『絵封筒をおくろう』きたむらさとし、松田素子
●今回の書評担当者●ジュンク堂書店池袋本店 福岡沙織
おくる、気持ち。いま紡ぐなら、どう、繋いでいきますか?
小学4年、10歳。成人式明けに登校した。先生は言った。
「貴方たちはこの間、2分の1成人式を迎えました。今日は手紙を書きましょう。相手は10年後の自分。成人式を迎える頃、先生が貴方たちに手紙を郵送します。」
約束は果たされ、手紙は届いた。10年前の自分から、訊かれた。
「私は、ほんが大すきです。今の私も、ほんがすきですか」
3月。10歳の頃より語彙は増えたけれど、ことばを紡ぐのが、難しい。何を言ったらいいのだろうと、考えることが多いです。けれど、気持ちを表したい時もあります。叶うなら、10歳の時のような、柔らかな方法で示したい。
そこで思い出したのが、『絵封筒をおくろう』。
封筒の限られたスペースに切手を貼り、宛名を書き、それを活かして絵を描いてしまう。
もともとは『ぞうのエルマー』を描いた絵本作家デビット・マッキ―氏が始めた遊び。
イギリス在住の絵本作家きたむらさとし氏との絵封筒の往復から広がっていく輪は、見ていて目を見張ります。
この本に収められた絵封筒は、300通。松田素子、スーザン・バーレイ、荒井良二、望月千絵。絵本作家の方々の絵封筒は、作品。この人も描いている、と発見するのが楽しい。
見て楽しむだけでなく、作ってみよう、と本は誘ってくれる。
「切手であそぶ」「宛名であそぶ」「貼ってつくる」「素材であそぶ」。タイトル通り、次々繰り出されるアイディア。
それでも、こんな上手く出来るかなぁと唸っていた際、目を引いたページがあります。
「子どもたちも絵封筒を描きました!」です。
文字を書けない子供でも、切手を貼る、線を引く、いっそ手形をつけるだけでも、絵封筒は作れる。絵封筒のマナーだけ、大人が気を付ける。
ふっと肩の力が抜けました。上手に出来るかなぁと立ち止まるより先に、やってみてもいい。封筒ではなくて、小包でも宅急便でもいい。切手1枚、宛名そのものにも、込められる気持ちはあるのかもしれない。
手で触れて、確かに自分が作ったと示せるもの。たまには、そんな形で伝えてみるのも、いかがでしょうか。
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- ジュンク堂書店池袋本店 福岡沙織
- 1986年生。2009年、B1Fから9F、ビル1つすべて本屋のジュンク堂書店池袋店を、ぽかんと見上げ入社。雑誌担当3年目。ロアルド・ダール、夏目漱石、成田美名子、畠山直哉ファン。ミーハーです。座右の銘は七転び八起き。殻を被ったひよっこ、右往左往しながらも、本に携わって生きて死ねればそれで良いと思っています。