『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド
●今回の書評担当者●丸善津田沼店 酒井七海
グレート・ギャツビーは私に、突然ありあまるほどのときめきをくれた最初の本です。まだ若かった私は、このあまったぶんをどこへ投げつけたらいいのやら、途方にくれたほどでした。
これをご覧になっている方は、おそらく読書家が多いでしょうからこんな誰もが知っているような名作を今さらなんだい・・・!とお怒りなのではと震えますが、なかにはまだ読んでいなかったとか、読んだけどすっかり忘れたなぁという方もいらっしゃるかと思いますので、おそるおそる筆をすすめてまいりたいと思います。
"アメリカ"その響きだけでもなんだか舞い上がるような浮遊感と夢の影を感じるような気がします。なんて、今となっては正直ただの商業大国かもしれません。でもかつては、まさにたくさんの泡のような夢を抱えた若者がひしめく国でした。泡のような夢も、泡のような恋も、いつかはぱちんとはじけて何もかも消えてなくなります。
はたから見たらばかばかしさきわまりない若者たち。
でも彼らはうらやましいほどに美しい。
なぜなら、その瞬間彼らは心から永遠を信じているからです。
ギャツビーは人一倍強く信じて疑わなかったんですよね。
だからなおさらその喪失も大きくなりました。
あまりにも純粋に、自らの夢や信念に埋没していく人を見ると、まわりも知らず知らずその運命のうずに巻き込まれていってしまうものです。
望もうが望むまいが関係なく......。
それに、違うとわかっていたところで、何もできないものなのかもしれません。その負のスパイラルにあらゆるものが巻き込まれて、どんどん歯止めがきかなくなってゆく。
私たちはそれをなすすべなく見守るしかないのです。
そして、それもまたいいのです。
これはひと夏の、若い喪失の物語。
失うことは痛いけれど、見た夢の美しさは残ります。
私はもう若くはなくなっても、いつまでも、その夢を美しいと思う気持ちは持っていたいと思うのです。
なーんて、青々しいことをハズかしげもなく言いますよ。ええ、言ってしまいます。
夢くらい好きに見ていたいですもんね。
奇しくも、この6月バズ・ラーマン監督により再映画化されたものが上映となるそうです。ギャツビー役にはなんとディカプリオ!あのちょっと嘘くさい派手さと、ふけば飛ぶような繊細さを併せ持ったギャツビー役にディカプリオさんはけっこうはまるのではないかと、内心すごく期待しております。映画を見る前でも、見た後でも、この機会にこの名作を読んでみるというのもいいんじゃないでしょうか。
- 『コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ (2013年5月9日更新)
- 丸善津田沼店 酒井七海
- 書店員歴やっと2年の新米でございます。本屋に勤める前は、バンド やったり旅 したりバンドやったり旅したりして、まぁようするに人生ぶらぶらしておりました。とりもどすべく、今は大変まじめに働いております!本を読む ことは人生で 2番目に好きです。1番目は音楽を聴くことです。音楽と本とときどきお酒があればだいたい幸せです。