『ラテに感謝!』マイケル・ゲイツ・ギル

●今回の書評担当者●有隣堂川崎BE店 佐伯敦子

  • ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life―転落エリートの私を救った世界最高の仕事
  • 『ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life―転落エリートの私を救った世界最高の仕事』
    マイケル・ゲイツ・ギル
    ダイヤモンド社
    1,728円(税込)
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 終身雇用が、音もなく崩れたというか、風と共にいつの間にか去っていった、今という時代。「将来に不安が全くない。」と言い切れる人は、少ないと思います。さもなければ、よっぽどのポジテイブシンキングの持ち主。
 ズバリ、リスとトラは、あなたの隣にも、私の隣にもいるのでしょう。「明日から、来なくて、いいから。」なんて、突然の解雇宣言。誰の身にも起こってもおかしくないのです。

 このお話は、アメリカでの実話で、いい大学を出て、まさに広告業界という花形職業に就き、スーパーエリートで家族を顧みることはそれほどなかったけれども、重役まで登りつめた一人の男が、ある日、突然解雇されてしまうところから始まります。50代半ばで職を失ったマイケルは、それでも今までコネを生かして、コンサルテイング会社を興し、ぼちぼちとやってはいたのですが、だんだんと人々は離れていき、やがて仕事が無くなってしまいます。
 さらに悪いことに、夫婦の間にも、冷たい空気が流れるようになり、マイケルは偶然出会った女性と愛人関係になり、子供までつくってしまうのです。もちろん、家庭は崩壊。 経済的にも苦境に転落した64歳のマイケルが見つけた職業が、スターバックスのアルバイト。で、初めてやる仕事にとまどいながらも、マイケルは、この年になって、自分の人生や、回りの人々や、仕事を愛することが、どんなに大切なことなのかに、気づきます。

 スタバって!コーヒーやクッキーが美味しいだけじゃないんだ! スタバ大好きの私には、ここで描かれているスタバの感動的な仕事ぷりとか、スタバによって、人生を変えたマイケルの上司や同僚、コーヒーを楽しみに来るお客様の様子や、こんなに日常って、喜びにあふれているものなのか、楽しく楽しく読みました。

 年をとるって、どこの国でも、圧倒的に不利な状態になることなのでしょうか? 人生は、思ったほど長くて、不安と寂しさに押しつぶされそうな人生を送るより、バリスタとして、新たな人生を歩みだしたマイケルは、まさに別の意味でのアメリカンドリーム。人生は、ぶれないように進んでいきたいものです。

 "トム・ハンクスで映画化"と帯に書かれており、えっ!あのトムもそんな年齢の役をやるようになったかと...そして、みんな年をとってしまった...(アガサ風に)

 もし、何かに悩んでいたり、どん底にいるような気持ちの方がいたら、ぜひ手にとって読んでみてください。マイケルのようにうまくいくかどうかはわかりませんが、とりあえず、希望を持って、温かい気持ちで前に進んみようと思い始めることができると思います。
 人生は、いつからだって、きっとやり直せる。(と自分に言い聞かせています。)

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有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが大好きで、登下校中に歩き読みをしながら、電信 柱にガンガンぶつかっていた小学生は、大人になり、いつのまにか書店で仕事を見つけました。あれから二十年、売った本も、返品した本も数知れず。東野圭吾、小路幸也、朱川湊人、宮下奈都、大崎梢作品を愛し、有隣BE姉、客注係として日夜奮闘しています。まだまだ、知らないことばかり、読みたい本もたくさんあって、お客様から、版元様から、教えていただくことがいっぱいです。