『惡の華』押見修造
●今回の書評担当者●あおい書店可児店 前川琴美
薄々は気付いていたが、気付かないフリをしてた。本が好きってことがカッコわるく、ダサいってことを。クラスメイトにも隠さねば学校という場所を生き延びるすべはない。みんなと同じ「普通」ってヤツを上手く装え。浮くことは死......だから本を読んでいることは秘密......って、みなまで言うな! その事実に蓋をして生きているっていうのに! 体操服盗んじまう(盗むなよ)主人公春日くんに、読書=レジスタンス的行為であると、ずばり言い当てられて、うるさい、変態、お前なんかに同情はしねえ、こちとら腐っても書店員だ、本が売れてなんぼじゃ!と罵りながら読み始めたが、まあ、途方に暮れますですよ。いつのまにか呆れるほど共感し、呼吸をするのも忘れちゃう。ええ、そういえば私も「クソムシ」です、そのこと忘れてましたです、ハイ。と正座したくなる。
それにしても、1ページ1ページが鉛のように重いの何のって。ミューズの佐伯さんはキャラ崩壊しながらも、「向こう側には行けない、この世界はどこまで行っても灰色」だと突きつける。運命のファムファタル仲村さんは「向こう側なんて無い、こちら側も無い。どこへ行っても私は消えてくれない」から脳みそをバットでぶっとばせと命令する。プンプンだってびっくりっすよ、このダークサイドロリ汁の煮詰め具合。濃い......濃ゆすぎる......太宰もあの世で地団駄踏んでるレベルだぜ......。
全てのキャラが自分を内臓の裏側までさらけ出し、それぞれ血飛沫を飛ばしながらもがいている。他者と共に。それでも一人で自分と向き合う痛みに耐えている。痛い......痛すぎる。出血多量なのに失血死手前で寸止めだ。その痛みはもう既に自分の痛みだと読者は痛感するだろう。
10巻で春日くんは、メフィストよろしく契約で結ばれたハズの仲村さんと再会するのだが、ハイ、続きは次巻、ってムリムリ! 仲村さーん! 春日くーん! 自身の半身が共鳴しあっているような、あの生々しいつながりはどうなるの? 二人の未来はあるんかい、どうなるんじゃー!
作者はきっと誰よりも本が好きなのだ。過去の自分と同じ生き辛さを感じている人みんなを、全力で応援していると思う。コミックは読むが活字の本は読まない人(多いよ、ホントに多すぎるよ)も含めて。本ではなくコミックというツールで。ま、巨人を巨人で制す、みたいな? いや違うだろ。とにかく、このコミックを読めばきっと本も読みたくなってくるだろう。さあ、このコミックを読んで、その後、目にとまった本を何でも良いから手に取ってくれ。
- あおい書店可児店 前川琴美
- 毎日ママチャリで絶唱しながら通勤。たまに虫が口に入り、吐き出す間もなく飲 み下す。テヘ。それはカルシウム、アンチエイジングのサプリ。グロスに付いた虫はワンポイントチャームですが、開店までに一応チェック! 身・だ・し・な・み。 文芸本を返品するのが辛くて児童書担当に変えてもらって5年。