『青木学院物語』山口小夜
●今回の書評担当者●芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
小学生の頃は色んなあだ名があって今改めて思い返すと赤面してしまうのも多いように思う。ちなみに自分の中で未だに覚えているのは《社長》それに《ゲッツ》だろうか。
《社長》はなんで社長だったのか解らない。確かご両親が社長だった訳ではないと思うので尚更不明である。そして《ゲッツ》は私のあだ名である。なんでかと言うと野球のダブルプレーをゲッツーと言っていたのを野球中継で聞き何だか気に入ってしまいそれをやたらに教室で言っていたら気が付いたらそんなあだ名に。
しかも自分の仲の良いグループはゲッツ組になっていたという次第。誓って某芸人さんのギャグではありません。
余談が長くなってしまったが今回紹介させて頂きますのはそんな誰にでもある小学生時代の話。『青木学院物語』です。舞台は主人公の《姉貴》が小学5年生と6年生の時でやはりたくさんのあだ名が出て来ます。
そして青木学院というのは学校名ではなく塾の名前です。しかも多少訳ありの。入りたくて入塾希望を出しても簡単には入れない。
一応受験対策の塾のようですが教え方も変わっていてメインで《ご先祖》という先生はいます。しかし生徒の中で出来の良いメンバーがどちらかというと出来の良くない生徒に問題を出したりしながらみんなで考えていく。そんな形態もとっています。
先程から塾と言っていますが授業のシーンは圧倒的に少なく生徒たちの放課後?のシーンがほとんどです。なので構えず気軽に読んで頂けます。
あくまで個人的な意見ですが小学生時代は当人たちには意識はないかもしれないけれどある意味無敵。そんな無敵キャラたちが繰り広げるかけがえなき愚行。実際に行動に移した人はほとんどいなくても想像(否、妄想かな)したことがある人は多いのではないでしょうか。
自分は何か色々嫌なことがあったりして落ち込んだ時にこの作品を手に取ります。涙も浮かんでしまうのですがそれ以上に元気をもらえる作品。夏のロングセラーと謳われていますがいつでも手にして欲しい作品です。
どんなかけがえなき愚行が行われているのかぜひぜひ確かめてみて下さい。
先日いじめをなくそうという番組を見たのですがみんなこんな子供たちだったらそんなこと考えなくても良いのになあと思いました。
- 『ジャッジメント』佐藤青南 (2013年8月15日更新)
- 『むかし僕が死んだ家』東野圭吾 (2013年7月18日更新)
- 『十角館の殺人』綾辻行人 (2013年6月20日更新)
- 芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
- 二浪の末ようやく大学に受かったものの結局一年で中退。その後は浪人時代に好きになった読書の為にメインで本を買わせて頂いた今の会社の津田沼店のアルバイトに応募。採用して頂き勤務。2011年11月より高田馬場店に異動になり現在に至ります。趣味が無駄に多く好きなものはトコトン突き詰める性格です。