『日本人が知らない日本の戦争史』豊田隆雄
●今回の書評担当者●サクラ書店平塚ラスカ店 柳下博幸
新刊の荷開けは本屋の特権でもある。一般のお客様より早く商品を手に取り愛でる事が出来る。右から左へ流す事で文字通り仕事を流す事も出来るが、1冊しか入ってこない商品を判断してロングセラーまで持っていければ書店員として一人前だし冥利に尽きる。
そしてこの本インパクトのある表紙だな。ビルマの有名な寝仏を眺める日本の兵士にタイトルが載る。
『日本人が知らない日本の戦争史』
あぁ、ハイハイ。浅田次郎さんの『終わらざる夏』も売れているし、太平洋戦争の雑学本かな? なんて甘い気持ちでチラ見したら驚いた! この本には今まで知られる事が少なかった日本の戦いの歴史が載っていたからだ。むしろ太平洋戦争の記述はふたつだけであっさりしたもの。日本が戦ってきたのにあまり知られていない(教科書に載っていない)戦いなのだ。
何しろ初っ端から凄い! 我が国最初の対外国の戦争って何が浮かびますか? 有名なのは「モンゴル襲来(元寇)」じゃないですか? しかし正解は元寇の250年前! 参考文献は清少納言! 何だよそれ! 休憩時間も読み耽り、帰りのバスも危うく乗り越す熱中度。
教科書は事実を書いているが、すべては書いていない。テストには出ない事だけれども日本人には知っていて欲しい一冊です。
さて、日本人って何よ? 日本が如何にして日本と言う国を形作ったかを改めて見直すきっかけになればいいな。そして、戦争ってなんだろう?
父方の祖父が戦争に行っていたと聞いたのは小学6年生の夏休みだった。宿題で「戦争体験を聞こう」みたいなのがあったと思う。
母親から「戦争行った人なら本家のじいちゃんがいるべ?」自転車を飛ばして本家へ向かう。畑に居たじいちゃんに「じいちゃん! 戦争の事教えて!」いつもは優しいじいちゃんがムッとしたまま何も教えてくれなかった。
ふてくされた俺をばあちゃんが呼び寄せ離れの部屋に連れて行った。「ホレ」そこには軍服を着て颯爽と馬に乗る若きじいちゃんの写真があった。「何も聞いちゃダメだ。オレも(戦争の事は)聞いてねぇ」その写真は戦地からばあちゃんに送られてきた写真で母屋には一切戦争の写真は無いらしい。
「でも宿題......」
「あっはっはっ。そのうち聞いてやるよ」
その後、じいちゃんは畑で倒れてしまったので話を聞く事は二度となかった。
触れてはいけない事だったのかもしれないけれど、知っておきたい事でもあった。
教科書でも年々記述が少なくなってゆく戦争の記憶。しかしこのままでよいのだろうか?
彼等が戦って残してくれた日本と言う国の事実を知らないよりは知ってほしい。
先日実家に行った際にふと母親に「じいちゃんが戦争行った話って、じいちゃんから聞いたことあったの?」「無いね。......あ、一度、じいちゃんの弟居たべ? 東京のおじさん。あの人とじいちゃんが喧嘩になった事があってな。そん時、戦争がどうとか言ってたな」「へー、そうなんだ」「ホレ、東京のおじさんも戦争中は憲兵だったべ?」
ええええええええ!!! 知らねぇよ! その話! やっぱり聞いてみるもんだわ。そして知っておくべきだわ。
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- サクラ書店平塚ラスカ店 柳下博幸
- 1967年秋田生まれ。嫁と猫5匹を背負い日々闘い続けるローン・レンジャー。文具から雑貨、CDにレンタルと異業態を歴任し、現在に至る。好きなジャンルは時代物(佐幕派)だが、CD屋時代に学んだ 「売れてるモノはイイもの」の感覚は忘れないようにノンジャンルで読んでいます。コロンビアサッカーとオルタナティブロック愛好家。特技・紐斬り。