと握りこぶし作り、お答えしています。ロマンが詰まっているではないですか!
2011年12月、皆既月食を見上げ続け、1時間。首を痛めました。しかし、悔いなし。赤い月は目に焼き付けました。また、小説『天地明察』、漫画『宇宙兄弟』小惑星探査機「はやぶさ」、ニュートリノ。近年、宇宙に関する話題は、事欠きません。なんて、楽しい!
その中にひとつ、宇宙とは何か。どうやって出来たのか。という話題を組み込むのも、また一興、ではないでしょうか。横丁カフェでも2008年に『ワープする宇宙 五次元宇宙の謎を解く』、2009年に『宇宙創成』が登場します。そちらに加えて頂きたい一冊が、『宇宙創成はじめの3分間』です。原書、日本版の発行は1977年。2度追補を加えて発行したのが、文庫版。2008年に初版発行しています。ビックバン宇宙の発見、展開。宇宙論に関して述べたものとしては、古典にあたります。
本書は数学や物理学を専門に扱わない読者にも伝わるよう、配慮された専門書です。専門書のため、日常生活でなじみのない単語が出てきます。私は初めて読む際、ノートとペンを用意しました。3回読みました。ノートに悪戦苦闘の跡が残っています。時折「意味すら理解できない」と自身の呟きがあります。今回、3年ぶりに4回目に取り組みました。
相変わらず、難しい。だから、面白い。
本書でもっとも目を引くのは、第五章「最初の3分間」です。著者である、ワインバーグ氏のことばが、熱い。例えば「しかしなんたることだろう! ニュートリノはふつうの物質とあまりにも弱くしか相互作用しないために、2Kの宇宙ニュートリノ背景を観測する方法を考え出すのに成功した人はいない。1つひとつの核子に対しておよそ10億個のニュートリノと反ニュートリノが存在していて、しかもどのようにしてそれを検出していいのか誰にもわからないというのは、本当にじれったい話である!」。
そして、続く一言。「たぶん、いつか誰かがやるだろう」。
思わず、先生! と内心叫んでしまいます。イメージできない何か、を追い求めること。自身が追い求める以上に、「わかること」へ執着すること。誰かへ託す想い。専門的な内容でありながら、惹きつけられてやまないのは、この一言を読みたいからかもしれません。
- 『アッティラ!』籾山市太郎 (2012年1月19日更新)
- 『焚書 World of Wonder』鴻池朋子 (2011年12月22日更新)
- 『夢十夜』夏目漱石 (2011年11月24日更新)
- ジュンク堂書店池袋本店 福岡沙織
- 1986年生。2009年、B1Fから9F、ビル1つすべて本屋のジュンク堂書店池袋店を、ぽかんと見上げ入社。雑誌担当3年目。ロアルド・ダール、夏目漱石、成田美名子、畠山直哉ファン。ミーハーです。座右の銘は七転び八起き。殻を被ったひよっこ、右往左往しながらも、本に携わって生きて死ねればそれで良いと思っています。