第10回 次は紅茶のお話
日本人には一番馴染みがあるだろう緑茶の説明が終わったところで、次は同じくらい愛されている紅茶のお話。
中国茶にも紅茶があるよ、と言うと、不思議に思われる方も多いのですが、実は紅茶は福建省武夷山が発祥の地。そこから世界に伝播し、今ではインド、スリランカ、マレーシア、インドネシア、アフリカ、最近では日本産の美味しい紅茶も作られるようになりました。
緑茶は無発酵茶、対して紅茶は完全発酵茶。茶葉に含まれるカテキンは最初は無色、酸化発酵によって赤くなるんです。緑茶は早い段階で加熱することによって、酵素の働きを止めるから緑色のまま。紅茶はむしろ全力で発酵を促す!! これでもか、と茶葉をいじめ抜くので、もれなく紅くなるのです(と言いつつ、発酵度合いは紅茶の種類にもよるので、必ずしも100%ではない)。
萎凋→揉切(揉捻)→発酵→そして乾燥。
8~10時間、摘んだ葉っぱを置いておく自然萎凋。萎凋槽という大きな容器に入れ、風を4~5時間通して発酵を促す、萎凋槽萎凋。日光萎凋や、遮光ネット萎凋など、方法は紅茶の種類によって違いますが、目的は同じ、生葉の水分量を調節して、そのあとの作業をやりやすくすること。
さらにこの後、揉んで切るか、揉みまくるか、の作業が。葉っぱは傷がつけばつくほど、酸素に触れることになるので、酸化発酵が進みます。
中国紅茶は、だいたい三種類あります。小種紅茶、工夫紅茶、そして紅砕茶。
最初にヨーロッパにもたらされたのが、小種紅茶。代表格は、正山小種(ラプサンスーチョン)。この独特な紅茶のことは、また次の回にしっかり取り上げますね。
工夫紅茶は、揉捻された紅茶。手間暇かかる、量産のきかないお茶です。祁門紅茶や、滇紅紅茶などがあります。
揉切された紅茶は、紅砕茶と呼ばれます。これが一番、皆さんが知っている紅茶に形が近いかもしれません。葉っぱが細かくカットされているので断面から成分が出やすく、煎を重ねることはできませんが、ガツンと紅茶らしい風味を味わうことができます。
緑茶は若い芽を摘むため、早い時期に摘んだものが良いとされますが、紅茶はだいたい5~6月。夏に近づくほどポリフェノールが多く含まれ、品質が良いとされます。
さ、次回は魅力溢れる中国紅茶の代表格をご紹介!!
余談ですが、英語でお茶はTea、ではBlack teaと言ったら? 紅茶のこと。紅茶の紅は抽出液の色、Black teaのBlackは茶葉の色に由来するそうですよ。
はじめて正山小種(ラプサンスーチョン)を見た人々が、そのツヤツヤした黒い色にびっくりして、烏茶と読んだことから、Black teaという名称になったという説も。今では、青茶のことを烏龍茶と呼ぶので、ちょっとややこしいですね。