第15回 台湾お茶紀行

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写真撮影・八巻なつえ

 台湾に行ってきました。えと......たぶん、40回目くらい?
 今回は、オーナーをつとめる写真館のスタッフを引き連れて総勢8名の大所帯。研修兼、ドレス問屋さんや大道具小道具のお店、アンティークショップを回っての買い出し旅行です。と、言いつつ、お仕事パートは半分くらいですが......。
 本当は、空き時間に、茶器を買いに行きたかったのだけど、台北市内の行こうかと思ってい卸売のお店は休業日。茶葉はもう売るほどあるし、茶館でのんびりする時間はさすがになさそうだし、今回はお茶関係はいいや、と思っていたら、同行者がお茶を買いたいから案内して欲しい、と。
 どんなお茶が欲しいの?と、まずリサーチ。お茶屋さんも、それぞれ得意なお茶があるから、せっかくなら好みにあったところにお連れしようと。
 S嬢は「ご飯食べながら飲めるのがいい」と。
 う~む、そしたら、あまり香りの強くない、お値段がリーズナブルなものの方がいいかな。食事の邪魔をしない、できれば台湾らしいお茶......包種茶とかどうかしら。その昔、紙で包んで出荷したことからその名がついた、台湾独自のお茶(以前は中国でも作られていたらしいんだけど、今は台湾特産品)。青茶ながら発酵度は低く、緑茶に似たまろやかですっきりとした味わい。
 S嬢のお茶はすぐ思いついたのですが、もう一人のT嬢のオーダーが難しかった。
 「前に、台湾土産でもらったやつ、また飲みたい」
 「どんなお茶だった?」
 「甘かった」
 「??? それはお砂糖みたいな甘さ? それとも、余韻の甘さ?」
 中国茶には『回甘」という言葉があって、これはお茶を飲み込んだ後に、喉の奥から戻ってくる甘い余韻のこと。でも、一言目に甘い、ってのは、お砂糖的なしっかりした甘さっぽいよなぁ。
 「甜茶みたいな感じ」
 あ、やはり。茶外茶である甜茶に含まれるルプソシドは砂糖の75倍の甘さがあるそうです。ということは、やっぱりはっきりしっかり甘いんだ。
 「どんな色だった? お茶っぱの色とか、お湯の色とか」
 「覚えてない。甘かったことだけ」
 さぁ、難問です。少なくとも、そんなに甘いということは、中国茶だけではないのは確か。水果茶と言われる、ドライフルーツを混ぜたお茶かなぁ。お土産にもらった、というのも、それっぽい。
 水果茶なら、お土産屋さんにいっぱいある(むしろお茶屋さんにはないかも)。でも、それじゃつまらない。せっかくなら、フルーツや、着香着味だけじゃなく、お茶としての味も楽しんで欲しい......いろいろ考えた末、T嬢におすすめしたのは、蜜香紅茶。
 お二人を馴染みのお茶問屋さんに連れて行き、店内一周お茶解説ツアーをし(問屋さんはもう慣れているので、「あの人は勝手にやるから」と放置)、それぞれ買われたのが
 S嬢→文山包種茶、香片の良過ぎないもの、東方美人
 T嬢→文山包種茶、香片の良過ぎないもの、東方美人、蜜香紅茶
 というほぼ同じようなラインナップに。
 香りが違う、美味しい、とご本人には概ね好評をいただけました。
 んが。

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写真撮影・八巻なつえ
 後日聞いた話では、S嬢の香片は会社の人へのお土産になり、なおかつ全然喜ばれなかったそうです......がーん。それ、たぶん、最後に茶葉の上に詰めてくれるジャスミンの花だけすくっていれてしまったんじゃ......説明しないと、そうなっちゃいます、か、ね......ああ、でも、もったいない(涙)。

 お茶って、すごいんだよ。
 ちょっとの心遣いで、すごく美味しくなる。
 高いものはいいものかもしれないけれど、でも一番は自分が美味しいと思えるもの。
 お茶を好きになってくれたら嬉しいなぁ。
 そう思ってはじめたこの連載、そう思って連れて行ったお茶屋さん。でも、やっぱり、自分の好きと人の好きをすり合わせるのは、すごくすごく難しいなぁ。
 いろいろな反省点も見え、さらなるやる気も奮い立たせてくれた、今回の台湾旅行でした。
 また近々行ってきます。次回はお茶旅!!  阿里山の茶農家に泊まらせてもらうのだ。たぶん、きっと、おそらく珍道中。乞うご期待。