『食べて、祈って、恋をして』エリザベス・ギルバード

●今回の書評担当者●有隣堂川崎BE店 佐伯敦子

  • 食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書 (RHブックス・プラス)
  • 『食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書 (RHブックス・プラス)』
    エリザベス ギルバート
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 観てから、読むか。読んでから、観るか。少し前のどこかの出版社さんのPR戦略ではないが、いい映画を観ると本当に困ってしまう。

 私は、映画を観てから原作を読むということを、まずしない。昔読んだ本が、映画化される時も、よほど気に入った俳優さんが出ていなければ、観ることはない。たぶん、元からの貧乏性のせいか、より多くのストーリーに触れなければと、何か書店員の強迫観念のように思っていることがあるせいなのかもしれない。

 この本の表紙。そう、映画のポスターもそうだった。主演のジュリア・ロバーツがジェラードを美味しそうに食べて、スプーンを銜えたまま、ほんの少し上向き加減に楽しそうに笑っている。久しぶりのジュリア・スマイルに懐かしさを覚え、予告編で観た歯がほとんどないおじさんに(まるで『奇跡のリンゴ』のような)導かれるように封切り日に勇んで観に行った。

 プリテイ・ウーマンから、もう何年も経ってしまい、それ相応に年齢を重ねたジュリアだけれども、あの高笑いとこぼれるような微笑はいまだに健在で、何かほっとするような気持ちにさせてくれた。

 NYの作家で30代前半のリズ・ギルバートは、ある日突然息苦しくなった結婚生活に終止符を打つことを決意。その後、新しい年下の恋人と出会うが、やがてそれも決裂。傷心のリズは、自分を取り戻すために、イタリア、インド、バリへと一年、旅に出ることを決意します。

 読んでいても、観ていても、本当にイタリアは、楽しい。食べることへの情熱。何もしないことが最も贅沢なお国柄で、自分の人生をどうエンジョイしていくのか、パワフルなエネルギーがたくさんで、リズも徐々に元気を取り戻していきます。

 そして、インドへ。ここでは、お祈りづけの毎日。この実話はスピリチュアルコーナーにあってもよさそうなお話で、現代版シャーリー・マックレーン本のようなもの。以前シャーリーに転倒していた私は、修行も瞑想にも、興味深深。瞑想を通して、人は神様を感じることができるようになるのだろうか? 奇跡を目にすることができるようになるのだろうか? 映画では、神様が自分の内にいることに気づいたリズにその瞬間、象が近寄っていく素敵なシーンがあり、『ナル二アの国のものがたり』のアシュランを思い出し、なんとも幸せな気持ちになった。
 
 そして、最後はインドネシアへ。バリでやっとあの歯がほとんどないおじさんが再登場。素敵な笑顔で乙ななことを言い続ける。そして、リズが出会う運命の恋人。実は、ここで映画とは異なった展開が本の中では、描かれており、人生は、スピリチュアルな部分と現実的な部分と、うまくバランスをとりながら生きていかなくてはいけないのだなあと思わせるような事が起こり、とてもうまく綴られている。

 いい本だ。読むと元気になれる。

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有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが大好きで、登下校中に歩き読みをしながら、電信 柱にガンガンぶつかっていた小学生は、大人になり、いつのまにか書店で仕事を見つけました。あれから二十年、売った本も、返品した本も数知れず。東野圭吾、小路幸也、朱川湊人、宮下奈都、大崎梢作品を愛し、有隣BE姉、客注係として日夜奮闘しています。まだまだ、知らないことばかり、読みたい本もたくさんあって、お客様から、版元様から、教えていただくことがいっぱいです。