『江川卓が怪物になった日』松井優史

●今回の書評担当者●芳林堂書店高田馬場店 飯田和之

  • 江川卓が怪物になった日 (竹書房文庫)
  • 『江川卓が怪物になった日 (竹書房文庫)』
    松井 優史
    竹書房
    6,951円(税込)
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「怪物、高校時代が一番速かった、空白の1日、社会現象、うるぐす」まだまだ色々な形容詞が出てくるとは思いますがこれらはすべてご存知江川卓さんを指している言葉です。

 ちょっとジャンルを変えると『ドカベン』の中に出てくる江川学院のエースが中二美夫でこちらは江川卓さんの弟の中さんと父親の二美夫さんの名前から来ています。

 また野球だけではなく『キン肉マン』の中でもキン肉マンの名前はキン肉スグル、お兄さんの名前はキン肉アタルです。

 自分は巨人ファンなのでもちろん江川さんのことは知っていますが当時まだ子供だったせいか悲しいかな、あまり現役時代のことを覚えていません。覚えていることと言うと「ストレートとカーブくらいしか球種がない」、あとは最初に書きました「高校時代が一番早かった」です。

 今回紹介させて頂きます『江川卓が怪物になった日』松井優史著(竹書房文庫)ではこの色々な方が話しているとされる「高校時代が一番速かった」をどのように速かったか当時の球児たちに、たくさん話を聞いて検証している作品になっています。

 江川卓さんのことを聞くと聞く人聞く人「凄い」という言葉が帰って来ます。江川さんの球はとにかくバットに当たらず当たっただけでも凄いこと、それだけでも恐るべきピッチャーです。

 もちろんそれだけではなく高校時代はノーヒットノーラン12回そのうち完全試合2回、連続145イニング無失点などビックリするような記録がたくさん出てきます。

 また快速球投手というくくりではくくり切れず、ルックスも交えて「怪物くん」と言われましたがそのうちあまりの凄さに「くん」が取れてしまい「怪物」になったとのことで元祖「怪物」でもあるのです。

 それにしても高校時代の方が凄かったピッチャーって他にいるでしょうか。もちろんドラフトにかかるようなピッチャーは素晴らしい実績を残してはいますがプロになってしまうとまず高校時代の成績は出てこないもの。それが出てくるというのはやはり「怪物」なのです。

 ちなみに現在は解説者として活躍されていますが独自の分析による解説で個人的には先月の江本孟紀さんと並んで公平な解説をして下さる信頼出来る解説者の方です。

 松坂大輔投手、田中将大投手と、怪物はたびたび現れて来ますが高校時代限定にすれば真の怪物は江川卓さんしかいないのではないでしょうか。

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芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
二浪の末ようやく大学に受かったものの結局一年で中退。その後は浪人時代に好きになった読書の為にメインで本を買わせて頂いた今の会社の津田沼店のアルバイトに応募。採用して頂き勤務。2011年11月より高田馬場店に異動になり現在に至ります。趣味が無駄に多く好きなものはトコトン突き詰める性格です。