『親から子へ伝えたい17の詩』ドロシー・ロー・ノルト
●今回の書評担当者●精文館書店中島新町店 久田かおり
一年の中で二番目にわくわくする日、それはクリスマス。
カソリック系の学校に通っていた4年間だけ、にわかエセクリスチャンだったけれど、本当は12月31日の11時59分までお寺で煩悩を除き、1月1日になった瞬間に神社へ移動してお神酒を頂く、典型的な日本人である。なのでその意味や背景とは全く関係なくイベントとして楽しんでいる。
クリスマスと言えばサンタさん、サンタさんと言えばプレゼント。プレゼントと言えば貰うのもあげるのも嬉しいもの だ。
いや、そりゃまぁ貰う方が嬉しいかな。特にローマ字の付いたバッグとか、宝石キラキラのピアスとか、ウサギさんごめんなさいのマフラーとか...
いやいや、そんな高価なものでなくとも例えば大好きなマシュマロやとろけるプリンや一口チョコであっても「プレゼント」と言って渡されたらそれだけで嬉しくなっちゃう。
そう、プレゼントが嬉しいのは相手が自分のために選んでくれた物であるからなのだ。
今この瞬間にも世界中の「サンタさん」がプレゼントをあれこれそれどれと選んだり悩んだりしているだろう。そんな「サンタさん」たちにオススメしたいのがこの本。
ジョン・レノンからビートたけしまで、様々なヒトの「詩」が紹介されている。親から子へ、と言うテーマで選ばれた17編なのだけれど、子から親へでも、友から友へでも、彼から彼女へでもとにかく大切なヒトへ伝えたい言葉がみちみちと溢れているのだ。
どの詩もしみじみと心に染みこんでくるのだけれど、生まれつきの病のため幼くしてこの世を去った山田康文君とお母さんの詩に強く胸を打たれる。「ごめんなさい」が「ありがとう」に変わる瞬間の美しいきらめきを全身で受け止めるべし。
今回は聖夜特別号なので(嘘です、勝手に決めました、ごめんなさい)クリスマスに読みたい贈りたい本をBOM!と紹介しちゃうのだ。
『まどから、おくりもの』五味太郎/偕成社。とんちんかんなプレゼントを贈るサンタさんにドキドキはらはらするしかけ絵本。
『きよしこ』重松清/新潮社。うまく言葉が出ないきよし君のところへやってきた「きよしこ」が本当に大切なものは何かを教えてくれる。
『Presents』角田光代/双葉社。人生の様々な場面で贈られるプレゼント。それはモノではなくそこにこめられた心。
そして最後は『羊男のクリスマス』村上春樹/講談社。村上小説でおなじみの羊男が呪いを解くために旅に出る。ほんのりしょっぱくてちょっぴり甘い、まるで塩キャラメルのような絵本なのだ。
今年のクリスマスは世界中の子供たちが笑顔で過ごせますように!!!
- 『有栖川有栖の鉄道ミステリー旅』有栖川 有栖 (2008年11月13日更新)
- 『おそろし ― 三島屋変調百物語事始』宮部 みゆき (2008年10月9日更新)
- 『美女と竹林』森見登美彦 (2008年9月11日更新)
- 精文館書店中島新町店 久田かおり
- 「活字に関わる仕事がしたいっ」という情熱だけで採用されて17年目の、現在、妻母兼業の時間的書店員。経験の薄さと商品知識の少なさは気合でフォロー。小学生の時、読書感想文コンテストで「面白い本がない」と自作の童話に感想を付けて提出。先生に褒められ有頂天に。作家を夢見るが2作目でネタが尽き早々に夢破れる。次なる夢は老後の「ちっちゃな超個人的図書館あるいは売れない古本屋のオババ」。これならイケルかも、と自店で買った本がテーブルの下に塔を成す。自称「沈着冷静な頼れるお姉さま」、他称「いるだけで騒がしく見ているだけで笑える伝説製作人」。