第7回 まずは緑茶のお話から
さて、ここからいよいよお茶のお話に......の前に。
第四回で、お茶は全てカメリア・シネンシスから作られて、酸化発酵のタイミングと方法によってわけられるよ、というお話をしました(あやふやになっちゃった人はバックバンバーヘGo!!)
緑茶と紅茶は全く違うように見えるけれど、過程が違うだけで、スタートラインは一緒。
緑茶は生葉→加熱して→揉んで→乾燥させます。
茶葉の酵素はすぐに働きを止められてしまう。
紅茶は生葉→放置して→切って揉んで→放置して→乾燥させます。
酵素は最後まで全力で働きます。
茶葉に含まれるカテキン、最初は無色なのです。これが酸化発酵すると赤くなる。だから緑茶は葉っぱの色のままで、紅茶は赤い色をしているのです。
んで。
緑茶のお話。
中国茶なのに、緑茶から?って思うでしょ?
中国茶の中で一番生産量が多いのは?と聞くと、「......うーろんちゃ?」って思うでしょ?
中国茶=烏龍茶ってイメージは確かにありますものね。
実は一番多く飲まれているのは、緑茶。中国で一番古い歴史を持つお茶でもあります。
緑茶は、摘み取ってすぐに熱を加え、茶葉の酸化発酵を止めてしまう、無発酵茶。水色は柔らかな緑、とろりと甘く、優しい風味。
生葉に含まれる酵素の働きを止め、もともと茶葉が持っている青草の香りをおさえるための過程が、殺青。大きな平たいお鍋の中に茶葉を入れ、状態を見ながら熱を加えていきます。まずは高い温度で。そのままだと焦げてしまうので、こまめに調節をしながら、だいたい180度で。
新芽の部分には、およそ78%の。
次の葉っぱには、75%。
その下の葉っぱになると、73%の水分が含まれています。これを60%の水分量に持っていくのが、最初の殺青の目的。
お茶づくりの言葉で
〈老叶嫰殺 嫰叶老殺〉
というのがあります。文字面だけ見ると、なんだかとても物騒な言葉だけど......。
これは、老叶→成長した葉っぱはさっと、嫰叶→若い葉っぱはしっかりと殺青すべし、という意味。状態の違う茶葉を、どうやって同じような品質にするか。そこが職人さんの、気と目と心の使いよう。
水分が抜けて柔らかくなった茶葉は、次に揉捻(じゅうねん)という作業に。ここでぎゅむぎゅむと揉まれて小さく密になることで、成分が中に閉じこめられ、何煎も飲めるお茶になるのです。
殺青の熱が残っているうちに行われる、熱揉(ねつじゅう)。これは主に成長した葉っぱに対して行われます。熱があるうちは固く育った葉っぱもまだ柔らかいから。
それに対して、柔らかで繊細な新芽を使う高級茶は、あら熱が取れてから冷揉(れいじゅう)を。
揉みに揉まれてくったりした茶葉を待つ次の試練は、乾燥。成分を更に変化させ、味、香り、色を引き出す大切な工程です。ここで、水分量はとうとう7%前後にまで(緑茶の場合)。
烘る乾燥で作られたお茶は、烘青緑茶(ほんちんりょくちゃ)。
炒る乾燥で作られたお茶は、炒青緑茶(しゃおちんりょくちゃ)。
晒す乾燥で作られたお茶は、晒青緑茶(さいちんりょくちゃ)。
烘る、炒る、晒す、ちょっとめんどくさいです(私も烘と炒がゲシュタルト崩壊気味)。整理すると。
殺青、揉捻の後、炒って乾燥させるものが炒青。釜炒り緑茶、とでもいいましょうか。この方法で作られたお茶には、細長い葉っぱの形をした長炒青(眉茶とも。中国で最も多く作られています)、くるくるっと固く丸まった円炒青、扁平な形をした扁炒青があります。
炒ってから籠に入れて、焙って乾燥させるのが烘青。この方法だと、葉っぱの形が保たれやすく、白毫と呼ばれる産毛も残ります。私たちも馴染みのある茉莉花茶の原料になることも多いです。
日光に晒して乾燥させるのが晒青。ただしこれはほぼ売っていることはないです。普洱茶の原料用ですね。
これだけの過程を経て、若々しい緑の葉っぱだった葉っぱは、お茶になるんですねぇ。そう思うと、お湯の中でのんびりくつろぐ茶葉が何だか愛しく見えてきませんか?