第26回 工芸茶のお話
中国茶、というと返ってくるNo.1が「あぁ、あれでしょ?」と披露される、高いところからお湯を注ぐアクロバティック茶芸のパントマイム。なぜだ......テレビの影響とかなのかしら。
そしてNo.2が「お花の咲く奴ね~」である。
......そう、例えるならば、お寿司=カリフォルニアロールとか、ソフトシェルクラブが刺さったスパイダーロールのことだと思っている外国人と話してて「うんうん、それもあるよね。でも、ちょっと違うんだよ!!」と悶える気持ち。
工芸茶もやはり、再加工茶です。歴史はまだ浅く、1980年台に安徽省で生み出されました。茶葉そのものを加工する花茶と違って、茶葉を原料に整形したお茶。
ベースとなるのは、緑茶やジャスミン茶が多く、中にいれる花も千日紅やキンセンカ、ジャスミンなどさまざま。
たいへん見て楽しいお茶で、お土産にされることも多く、認知度が高いのもわかるのですが......ですが......ただもし味そのものを楽しみたい場合は、も一歩、茶葉の世界にも足を踏み入れてくださると嬉しいな、と悶えながら思うお茶好き。
ではバリエーション豊かな工芸茶の中から、いくつか素敵な名前のものをご紹介。
*錦上添花
......茶摘み娘の麦わら帽子をイメージした形だそう。お湯を注ぐと中から菊の花が3つ連なって出てきます。
*海貝吐珠
......貝殻の形に作られたベースから、真珠に見立てた白い菊の花や梅の花が。
*緑牡丹
......工芸茶を考案した汪芳生氏が最初に作りあげたシンプルな形。
*心心相印
......ハートの形の中から、千日紅とジャスミンが出てきます。両思い、という意味。
*双龍戯珠
......千日紅の横に浮かぶジャスミンがまるで、二匹の龍が珠と戯れるように見えるそうですよ。
*牛郎織女
......彦星と織姫のこと。黄色い菊の花から、ジャスミンとともに二輪の千日紅が立ち上がります。
*茉莉仙桃
......仙人が持っている不老長寿の桃をイメージした千日紅が現れます。縁起の良さで喜ばれる工芸茶。
*茉莉七仙女
......仙女に見立てた七輪のジャスミンの花がふわふわと連なって現れます。
*満天紅仙桃
......工芸茶には珍しいカーネーションの入ったお茶。ひときわ華やかなボリューム感。満天紅とは、中国語で「最上の幸せ」という意味。
*紅牡丹
......緑茶ベースが多い中では珍しい紅茶で作られた工芸茶。
形を楽しむ工芸茶は、ぜひたっぷりとしたガラスの器でいれてみてくださいね。