『戦士志願』ロイス・マクマスター・ビジョルド
●今回の書評担当者●マルサン書店仲見世店 小川誠一
もう6回目。ネタ切れかなぁー? と前回弱音を吐いてしまいましたが、最近久しぶりにじっくりと本棚を見ていたら......あららららっ、あ、ここにあったのかぁーと。重なり詰め込まれている棚の奥の方から懐かしい本が沢山出てきましたよ。いまではもう手に入らないエドマンド・クーパーの『アンドロイド』やジェリー・パーネルの『アララットの死闘』などなど、まだまだあるわ、あるわ。時間のある時に読み返したい作品ばかりでした。
個人的感想でスミマセンが、30年以上前のSF小説の表紙は今よりもカッコいい! と思います。うまく言えないけど手を伸ばして触れたくなるような感覚というのでしょうか、思わず手に取りたくなるような雰囲気を持っていますね。
店頭でお客さんが本を手に取ったら......もう70%は買ったも同然です!(根拠ナシ) それは何なのか。何か人知を超えた何かが作用しているのかもしれない。まぁムー的な件は置くとして、たぶん今ほど宇宙の事が身近ではなかったし映像化される作品も少なかった。宇宙は只々神秘的で簡単には人間を寄せ付けない未知の空間だったからではないか?その深淵を覗き込む好奇心を持つ者は地球上でも数少ない人たち。つまり私たちSFファンだったと思うのです。
本日ご紹介する『戦士志願』は、まさに私たちSFファンならば必ず夢見る宇宙冒険小説。
あらすじは、貴族に生まれながら、生来の身体的ハンデのため士官学校への道を閉ざされた17歳のマイルズ。一度は絶望の淵に立たされた彼だったが、とある事情で旧式の貨物船を入手、身分を偽り、戦乱渦巻くタウ・ヴェルデ星系へと乗り出した。だがさすがの彼も予期していなかった、ぬきさしならぬ状況下で実戦を指揮することになろうとは。卓越したストーリーテリングの大型作家、堂々登場。
まずティーンエイジャーなのに宇宙艦隊を指揮しちゃう! という設定だけで男子の心を鷲掴みです。度胸と話術で宇宙空間を暴れまわる主人公マイルズにシビレテくるぜ!(古い?) 骨が脆くすぐ折れてしまうハンデを背負いながらも、勇気と知恵とハッタリwで困難を乗り越え、まさに何もない状態から軍隊経験がないにもかかわらず、傭兵部隊を創設し艦隊にまで育て上げてしまう。痛快が連続で押し寄せてくるこの波にあなたは絶対夢中になる!
でもマイルズにも弱点が......恋愛チョー苦手。そこは17歳ですから。もし読者が男子中学生か高校生なら、感情移入度は恐ろしく高いに違いありません。あなたも早速マイルズの仲間になり、宇宙空間を暴れまわりましょう。
実はこの作品はシリーズ化されており、〈ヴォルコシガン・サガ〉と呼ばれております。
シリーズを追うごとに戦闘シーンだけでなく政治的な駆け引きも出てきたりと、スケールがどんどん大きくなっていきます。『銀河英雄伝説』が好きで未読な方には特におススメ。そして......著者が女性だと分かった時は衝撃でした! ここまで若い男性の気持ちがわかるなんて。著者のL・M・ビジョルドはファンタジー作品も書いており、こちらも読んでいただけると嬉しいですね。
- 『エンダーのゲーム』オースン・スコット・カード (2017年8月3日更新)
- 『断絶への航海』ジェイムズ・P・ホーガン (2017年7月6日更新)
- 『われはロボット 決定版』アイザック・アシモフ (2017年6月1日更新)
- マルサン書店仲見世店 小川誠一
- 1968年生まれ。SF・冒険小説が大好き。最近は読むスピードが落ちているのが悩み。