第9回 中国緑茶いろいろ・その2

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 *碧螺春*
 碧螺春もまた、多くの特徴を持った素晴らしい緑茶です。
 産地は江蘇省太湖に浮かぶ島、洞庭山。
 特徴は果間作区という植え方。桃や杏、梅、柿、銀杏、石榴といった果物の樹の間に茶樹を植えることによって、直射日光を遮り、果物の香り、蜜の味が茶葉に移るとされています(だったら、銀杏はやめておいた方がいと思うんだけど......)。
 茶葉はごくごく小さなクルクル巻いた形、産毛の生えた芽の部分のみを使ったとても贅沢なお茶。500gの中になんと7万芽も入ってるんです!! そのために、「早く摘む、若い芽を摘む、いい芽を摘む」が合言葉。その分、アミノ酸が多く含まれ、とても旨味の強いお茶になります。
 元々の名前は「悩殺香」。ただ、その名前はあんまりだろうと思った康熙帝によって、「綺麗な緑色で、くるくる巻だから、碧螺春って名前にしよう」と変えられました。帝、いい仕事した。
 味は柔らかく甘みがあり、とろりと喉を包むように流れ落ちていきます。
 産毛が多く、お湯に沈みにくいので、茶葉にお湯を注ぐ下投法ではなく、お湯を入れたグラスなどに後から茶葉を投入する上投法が適しています。
 この碧螺春によって、中国緑茶の魅力に目覚める人も多い、緑茶のお姫様的存在。

 *太平猴魁*
 これまた、一目見たら忘れられない、すごい形の茶葉です。
 ぺったんこで細長い巨大なワカメのような茶葉。表面にはうっすら網目が。本当にこれ、お茶⁈と疑いたくなるその偉容。緑茶の中では最大級。先の碧螺春と比べると、あまりにも違うそのサイズ。太平猴魁専用の、柿大品種という茶葉から作られます。中国ではその形を槍や刀に例え、お湯の中に入れた様は龍が飛び鳳凰が舞う姿だと......なんでも大きくいうのが中国流。
 網目の理由は、茶葉を一枚一枚、丁寧に手で網に押し付けて乾燥成型させるから。とても手間と時間のかかるお茶なんです。
 それだけに、もともとあまり生産されておらず、良い茶葉ともなるとかなりのお値段。中国の農業大学にお茶の勉強をしにいったとき、本場黄山市で昔ながらの製法を守っているお茶を見せていただいたのですが......高かった!! ここでしか買えない、とわかっていてもとても手が出せず、一つ下のグレードのを買って帰りました。そ、それでも十分すぎるくらい美味しかったし。
 碧螺春が中国緑茶のお姫様なら、太平猴魁は武将。旨味と甘みを含んだトロリとした飲み口、蘭の花に例えられる香りを、機会があればぜひお楽しみください。