『QUIZ JAPAN』

●今回の書評担当者●ブックデポ書楽 長谷川雅樹

  • 3人で読む推理小説 スカイホープ最後の飛行
  • 『3人で読む推理小説 スカイホープ最後の飛行』
    SCRAP
    SCRAP出版
    2,160円(税込)
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 私はふだんの「文芸書」の棚のお仕事とは別に、「クイズ・雑学棚」と「脱出ゲーム」棚という、ちょっと珍しい(?)2つの棚を担当しております。自分の趣味が高じてというところで、公私混同のようなところもありますが、そのぶん専門性の高い棚になっていると思いますので、ぜひご来店いただければ幸いです。今日はその棚から、2点書籍をご紹介。

■「クイズ棚」より『QUIZ JAPAN』(セブンデイズウォー/不定期刊行)

 唐突ですが、『アメリカ横断ウルトラクイズ』という番組をご存知でしょうか。アメリカ大陸を横断しながら、数々のチェックポイントで行われる1000問以上のクイズでの闘いを経て、最終目的地のニューヨークを目指すという内容の、伝説的なクイズ番組です。私は子どものころ、この番組に、この番組で輝いたプレイヤーたちに魅了され、いつかこの番組に出場することを夢見て、雑学を趣味にするようになりました。

 時は流れ、『アメリカ横断ウルトラクイズ』は私が参加資格(年齢)を満たす前に惜しまれつつ終了し、『史上最強』『FNS』などの当時流行していた「クイズ王ブーム」をけん引した番組も終わり、視聴者が参加できるクイズ番組は、今も続いている『アタック25』を除いてはほとんど消え失せます。

 でも、クイズを愛する人は、テレビ番組が無くても、クイズを続けていました。社会人有志・大学のクイズ研究会などが主体となって開催される各種大会、そこにいるプレイヤーたちは、しっかりと、「クイズ」と言う遊びを、文化を、ずっと育てていたのです。

......そして現代。アニメ化もしたクイズマンガ『ナナマルサンバツ』(杉基イクラ・著/KADOKAWA)の登場や、「クイズ王」と呼ばれている人たちが出場する『東大王』『クイズサバイバー』などのテレビクイズ番組が増え、クイズはまた「面白いもの」として一般的に認められてきているような気がします。きっとそうです!!

 前置きが長くなりましたが、『QUIZ JAPAN』は、クイズという文化の歴史、そして今を伝える、唯一無二の雑誌です。『アメリカ横断ウルトラクイズ』やの思い出や、「クイズ王」と呼ばれた人たちの今。現在開催されているクイズ大会・プレイヤーの最新情報などが記事の主体。毎回凄いボリュームと取材量で、熱意を感じます。その熱意を感じるための雑誌と言ってもいいかもしれません。クイズにちょっとでも興味を持ったことがある方なら、きっと面白く読めることと思います。ぜひ、お読みください。

 ちなみに当店では2年前に店内で出版・書籍関連問題オンリーのクイズ大会を行いました。私が500問ぐらい作って、40人近くの参加者の方にお集まりいただき、覇を競って戴きました。とても楽しかったので、第2回も行いたいと思ってはおるのですが、文芸書担当になってからというもの問題作る時間がなく大変で......でも、必ずやります。お待ちください。

■脱出ゲーム棚より『3人で読む推理小説 スカイホープ最後の飛行』(SCRAP出版)

 私の趣味である「リアル脱出ゲーム」の企画で有名な会社、SCRAPが設立した出版社「SCRAP出版」の作品です。プレイヤー3人で、主人公の異なる3冊の本をそれぞれ読み進めていき、話し合いながら事件の謎を推理し、真相に迫っていくという内容の本。SCRAPさんの本業である「脱出」とも、ゲームブックともまたちょっと違う、類書がほとんどない本ですね。

 これがやり始めたらほんと面白くて。家族で熱中して取り組んだ結果、つい夕飯の時間をすっ飛ばすほどでした。大変なのは、ズバリ「意思疎通」。3人バラバラに本を読むため、一見たいしたことのように書かれていることでもじつは事件の重要なキーワードであり、きちんとほかの人に伝えていないと先に進めない、というような現象がどんどん起こります。1人、2人でもプレイできるのですが(じつは我が家では妻と2人で遊びました)、このもどかしい、でも解けるとみんなでスッキリとする感じ、可能ならぜひ3人で味わっていただきたいです。

 推理モノが好きな熟練者であれば早ければ90分以内。初心者の方でも、親切なヒントが用意されているので、4時間あれば完全クリアできると思います。「もうちょっとボリューム・難易度があっても良かった」と仰るお客様の声もSNS上でちらほら目にしますが、「せっかく予定を合わせて3人集まったのに、8時間近く解けなくて、次の日に持越し(orギブアップ)......」という事態になるよりはいいかな、と個人的には思いました。サクっと、でもしっかりとした謎解きを味わえる感覚、たまらないですよ。まさに「あなた(たち)が名探偵」! 慣れている方は時間設定をしてみるのも面白いかもしれませんね。

 最終的には誰にでも解ける謎ではありますが、超簡単ということもなく、とくに最終問題は歯ごたえあります。この絶妙なバランス感覚・難易度設定は、「さすがSCRAP」と感心しました(『さすがSCRAP』ってどういうことなのだろう、と思われた方はぜひ『10th Anniversary リアル脱出ゲームのすべて』(SCRAP出版)をお読みください。そもそも脱出ゲーム棚のお話のはずが、『脱出ゲーム』そのものについての解説をまったくしてないのはどうかと我ながら思います(笑))。興味のある方はぜひプレイしてみてください。

 以上2書籍をご紹介しましたが、まだまだ紹介し足りない! 機会があれば、もっとご紹介したいと考えております。深いです。

「お客様がお求めになりたいと考えておられるベストセラーを、在庫を切らさないように置く」というのは書店の大前提だと思っているのですが、それ以外の部分での書店のあり方として、それぞれの店が、それぞれの書店員が、専門性を活かした棚を作り、お客様に楽しんで頂くようになったらいいなと常日頃思っております(これいつも言っていますね)。当店はそういう意味で、ボードゲームとか、TRPGとか、サッカーとか、車・バイクとか、ほかにもいろいろ面白い棚構成にしておりますよ! お時間があれば、ぜひお越しいただければ幸いです。

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ブックデポ書楽 長谷川雅樹
ブックデポ書楽 長谷川雅樹
1980年生まれ。版元営業、編集者を経験後、JR埼京線・北与野駅前の大型書店「ブックデポ書楽」に企画担当として入社。その後、文芸書担当を兼任することになり、現在に至る。趣味は下手の横好きの「クイズ」。書店内で早押しクイズ大会を開いた経験も。森羅万象あらゆることがクイズでは出題されるため、担当外のジャンルにも強い……はずだが、最近は年老いたのかすぐ忘れるのが悩み。何でも読む人だが、強いて言えば海外文学を好む。モットーは「本に貴賎なし」。たぶん、けっこう、オタク。