『壇蜜日記』壇蜜

●今回の書評担当者●紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志

 一昨年くらいまで、約5~6年間、ほぼ毎日Blogで日記のようなモノを書いていました。
 当時はほとんど引きこもりというかニートみたいな暮らしをしていたので、旧友たちに「生きてますよ~」と生存報告をする名目で......などと冗談交じりに始めたのがキッカケだったのですが、次第に読んだ本の感想を書くようになり、いつの間にか書店員になり、仕事や、やっぱり本の感想を書くコトが増えていくようになり、気が付くとそれがTwitterに取って代わられ、今では更新は止まってしまいました。

「継続は力なり」ともいう通り、"とにかく休まず続けるコト"というのが自分に暗示をかける意味でも性に合っており、この日々があったので、文章を書くコトにも慣れたような気がします。お陰様で、このような場にも声を掛けて頂けるようになったのかも知れません。我流の日記に端を発する文体なので、読み難かったり妙に馴れ馴れしかったりするのでしょう。

 高校生くらいの時分にも、「今年から日記を書こう!」などと大学ノートを取り出したのですが、いきなり赤ペンで全ページを三分割くらいして日付まで振ってしまったものだから「毎日こんなに書くコトねぇよ...」と早々に断念してしまった記憶もあります。
 当時はまだ「長さなんてその日その日で、好きに書けばイイのだ」という発想が無かったのでしょう。「先ずは形から入る」「頭でっかち」という自分ならではのエピソードだなぁ、と思います。

 そんな、日記にまつわる話から続く今月の一冊は『壇蜜日記』(文春文庫)。
 芸能人のBlogなどとんと覗いたコトもないのに、何故、金を払ってまで壇蜜の日記を読んでいるのだ私は......という気もするのですが、文庫新刊の段ボール箱に収まっていた『壇蜜日記』というそのものズバリのタイトルを一目見た瞬間、思い切りハートを鷲掴みにされてしまったのだから仕方ありますまい。
 寧ろ、健全な男性なら、あの壇蜜のプライベートが垣間見えるであろう日記には食指が伸びてしまうのではないでしょうか。だって職業は"エッチなお姉さん"ですよ?

──とはいえ、実はさほど彼女に詳しいワケでもないのですが。
 波乱万丈な経歴を持ち、現在も独特のポジションで独特のオーラを放つ彼女。
 かつて、「(芸能界にはまだ)こんな空席があったのか!」と評した人もいましたが、自身は「椅子は自分で作ったので、いつ壊れても可笑しくないですね」とシニカルに綴っています。

「私は嫌われ者」と自虐に走る日もあれば、時には恨み言や愚痴も書かれている。
 そうかと思いきや、やれ「カップ麺が美味い」だの「シャンプーが切れた」だの、「眠い」「水槽が汚い」など、本当にタダの独身女性のぼやきのようなものまであり、総じて「エッチなお姉さんも人間だった!」という、至極当たり前の感想に至りました。

 おびただしい自撮り写真に彩られた、"魅せる"コトが前提のタレントのBlogやTwitterとは一線を画すエピソードの数々と、これまた彼女独特の言葉選びのセンス。この一冊には、壇蜜ではない「ありのまま」の、一人の女性の姿があります。

 あれ、なんか「上手いコト言ってやった」みたいになってしまった。恥ずかしい!

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紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志
紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志
オーストラリア出身(生まれただけ)、5人兄妹(次男)、姉が年下(義理の)…と、自己紹介のネタにだけは事欠かない現在書店員8年目。欲しいモ ノは、中堅としての落ち着き。 エンタメは言うに及ばず、文学、ミステリ、恋愛、SF、外文、ラノベにBLまで、基本的にジャンルを問わず何でも読みます(でも時代小説はそんな に読まないかも…)。 紹介する本も「ジャンル不問。新刊・既刊も問いません」とのコトなので、少しでも、皆様の読書のお供になるような一冊を紹介出来ればと思いますの で、一年間、宜しくお願い致します!