『まめねこ』ねこまき

●今回の書評担当者●丸善津田沼店  酒井七海

  • まめねこ あずきとだいず
  • 『まめねこ あずきとだいず』
    ねこまき(ミューズワーク)
    さくら舎
    1,080円(税込)
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 子ねこを飼ったことがある方はきっと、ものすごくわかっていただけるんではないかと思うのですが、ちっちゃくて、愛らしくて、ふあっふあで、ミルクのにおいとかしちゃって、つい食べちゃいたい気持ちにあらがえなくなって、鼻先を口にふくんでみてしまったり......する(え、しない?)くらいか~わい~んだけど、残念なことに例外なく彼らはおバカなんですよね。

 いや、子ねこにも性格はありまして、好奇心旺盛で動くものをどこまでも追いかけてしまい、足下見てなくて段差に気付かずおっこちる子もいれば、反対に臆病で、何をするにもおそるおそる......後ろにさがりすぎて、段差に気付かずおっこちる子もいます......。うん、まあ最後はおっこちるんですけどね。

 小さいしっぽをぴんとはって、全身の毛をさかだてて一生懸命シャーッとやっている相手が自分の影だったり......ミルクの飲み方がわからないくせに、よくばってあせって飲もうとするから体の半分が容器の中に入っちゃって、顔じゅう白ひげの小さいじいさんのようになってたり......。あーあげるときりがない。

 そしてこの、コミック『まめねこ』のまめねこたんたちは、まさに典型的子ネコ!

 強気で姉御肌だけど、臆病な"あずき"も、おっとりしていて何事にも動じず、気がつけばどこでも寝てしまう"だいず"も、両方ともみごとなおバカ。君たちはりっぱな子ねこであることを、ここに表します。

 このマンガ、ねこ目線で描かれた家族のお話ですが、主人公っぽい女の子が一番ふつう。なんとねこ嫌いのおかあさん"モジャ"(もじゃもじゃあたまだからね。ねこたちが勝手につける人間のあだなもおかしい)と無口だけど心やさしいおじいちゃん"肌色"、フィギュアおたくのお兄ちゃん"メガネ"、自由自在に姿を消す!?お父さん"座敷おやじ"とにわとりの"にわ子"の大家族。それぞれのキャラクターとねこたちのやりとりがおかしくて、ついついふふっとふきだしてしまうことうけあい。

 好きなのはやっぱり肌色との場面。じいさん好きのわたしにとって、このじいさんは心底なごみます。目が覚めて自分のおまたで、子ねこたちがまるくなって寝ているのを見て、何も言わずにもう一度ふとんをかぶるところは、もう、きゅんですよ。きゅん。

 ことばは全体的にも少なめ、絵もえんぴつ?みたいなのでゆるーく描かれているのですが、表情や間でものすごく伝えます。くすっとしたり、ほっこりしたり、きゅんきゅんしたり......はてはほろっとしたりさせられてしまうのです。おみごと。

 なぜか関西弁でしゃべる"あずき"と"だいず"のゆるい......ゆるすぎる会話も、なごむ! これはもう、ぽかぽかのえんがわでほうじ茶くらいの癒し効果があると思われます。

 でも、宣伝コメントにあずきとだいずについて「なぜか関西弁? のボケとツッコミでとっても仲良し!」と書いてありましたが......。いやこれボケとボケやんかー!!


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丸善津田沼店  酒井七海
丸善津田沼店  酒井七海
書店員歴やっと2年の新米でございます。本屋に勤める前は、バンド やったり旅 したりバンドやったり旅したりして、まぁようするに人生ぶらぶらしておりました。とりもどすべく、今は大変まじめに働いております!本を読む ことは人生で 2番目に好きです。1番目は音楽を聴くことです。音楽と本とときどきお酒があればだいたい幸せです。