『銀河英雄伝説』田中芳樹
●今回の書評担当者●マルサン書店仲見世店 小川誠一
出戻りですw
静岡県沼津市マルサン書店小川と申します。
前回「これが最終回です。いままで本当にありがとうございました!」というお別れの言葉を口にしたくせに、性懲りもなく戻ってまいりました。 え? どうして? という言葉が聞こえてきましたが。
本の雑誌杉江さんに頼み込みまして......。
その時の状況はというと。
「あと数回できませんか? いいですか? いいですよね!」みたいな。
半ば脅迫です。
スミマセンがもうしばらくお付き合いくださいませ。
さて、少年は宇宙が大好き! という定説は皆さんご存知だと思いますが、中でも大規模な宇宙艦隊戦の場面は燃えますね。自分も宇宙戦艦に搭乗し、広大な宇宙空間を所狭しと暴れまくる爽快感に飲み込まれてしまうからでしょうか。
私は、なんとなく国内作家さんのSF小説は避けてきたというか、そんな期間が長かったのですが、ある時期に書店のノベルスコーナーでチラリと見かけたのが本日ご紹介いたします『銀河英雄伝説』でした。
昔はベストセラーが連発され賑わっていたノベルスコーナーも今では一定のファンの方のみが応援するキビシイ状況です。ですが、その当時は全く状況が違いました。様々なジャンルの野心的な新刊がノベルスコーナーを盛り上げていましたし、一種異様な活気もありましたね。
そしてその書店のノベルスコーナーには、少し古めかしい宇宙戦艦が描かれていた表紙の作品がドドーン!と積んであったのです。早速手に取りパラパラめくりました。手に取った段階で購入確率は70%UPです(根拠ナシ)。すぐレジへ。
これは久しぶりに熱中した作品でした。戦術と戦略を上手くミックスした臨場感あふれる宇宙艦隊戦がそこには描かれていて、悲しくも強い決意を秘めた美青年を登場させて女性読者だけでなく男も惚れさせました。「ラインハルト」ですね! そう、この名前がでたら大抵の人がタイトルを思い浮かべることが出来るという日本最高のSF小説『銀河英雄伝説』。略して『銀英伝』にどっぷり引き込まれてしまったのです。個人的には「ヤン・ウェンリー」が好きです。ガサツなところがたまらないぜ。漫画もあったしゲームもありました。
漫画は道原かつみさんが描かれていましたが、ピタッとハマっていましたね。ここまで壮大なスケールで描かれた『銀河英雄伝説』は世界に誇れる日本のスペースオペラでしょう。著者の田中芳樹さんは他にも素晴らしい作品を連発しています。『アルスラーン戦記』や『創竜伝』はやはり同じく漫画にもなり読者の幅を広げました。田中芳樹さんの作品は漫画との相性も抜群なので、こういった展開が出来るのです。複数のメディアを横断するという作品は書店の店頭でも大変重要な意味を持ちます。様々なフックがあればあるほど、たくさんの人たちに訴えかけることが出来るので売り場が創りやすくロングでの展開も見込めます。
ただ最近気になるのは、こういった作品の寿命というか賞味期限が極端に短いような気がします。もちろんたくさんの魅力的な作品が出てくる事には大歓迎ですが、あまりに早いサイクルに流され大事な何かを見落としていないか、ふっと考えてしまうのです。老化現象w
そしてひと昔前のSF作品をまた棚から引っ張り出して読み始める。魅力的な作品は数多くありますが、何度も読める本は......。
ぜひ3回以上読んでいるあなたのSF小説を教えてください。
- 『失われた世界』コナン・ドイル (2017年11月2日更新)
- 『海底2万里』ジュール・ヴェルヌ (2017年10月5日更新)
- 『戦士志願』ロイス・マクマスター・ビジョルド (2017年9月7日更新)
- マルサン書店仲見世店 小川誠一
- 1968年生まれ。SF・冒険小説が大好き。最近は読むスピードが落ちているのが悩み。