第14回 中国黄茶と白茶いろいろ

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 まずは黄茶。
 昔は(といっても中国のことですから、数百年、数千年単位の昔)大流行だったんです。皇帝が愛飲してたとか、「紅樓夢」に出てくる、とか。
 でも、今の中国のお茶のトレンドと合わないので、作っているところがどんどん減ってきているんだそうな。絶滅危惧種なお茶です。

 *君山銀針
 湖南省洞庭湖君山で採れる、銀の針のようなお茶だから君山銀針。
 中国茶は名が体を表すことが多いので、同じ漢字の国の人としては大変わかり易いです。
 銀の針のように見えるのは一番先端の芽、産毛の生えたごくごく若い柔らかい芽を使うから。この美しい茶葉を楽しむため、ガラスのコップでいれます。お湯の中をゆったりと舞う茶葉の様子を、「三起三落」と呼んで愛でるのです。
 風味も淡く優しく、茹でたての筍のような、枝豆のような、少し蒸れたもわっとした不思議な香りがします。初めて飲むとほぼお湯のような......薄い薄いお出汁を飲んでいるような、お茶とは思えない味わいです。
 とても手間がかかる幻のお茶。なのでお値段も高く、その分偽物がたくさん......

 *霍山黄芽
 前述の読み方で言うと、「安徽省霍山で採れた黄色い芽」。
 陸羽の「茶経」にも出てきましたた、一度絶滅し、1971年に生産が復活。
 これも黄茶らしい悶黄の香りのついた、アミノ酸の旨みたっぷりのお茶です(なのでいつも飲むと、出汁っぽい、と思う)。
 
 *蒙頂黄芽
 わかりやすい、「四川省蒙山で採れた黄色い芽」。
 2000年前、秦の始皇帝の時代から存在していたと言われます。新芽ばっかり使うので、500gの茶葉を作るのに、一万もの芽が必要。
 ごくごく淡い黄色がかった緑の水色、やや濁って見えるのは白毫(新芽の産毛)です。とろりとした飲みくち、やわやわとした旨味。

 続いて白茶。
 白茶は三種類。銀針、白牡丹、寿眉。
 銀針(白毫銀針)は、一番いいやつ。新芽、もしくは一芯一葉を清明節(4月5日前後)前に摘んだもの。
 白牡丹は、一芯二葉。
 寿眉は白毫銀針を摘み取ったあとの、一芯二葉もしくは一芯三葉。
 茶葉の美しさをいかすため、これまたグラス茶芸がおすすめ。もしくは、水出しもいいですよ。私、一度氷出しにチャレンジしてみましたが、翡翠の中心のような色ととろみ、どこまでも幽き味わいと香り、喉の奥で感じる甘み、大変乙でございました。
 ゆるゆるとお茶を楽しみたいとき、心も体もギアをゆるめたいとき、白茶の味と香りに心を澄ましてみるといいかも。