『天職ガールズ』DELUXE CONTINENTAL、 藤原美奈

●今回の書評担当者●有隣堂アトレ新浦安店 広沢友樹

  • 天職ガールズ―100 girls,100 works,100 l
  • 『天職ガールズ―100 girls,100 works,100 l』
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第一希望でも第二希望、第三希望でもよいのですが、好きなことの仕事に就けている人は幸せであると思いますし、明らかに少数派でしょう。私は社会人5年目ですが、仕事ってなんでこんなに大変なんだろうと思っています。時間的な拘束力もかなりあります。好きじゃないと「働く」って続かないと思います。今回ご紹介する本には、何よりも好きなこと、信念で職業を全うしている100人の女性が登場しています。題して「天職ガールズ」。新刊で届いた際まず目を引いたのが、冒頭のページにある編集者のmonologueです。

「28歳 年収300万円台 彼氏いない歴3年 かなり長い間出会いはないが、そのうちあるよと自分を励ます。20代前半より声がかかる機会が減ったことは見てはいけない現実。女に生まれてきたからには子供だって産んでみたい。女として、自分自身として、どう生きていけばいいのか 今となってはよく分からない。何を大切にしていけばいいのか...
もし答えがそこになかったとしても、きっと元気をもらえるはずだ。」

同年代として心にグッときました。私たちには親の世代のようなとりあえずの安定がもはや社会にはありません。そんな社会の厳しさを充分乗り越えて、さらに輝いている女性たちがこの本には紹介されています。

私が興味を惹かれたのは康本雅子さんです。
「踊ることがとにかく好きなんです。ダンスバカなんです(笑)」とおっしゃる康本さんはNHKトップランナーにも出演したことのある、コンテンポラリーダンス界で今最も注目されているダンサー・振付家です。大学を中退して出た放浪の旅の途中、アフリカでサバールダンスに出会い、一日中踊る生活を体験。そんな彼女が生み出すダンスは、他に類を見ない、個性と、ときに官能的な魅力が光ります。音楽にあわせて身体を動かすことがなによりも好き、もっと気持ちよくなりたい、と素直にシンプルに願う康本さんの姿勢に勇気づけられます。

先日、NHK「3カット美人」という番組(すごく美人なんです康本さん)で特集されていたことに感動して今回の原稿を書きました。バレエに比べて、コンテンポラリーダンスの関連書は恐ろしいほど存在しません。「コンテンポラリーダンス徹底ガイドHYPER」(作品社)や美術手帳05年12月号などが見当たります(そしてこの原稿を提出した本日。乗越たかおさんの新刊「どうせダンスなんか観ないんだろ!?」(NTT出版)が届きました)。劇作家の活躍により盛り上がりをみせる演劇よりももっとマイナーなジャンルであることは確かです。未知な世界にとっつきにくい不安を感じる人も多いでしょう。「見たって面白いのか」と。僕もそうでした。しかし、康本さんの公演を実際に観に行っていただけると、彼女の身体表現のカッコ良さに心を鷲掴みされること請け合いです。
日本には舞踏という伝統があるらしいと知りました。

9月より新浦安店に異動になりました。横浜駅西口店のみなさま、本当にお世話になりました。

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有隣堂アトレ新浦安店 広沢友樹
有隣堂アトレ新浦安店 広沢友樹
1978年東京生まれ。物心ついた中学・高校時代を建築学と声優を目指して過ごす。高校では放送部に所属し、朗読を3年間経験しました。東海大学建築学科に入学後、最初の夏休みを前にして、本でも読むかノと購買で初めて能動的に手に取った本が二階堂黎人の「聖アウスラ修道院の惨劇」でした。以後、ミステリーと女性作家の純文学、及び専攻の建築書を読むようになります。趣味の書店・美術展めぐりが楽しかったので、これは仕事にしても大丈夫かなと思い、書店ばかりで就活を始め、縁あり入社を許される。入社5年目。人間をおろそかにしない。仕事も、会社も、小説も、建築も、生活も、そうでありたい。そうであってほしい。