第30回 茶具のお話 蓋碗編
茶壺と並んで、茶芸において大事なのが蓋碗(がいわん)です。
茶壺は陶器でしたが、蓋腕は磁器。釉薬がかかっているので、お茶の種類を問わず使えます。成分を吸着しない分、よりダイレクトにお茶の味が出るのもポイント。
お茶好きとしても知られる中国の作家魯迅は、著書「喝茶」の中で「喝好茶,是要用蓋碗的,于是用蓋碗。果然,泡了之后,色清而味甘,微香而小苦,确是好茶葉。」と書いています。これは「美味しいお茶を飲むには、蓋碗を使うといいよ。蓋碗だと、色も澄んでるし、味も甘い。香りが良くて、苦みも少ない。お茶は本当にいいねぇ」という意味(たぶん。中国茶を学んでいるものの、中国語はできないのです......)
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蓋碗は、また三才壺とも言います。
三才とは、天を表す蓋・地を表す茶托・人を表す碗のこと。
お湯で温めた蓋碗にそのまま茶葉を入れ、お湯を注ぎ、蓋を少しずらすようにして茶水を注ぎます。なので、実は蓋はやや楕円形をしてるんです。ぴったり綺麗に碗と形があってしまうと、水圧や温度差で開かなくなっちゃいますからね。
同じように見えて、微妙に形や角度、厚みが違うので、手に合う蓋碗を見つけるのが大事。
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あと一番の問題は、熱さ。熱湯を入れた磁器、熱いんです。蓋碗自体も熱い、漏れてくる湯気も熱い。なので、まず蓋碗を選ぶときは碗の口の部分が広がっていて、薄いものを。これだと、熱がほどよく逃げるので、熱くなりにくい。それから大事なのが持ち方。
まずは一番よく見る、この持ち方(*1)。女持ち、とも言いますが、女性しかこの持ち方をしてはいけません、と言うわけではありません。でもこの持ち方、綺麗なんですが、熱いんです。
続いて、この持ち方(*2)。通称男持ち。熱くないです。ただ、手の大きい方限定。
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そして、熱いのはいや、でも手は小さいし、指の力も無い私の持ち方は、これ(*3)。この持ち方はなんて言うんでしょうね......。
蓋碗は茶壺のようにお茶を注ぎ分けるのにも、また蓋を少しずらしてそのまま飲む飲杯的な使い方もできる、とても便利で優雅な道具です。
優美な花模様、かわいらしい金魚や桃の吉祥模様、すっきりとした無地......しっくりと手に馴染む、お気に入りの一客が見つかったら、あなたのお茶の時間がきっともっと素敵になりますよ。