『「20代」でやっておきたいこと』川北義則

●今回の書評担当者●有隣堂川崎BE店 佐伯敦子

  • 「20代」でやっておきたいこと
  • 『「20代」でやっておきたいこと』
    川北 義則
    三笠書房
    1,296円(税込)
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 今、WAVE出版さんの『働く君に贈る25の言葉』とともにコンスタントによく売れている一冊です。ページをパラパラめくっていると、職場の先輩に「20代? もう、手遅れだろう。」と言われましたが、そんな冗談にもめげず、読んでみました。

 少し辛口? いやいや、この本、決して"20代限定"というわけではなく、"今を生きる"全ての人が読んでも、どの世代にも通じる指南書ではありませんか!

 思い起こせば、社会に出たホヤホヤの頃は、新しい世界は思ったほど、刺激的ではなくて、この単調な毎日に「もっともっと違う世界があるのでは?」と考えてみたり、「私は、ここにいるべき人間ではない。」などと傲慢な思いにとらわれてみたりもしました。

 社会人に一番大切なのは、"礼儀作法"。学校での成績なんて、あまり必要がない。そんなことですらも、気づかないでいたような気がします。(反省)

 最近のように"カリスマ書店員"(そもそもカリスマ書店員というのは、さわや書店の伊藤清彦さんが『天国の本屋』を薦めて、ドーンとヒットさせたあたりから、スポットライトを浴びるようになったのでしょうか?)と呼ばれるような人達もいなく、POP乱立の時代でもなかったので、本選びはもっぱら、書評、店頭、つり革広告、親の選択に頼っていました。

 春になれば、"新入社員フェア、五月病を吹き飛ばせ"のようなフェアがちらほらと、本屋さんの店頭を賑わし、自分も例外なく、カーネギーのロングセラー『人を動かす』、『道は開ける』や『ビジネスマンの父から息子への30の手紙』やナポレオン・ヒルの『成功哲学』などを読みあさり、振り返ると、"成功に憧れていた"のかなあと思います。

 「自分探しは一生やればいい。」「小賢しい人間には幸運の女神は微笑んでくれない。」「二十代愚行のすすめ。」「上司には敬意。」「一流を知る。」「孤独に強くなる。」「今を楽しむ。」おおっ、なんて宝石のような言葉がザクザクと積み込まれた一冊なのでしょう!

 この年まで(どの年だ!)、はっきりと気がつかなかったことは、「職場で親友をつくらないほうがいい。」というアドバイス。ついつい職場にいる時間が一日の大半を費やしてしまうと、仲のいい人もできて、飲みに行ったり、いろいろなことを打ち解けてしまいがちですが、それは結果としてNG。私の亡父は、「職場では、天気の話以外しないほうが、いい。」と常日頃から言っていました。その言葉の意味がいろいろなことを経て、じんわりと染みるようになってきました。

 とても読みやすい心得帳のような一冊ですが、この本を読んで20代を過ごすのと、そうでないのとでは、人生に大きな差が開くな!と感じました。ど真ん中ストライク直球だけでは、世の中は渡れないのは、100%確かです。これから、社会人になられる方、社会人だけど、少し息苦しさや、どうやったらうまく社会をかわせるかと考えている方、ぜひ読んでみてください。

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有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
有隣堂川崎BE店 佐伯敦子
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが大好きで、登下校中に歩き読みをしながら、電信 柱にガンガンぶつかっていた小学生は、大人になり、いつのまにか書店で仕事を見つけました。あれから二十年、売った本も、返品した本も数知れず。東野圭吾、小路幸也、朱川湊人、宮下奈都、大崎梢作品を愛し、有隣BE姉、客注係として日夜奮闘しています。まだまだ、知らないことばかり、読みたい本もたくさんあって、お客様から、版元様から、教えていただくことがいっぱいです。