『ジェノサイド』高野和明
●今回の書評担当者●うさぎや自治医大店 高田直樹
はじめまして。 うさぎやという本屋で本屋をやっている高田と申します。
このような場で、感想を述べさせて頂く大役を仰せつかってしまい、完全にすくみあがっています。 今まで書かれていた方々の文も拝見しました...
いやぁすごい。 とてもああいうの書けない...。
でも、頑張ります。 一年間どうぞよろしくお願いします。
そんな竦み上がりの中、第一回目に紹介するのは、高野和明さんひっさびさの新刊「ジェノサイド」。
好きなんだ、高野和明が。いや高野和明さんが。
だって面白いから。 面白ければオールOK。
端的に言うと、「待ってた甲斐があった!」に尽きる。
冒頭、大統領閣下のけだるい朝から始まったと思ったのも束の間。
「ハイズマン・レポート」やら「諜報戦争」やら「傭兵」やら「創薬」やらやらの、ディープな世界に叩き込まれる。
こ難しい描写もちょこちょこあって、本物の科学者が書いた本なんじゃないの?と思えるほどの作り込み様。
新人類(人類の進化形)の誕生とそれを取り巻く人たちの様々な思惑が交差しまくって、事態は世界規模のスクランブルに発展していく。
印象的だったのは、新人類の描写。
皆さん、新人類ってウチらと何が違う(と描かれている)と思います?
これが、やっぱり新人類はスゴイんだ。流石"新"。バージョンが違う。
でも、単なる"超能力者"みたいに書かれていないのが、リアリティがあってイイ。
更に、サイドを流れてるストーリー(もちろんリンクしてるんだけど)もイイ。
創薬化学の研究室で研究している大学院生の研人が、様々な助けを得ながら小さな命を救うため、未知の敵と戦う。
大学院生ってすごいんだなぁとただただ感服。 こんな能力をもった大学生(院生じゃなかったケド)じゃなかったなぁ...。ただただ酒飲んでた...。
話があっちこっち行ってしまったが、とにかくこの「ジェノサイド」、ボリューム満点。 なのに、全然ダレない。
仕事の都合で全然集中して読めず、かなり日数をかけてちょびちょび読んだが、(大抵そういう場合はどうでもよくなる)全く飽きず、ページを開くとすぐに"世界"に没入していった。 そういう意味でもすごい本だった。
「13階段」「グレイヴディッガー」「K・Nの悲劇」「幽霊人命救助隊」「6時間後に君は死ぬ」などなど様々な作風の本を書いてきた高野和明が、また違うステージに立った事を大声で叫びたくなる巨編だ。
どの本も面白いが、「ジェノサイド」はまた別格だ。
- うさぎや自治医大店 高田直樹
- 大学を出、職にあぶれそうになっていた所を今の会社に拾ってもらい早14・5年……。とにもかくにもどうにかこうにか今に至る。数年前からたなぞう中毒になり、追われるように本を読む。でも全然読めない……なぜだ! なぜ違う事する! 家に帰っても発注が止められない。発注中毒……。でも仕入れた本が売れると嬉しいよねぇ。