『ビールボーイズ』

●今回の書評担当者●堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一

本書のタイトルはビール好きの私には非常に魅力的に感じました。しかも、目次を見れば10回もビール祭りがある。う~ん、期待はさらに膨らんじゃいます。

正吉、広次郎、勇、薫は北海道新山市に住む小学6年生。
クラスメイトで彼らが恋する茜が父親の勤めているビール工場の閉鎖が原因で引っ越した。
その当日、正吉の家の納屋を秘密基地としていた正吉、広次郎、勇は茜と仲が良かった薫も呼び、引越しの原因になったビール会社のビールを飲むことでチョットした復讐をした気分になろうとする。

この作品は、彼ら4人の秘密基地での出来事から30歳までの成長とそれにまつわるビールの話を描いた連作短編です。

彼らと世代が同じという事もあって、各エピソードに妙な懐かしさを感じながら読んでしまった。

特に、 第2回ビール大会の修学旅行先でビールを飲む話。これは私が高校の時の修学旅行を思い出した。
彼らは、布団部屋といわれる旅館の納戸で女の子とビールを飲もうとしたのですが、私と当時の仲間は、自分たちの部屋にクラスの女の子を呼び「誰と誰が付き合っている」とか「女子に人気がある男子は?」逆に「男子に人気がある女子は?」といった話で就寝時間を過ぎても盛り上がっていた。
しかし、当時付き合っていたカップルが不用意に窓から星を見ている姿を向いの棟に部屋がある教師に見付かり、部屋に押しかけてこられた。女の子たちは部屋へ強制送還され、我々は本書の教師たちの様に酒臭い息で「お前等何考えているんだ、親が泣くぞ」といった感じでコッテリ怒られた。さらに、教師が帰った後「まいったな」なんて話をしていると「先生たち帰った?」と押入れに隠れていた女の子が出てきた。「マジかよ、いつの間に押入れに...しょうがない、廊下に教師がいないか確認して、いなかったらダッシュで部屋まで送るぞ」というチョットスリリングなオマケも付いてきた。
さらに、翌日は、お土産屋で買った日本酒を皆で飲んでいたら、酔っぱらったメンバーの1人が突然暴れ出して、皆で布団に包んで押さえていたら、動きがなくなったので「ヤバイ」と思い慌てて布団を剥ぎ取ったらグーグー寝ていたなんて事も思い出してしまった。

さらに、第4回大会のエピソードで出てくる映画『セントエルモスファイアー』、も懐かしい。
どうでも良い話しだが、この映画の主題歌を歌っているジョン・パーは記憶喪失で彷徨っていたときにレコード会社人間の車の前に飛び出してきたことがきっかけでデビューしたと言う嘘っぽいエピソードが売りのアーティストだったなぁ。

話が逸れてしまったが、彼らは引越しや進学でバラバラになる。そんな彼らが繋がり続けている理由は茜である。
いくつになっても忘れない初恋の思い出として心に残る茜とビールを飲む事はできるのかは本書を読んで確認していただきたい。

そうそう、この作品は、各章の間にビールに関するコラムが入っていて、コレも魅力の一つになっています。

最後に、横丁カフェの大熊さんが『ワンダードッグ』を紹介して今回私がこの作品...なんだか"ビール祭り"というより"竹内真祭り"って感じになっちゃいましたね。

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堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一
堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一
1970年神奈川県横浜市生まれ。仕事が楽そうで女性が多くて楽しそうな職場だと勝手に思い込み学生時代東京の某書店でアルバイトを始める。実際に始めてみると仕事がキツイ、女性は多いがバイトには厳しいという事はあったものの自分が陳列した本が売れていく悦びを覚えてしまい異業種に一度就職するも書店に戻ってくる。いぁ~この仕事の愉しさを知ってしまうとやめられない危険な仕事ですよ書店員は!