『われはロボット 決定版』アイザック・アシモフ

●今回の書評担当者●マルサン書店仲見世店 小川誠一

  • われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
  • 『われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)』
    アイザック・アシモフ
    早川書房
    782円(税込)
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 2回目の登場という事で少し慣れてきました。静岡県沼津市マルサン書店小川と申します。杉江様より、「2回目もお願いします」と再度ご依頼いただきましたので、「ああっ、とりあえず1回目はOKもらえたんだ......」と、ホッと胸をなでおろしている次第であります。

 そして! 杉江さんもやはりというか、「足に雑巾を括りつけて、教室でジェットストリームごっこをしていた。」との告白をいただきました。 

 オカシイのは俺たちだけではなかったw よかった! と今、無上の安心感に包まれております。「オレもやっていたぜ。」とか「大気圏突入、知ってる?」などのネタをお持ちの方は、すぐに杉江さんまでご連絡お願いします。

 さて幸運にも『宇宙の戦士』を見つけ読み始めた子ども時代ですが、もっともっと他の作品を読みたくなってきました。「かっぱえびせん」のような感じです。

 日を置かず、またしても近所のいつもの本屋さんに足を運ぶわけです。初めはやはりハインラインの著書を無難に購入し始めていたのですが、「他にもカッコいい表紙の本があるじゃん」と、他の著者さんの作品も手に取り始めます。そこで......「おおっ、これは前に図書館で読んだことがあるぞ。」という作品にも出会い始めました。図書館に蔵書してある本は、子供向けにローカライズされ読みやすくなっている作品ばかりですが、しかしそこで今でもはっきりとストーリーを覚えている作品とその棚で出会ったんです。

 題名は、アイザック・アシモフの『われはロボット』。

 ロボ心理学者のスーザン・キャルヴィン博士が、昔の出来事を振り返りながら話を進めていく短編です。どのエピソードも素晴らしく面白い!とくに一番好きなエピソードは「ロビィ」。多くの方が読んだことがあると思います。少女と子守りロボットとの交流を描いた大変泣ける、そして幸せな気持ちになる作品ですね。ここであらすじを話してしまうと未読の方の読む楽しみを奪ってしまうことになりますので......話しません。ご了解ください。

 でも言っちゃおうかな? 

 最後のシーン、あの工場でのシーンですよ。あのシーンで涙ぐまない人は絶対いません! 断言できる。子供向けの本より、原作の描写がリアルだったのか? それとも年を取ったせいか?(いや、その時まだ子供だし)。学校の図書館にあった本を読んだとき以上の感動がそこにはありました。そしてこの本を大人になった時、または子供が出来たときに読み返す。何度も何度も読み返すたびに違った感情が湧き上がってくる。本当にスゴイ作品です。

 ですが、アシモフの作品には暖かいモノがある反面、人間の弱さ・狡さを強調している描写もたくさんあります。もう一作品、いまでも購入可能な作品に『鋼鉄都市』がありますが、アシモフが提唱した「ロボット三原則」を巧みに入れ込んでいるところがミソですね。

 これはまさに人間の醜さをミステリー仕立てにしたロボットSF作品の決定版。ただ面白いだけではない。そこには何か大事な何か......が、感じられる。言葉に出すと色あせてしまいそうだが、やはりそこには何かがある。それを私に気づかせてくれた作家でもありました。

 皆さん、次回も原稿依頼があることを祈っていてください。

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マルサン書店仲見世店 小川誠一
マルサン書店仲見世店 小川誠一
1968年生まれ。SF・冒険小説が大好き。最近は読むスピードが落ちているのが悩み。