第27回 六大茶類+花茶+工芸茶のお話がすんだところで、少し閑話休題

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 今年のお正月は、台湾で過ごして参りました。
 台北101ってご存じですか? 一瞬世界一高いビルだったものの、現在はアラブ首長国連邦のブルジュ・ハリファに抜かれ、ただいま世界9位の超高層ビルでございます。そのビル全体に花火をつけて、年越しの瞬間を盛大にお祝いする、というなんとも豪快なイベントがあるのです。
 名物イベントではあるものの、コストの増大、周囲に散らばる煙と煤、燃えカスなんかで意外と大変らしく、毎年今年で最後かも、と言いつつ、毎年開催している......最後最後詐欺ではないか、との疑念も兆しますが、ほんとうに最後になっちゃったら悔やむから、今のうちに見に行こう、と。
 ついでにまだ行ってなかった高雄にも行こう、あと新竹の新聞王のものすごい別荘がいまホテルになってるそうだから泊まってみよう、初詣に珍寺行こう、あれ食べよう、あそこ行こう、これ買おう、どれ見よう......と計画してたら、7泊8日の旅程に膨れ上がっておりました。
 でも、そんなあれやこれやを全部書いてると脱線も甚だしい上に、既に玉突き事故を起こしかけている連載にも響きますので、ささっと、この旅で出会ったお茶のことだけ。
 と言っても、もうお茶は売るほどあるのです。去年夏に阿里山のお茶農家に泊まりに行って、お茶充はしたので(そっちの話も書かなくちゃ)、今回は買わない、見に行かない、と決めていたのですが......ばったり出会っちゃった。
 永康街の奥にある昭和町文物市集は、ビルの一階に骨董屋さんが20店舗ばかり集まる、なんとも不思議な場所。ガラクタ7割、逸品らしきもの2割、そして謎のオブジェ1割。お宝を掘り出そうと鼻息荒く乗り込むよりは、変な物博物館をのんびりと覗いて歩く感じ。
 で、この日。まだ時間が早かったので、お店はどこも開店前。グルっと一回り、見るだけして出ようと思ったら、一軒のお茶屋さん前に謎の丸太が。
 なに、これ?
 黄色い。
 大きい。
 高さは私の身長より、太さは一抱えもあるこれは......安化千両茶......うええええええええ?! 千両茶、本物?!
 第22回で、半ばネタのように書いたあの千両茶が今私の目の前に。

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 え、でもあの時、書いたように、過去には200万元(3800万円)の値がついた千両茶もあるとか。それが、こんなところにぽんと放置、そしてあたりは誰もいない、神が私に千両茶を試せと言っているのか......なんて邪な考えはこれっぽっちもいだきませんでした、はい。そもそも36kgあるので、スーパーの前に象がリードで繋がれてるような感じです。
 大きい、無駄に大きい、と爆笑しながら写真は撮りましたけどね。
 もしお店が開いてて、150gくらいからでも買えるなら欲しかったなぁ。

 その後は永康街をぷらぷら、アンティークの黄銅の茶托(高い)をほれぼれ眺めたり、台湾に行くたびに一匹ずつ連れ帰っている虎の形の枕を選んだり。
 台湾ならではのモダンでおしゃれ、意識高い系お茶屋さんの前を通りかかったところ......あれ? もしかして、あのお茶......
 この日二度目、まさかの出会い。
 紫芽紅茶。
 こちらも第22回で書いてますが、この時出会ったのは黒茶ではなく、紅茶でした。
 おそるおそるお店のお姉さんに「これ、試飲できますか?」と聞いたら、あっさり「いいですよ~」と開封してくれました。
 あまりお茶を淹れるのに慣れてない&お客様の対応でテンパり気味なお姉さんがいれてくれた紫芽紅茶......おや、イマイチ......?
 もっと厚みのある味わいが出せるんじゃないかな、まだポテンシャルあるよな、熱嗅は悪く無い(この時点でお姉さんは他のお客様の相手にかかりきりになったのをいいことに、勝手に蓋碗を開けて茶殻を調べ始めている)、まだ葉底(茶殻)も開ききってないな、惜しい、いれ方を模索すればもっと美味しくなりそう......買いました。買っちゃいました。もう今回は買わない、と決めてたのに。
 しかもお得だから、とつい大きな缶の方を。80g400元(2827円)だったかな。しかしお値段以上に、やる気に火をつけられちゃったので、もうしかたない。

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 かつて、懇意にしていただいている台湾のお茶屋さんに「そんなにお茶が好きなら、台湾に住みなさい。うちで働きなさい。四六時中お茶と向き合うといい」と真剣に言われ、一瞬目の前にめくるめく茶葉ライフが広がったのですが、実行に移すわけにもいかず。今となっては、お茶100%じゃないからこそ見えるものもある、この形で良かったんだ、と思っています。
 でもね、あの時分かれた世界線の片方には、下手だけど勢いだけはある中国語で千両茶を「5kg分切って!!」と交渉したり、紫芽茶のいれ方から思わぬご縁が広がって新たな販路拡大を目論んでたりする、全力でお茶に生きる私がいるのかもしれませんね。
 こちらの世界線の私は、お茶の楽しさ奥深さを広めるべく、文章で勝負です。
 さぁ、次回は茶器のお話ですよ。