第28回 茶器のお話
お茶そのもののお話がひと段落したところで、今度はお茶を取り巻く外側の世界にも目を向けてみたいと思います。
まずはお茶をいれるための道具から。
皆さんも、もしかしたら茶芸道具一式を何かで見たことがあるかも。
一番きちんとしたフルセットでは、だいたいこんな構成になってます。
1:蓋碗、もしくは茶壺
お茶を入れるための道具、日本で言うところの急須ですね
2:茶海
お茶が濃くなったり薄くなったりしないように、均一にお客様にサーブするためのピッチャー
3:飲杯
お茶を飲むための器
4:聞香杯
お茶の香りを楽しむための器
5:茶托
飲杯と聞香杯をセットする受け皿
6:茶漉し
お茶の細かいカスが入らないよう、茶海にセットする、え~と......茶漉し、です(他の言い方が見つからない!!)
7:茶罐、茶筒
お茶を保存しておくための容器
8:茶荷
茶缶から出したお茶の葉を入れ、茶葉の状態を確かめたり、お客様に確認していただくための器
9:茶盤(茶盆)
茶壺や杯にお湯を注いだりかけたりする際、こぼれたお湯を受け止めるための箱状の台
10:茶巾
杯の底を拭いたり、何かとこぼしたものを吹く布巾
11:茶道具 筒状の容器に下記の道具が立てられている
茶漏 茶壺などに茶葉を入れるときに使う漏斗
茶挟 熱湯で温めた杯などを持つための、トングのようなもの
茶則 茶缶から茶葉をすくいだす筒状のスプーンのようなもの
茶さじ 茶荷や茶則から茶葉を移すための道具
茶針 茶壺の口に詰まった茶葉を突くための道具
(番外編12:茶玩具
これは全然必需品ではないのですが......趣味人の中には、様々な形をした陶器を茶盤の上に置き、お茶をこぼしたり捨てるときにかけます。お茶の香りや色を移して、育てる楽しみを味わうもの。中が空洞になっていて、熱による空気の膨張で水が吹き出したりする楽しい一品も。だいたいが、三本足の蛙[前にある二本の足で左右の、残り一本で後ろの財をかき集める、という、紹運や商売繁盛の象徴]や子豚[富や福の象徴とされる]といった富や成功を願う吉祥の形なんですが、中にはダジャレ的なもの、シモネタ的なものも......)
さぁ大変です。道と名のつくものは、どれも道具やお作法がたくさんあって、ちょっとクラクラしますね......でも、ご自分でお茶を楽しむだけならば、4~5番くらいまであれば大丈夫。
と、書いておきながら。
実は究極に簡単でシンプルな道具が一つだけあるのです。これさえあれば、あとはなんにも必要なし。しかも必ず皆様のお家にもあるという......。
はい、グラスです。
そんなもので?とお思いかもしれませんが、グラス茶芸という茶芸もあるのです。私も実技試験でやりました。
グラス茶芸に向くのは、葉っぱの形自体が美しい緑茶や、揉捻タイプの青茶。逆に葉っぱが細かったり、崩れてたりするタイプのお茶は向いていません。
マグカップでも構いませんよ。
一応、茶芸なので、それなりに決まりはあります。
はじめにお湯を入れ、その上から茶葉を入れる上投法。
まず茶葉を淹れ、その後お湯を注ぐ下投法。
お湯を半分くらい注ぎ、茶葉を淹れ、またお湯を注ぐ中投法。
すぐに沈んでしまう碧螺春のような茶葉は上投法で。浮いてしまう茶葉、高い温度でいれた方が美味しい茶葉は下投法で。その中間の茶葉は中投法。
緑茶ならば、グラスの中で茶葉が踊るように浮き沈みする「三起三落」を楽しんで。
青茶ならば、乾燥ワカメのごとくもりもり戻る茶葉をワクワク眺めて。
お一人なら、そのまま飲んじゃいましょう。大丈夫、中国茶は茶葉がお湯に浸かりっぱなしでも、そうそう苦くなったり渋くなったりしません。ある程度飲んだら、お湯を継ぎ足し継ぎ足し。1日楽しむこともできます。
この方法の応用で、ペットボトルに茶葉を入れて、水出しにしたお茶も美味しいんです。甘みのないソーダ水で作れば、ちょっと面白いスパークリングティーに(でもこの方法、簡単でありながら、水やソーダの硬度で全然味が変わるので、追求しだすと恐ろしい道でもあります)。
大事なのは、美味しいお茶を飲みたいな、と思う心。
自分が美味しいと思う茶葉。
あとはお湯とグラス、もしくはマグカップだけ。
一番簡単で手軽、でもとっても面白い簡単茶芸、まずは一歩踏み出してみましょう。
さ、次回はもすこし奥深いところに参りますよ......ズブズブズブ。