『ジャッジメント』佐藤青南
●今回の書評担当者●芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
こちらの連載で紹介させて頂いている作品はこれまで既刊オンリーでしたが先日読ませて頂いた作品がとても良かったので珍しく新刊を取り上げさせて頂きます。
こちらを書かせて頂いている現在も熱戦の続いている高校野球をテーマにした作品です。
県立の実績のない野球部が1人のエース宇土の出現によって勝ち上がっていくという過去パート。
一方でそれから6年後そのエースがプロ野球選手になったものの戦力外通告を受けトライアウトにも引っかからずさらには所属していたチームの監督が殺された事件の被疑者として留置場に拘留されている事態という現在パート。それが大体交互に語られていきます。
この事件の弁護士になったのは野球部時代に宇土の出現によって控えピッチャーとなってしまった当時のチームメイト中垣。
宇土自身は容疑を否認していますが事件当日、しかも事件直前まで被害者と一緒にいたという宇土。さらには被害者と宇土が一緒にいたという証拠の防犯カメラの映像や目撃者までが出て来て状況的には宇土にとって相当不利な状況。そんな中でかつてのチームメイトの為に何とか状況を好転させようと奔走する中垣。
さらには対決する検事が凄腕なのに対してまだまだ駆け出しの中垣。
そんな事態を知り当時のチームメイトも協力するのですがあまり状況も変わらないまま始まってしまう裁判。そしてようやく掴んだ逆転への証人が......。
中垣はこの絶対的不利な状況を打破出来るのか?
単なるチームメイトではないそれを超越した友情に心打たれます。
やはり高校野球は良いものだ。
甲子園を目指していなかったとしても1人のスーパーエースの出現によってみんなの気持ちが徐々にではあっても1つの大きな目標に向かって傾いていく。
そしてその目標に向かって本気で本音でぶつかっていったからこそ心からのつながりが出来てそれが大きな力となる。
是非是非この友情を直に感じてみて下さい。
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- 芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
- 二浪の末ようやく大学に受かったものの結局一年で中退。その後は浪人時代に好きになった読書の為にメインで本を買わせて頂いた今の会社の津田沼店のアルバイトに応募。採用して頂き勤務。2011年11月より高田馬場店に異動になり現在に至ります。趣味が無駄に多く好きなものはトコトン突き詰める性格です。