『土曜の昼は中華街』今柊二

●今回の書評担当者●三省堂書店営業本部 内田剛

 雲一つない快晴ながら寒風吹きすさぶ1月の土曜日の休日。横浜そごうに所用があったので一足伸ばして中華街に行ってみることにした。ナイスアイディア。自画自賛。カバンのなかにはこんな日もいつかこようかとあらかじめ入手しておいた『土曜の昼は中華街』。神奈川新聞連載「中華街ホイホイ」を一冊にまとめたもの。写真にレポートとお店のコメントなど情報満載。意外とはやく活躍する日が訪れた。自宅最寄りの駅から有楽町線、東横線、みなとみらい線と直通運転で移動。乗り継ぎなしで行けるとは便利な世の中になったものだ。埼玉(ほぼ)から横浜へ一気に一時間半。気分はすっかり小旅行。なんとか座れて本を開く。ランチの行先を決めるにはちょうどいい長さの時間である。ページをめくりながらあれやこれやと思いを巡らせて、急行運転の電車速度以上にお腹の空き具合も加速する。

 しかしすごくいいんだよなぁ。今柊二の食べっぷりと書きっぷりが。家の本棚にも気が付けば著書が何冊も並んでいた。美味くて安くて居心地がいい。そんな普段づかいできる店のいちばんのウリがピンポイントで伝わってくる。シャキシャキ、ポリポリ、サクサク、コリコリ...まるで目の前で食べているかのようなリアリティがあって、親しみのあるコメントも効いている。うまいうまい。ほんと、湯気が見えるんだよね。おっと、頭の中がすっかり中華三昧状態で、思わず乗りすごすところでした。しかもランチタイムきっかりに中華街到着の予定が、所用が長引き時計を見れば三時過ぎ。空腹加減も限界が近くなり、かなり日も傾いて冷たい風も増してきた。ブルッと身震い。海風が身にしみる。メインストリートはどこを眺めても人、人、人の大行列。まさにお祭り状態。

 いつもだったら店を決めきれずに路地から路地を行ったり来たりのランチ難民となるところだが今日は心配無用。しっかりと予習をしておいたので人混みを避けて割とすんなりと第一希望の店にたどり着くことができた。まずは感謝。(掲載の地図は目印が少なめでやや分かりくいので、駅で配っている中華街マップとの併用がオススメです。)目的の店は中華街の外れの場所で不安がよぎり、ほこりをかぶった「あるある探検隊」の色紙と、どことなくうら寂しい店構えだったので入るのに躊躇ったがドアを開ければそこには本に紹介してある通りのシックな階段を認めて一安心。オフタイムで従業員の交替時間だったのか接客は控えめだったが逆に落ち着いていてよかったかも。田舎の商店街で流れているようなボリュームの中国ポップスBGMもご愛嬌。メニューは「麻婆炒飯セット」でスープに漬物、デザートもついて税込750円也。味、ボリューム、値段と三拍子そろってもちろん大満足。『土曜の昼は中華街』のおかげで貴重なひとときを過ごすことができました。ごちそうさまです。お土産は肉饅頭に天津甘栗とできたてのベビースターラーメン。さて今度はどこのお店へ行こうかな。

(補足)

 今柊二氏の最新刊『とことん!とんかつ道』も中公新書ラクレ史上最大級のボリュームで内容も超特盛。満腹大満足の一冊で必読。祝、増刷決定!

 さらにもうひとつおかわり情報。2月に出るのは『定食と古本 ゴールド』!!オリンピックもいいですが、こちらの「金」にも大いに期待。発行元は、えーと、本の雑誌社です。大充実の内容らしい。怒涛の新刊ラッシュ。素晴らしい「定食」にありつこう!!

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三省堂書店営業本部 内田剛
三省堂書店営業本部 内田剛
うお座のA型で酉年。書店員歴うっかり23年。 沈黙と平和をこよなく愛する自称〝アルパカ書店員〟 不本意ながらここ最近、腰痛のリハビリにはまっています。 優柔不断のくせに城や野球など白黒つくものが好き。 けっこう面倒な性格かもしれませんが何卒よろしく。