第39回 世界のお茶の飲み方
今回は少しゆるく(いつもゆるいけど)、世界のお茶の楽しみ方を見てみましょう。
まずは一番知っている人が多いと思われる、チャイ。
インドの煮出しミルクティですね。紅茶の産地であるインドですが、良い茶葉はみな輸出用、インドの人たちが口にできるのは美味しくない残りの粗悪品。ダスティと呼ばれる、埃のように細かな茶葉は、そのままではとても苦みや渋みが強くて飲めません。なので、スパイスを加え、牛乳で渋みを抑え、お砂糖たっぷりで飲むようになったのだとか。現地では元気づけの飲み物、がつんと濃いのを少量、きゅっとひっかけるそうです。
家で作るのなら、缶の紅茶の最後、粉のようになってる茶葉を使うのが一番近いのかも。
ロシア紅茶は飲んだことありますか?
紅茶にジャムを入れて飲む、あれ? 正確には、「ジャムをなめながら紅茶をいただく、あれ」なんです。
寒いロシアではサモワールという、お茶を温めておく金属製の容器が重用されています。いつでも熱々の紅茶が飲めるって、いいですよね。紅茶好きなら皆一度は憧れるサモワール、私もご多分に漏れず購入を考えたことがあります。意外と大きくて、意外とお高いので、はっと夢から覚めたのですが......
伝統的なサモワールは上部にポット、真ん中にお湯、下には炭を入れて使います(現在は電熱式がほとんど)。一日中ことことと煮出された紅茶をお湯で割り、ジャムとウォッカと共に楽しむ......いいなぁ。
お次はモロッコ。
モロッコの人が好きなのは、ガンパウダー(火薬)という細かい緑茶、フレッシュなミント、そして大量のお砂糖から作られるミントティー。
濃くて甘くて元気の出るミントティーを飲みながら、リヤド(古い邸宅)の中庭でのんびり過ごす......いいなぁ。
チベットの名物はバター茶。
持ち運びのしやすいように固めた黒茶にヤクのバターとお塩を加えて煮出す、独特の飲み方です。乾燥した厳しい気候の中で、水分、塩分、そしてカロリーを手軽に摂取できるバター茶はとても合理的な飲み物なんですね。
私、子供の頃、愛知県犬山市にあるリトルワールドで飲んだことがあります。薄いスープのような、なんとも不思議なお味でした。
旅行先で飲んだと言えば、韓国の擂茶(れいちゃ)。台湾にもありますね。沖縄のぶくぶく茶もルーツは同じかもしれません。
大きなすり鉢に生茶、生米、生姜をいれ、ごりごりと磨り、お湯を注いでいただきます。今はバリエーションとして胡麻や陳皮、薄荷、ピーナツやお砂糖を入れて美味しく飲まれることも。
歴史は古く、遡ること三国時代。あの張飛が率いる軍が武陵を攻めようと赴きますが、兵達が病気でバタバタと倒れてしまいます。しかし、張飛軍の礼儀正しさに感動した地元のお医者さんが、作り方を教えたとされています。お茶を飲んだ兵隊たちは無事回復したそうですよ。
台湾と言えば、茶葉料理も有名ですね。
お茶で煮込んだ茶葉蛋(ゆで卵)は台湾のコンビニならかならず置いてありますし、龍井茶と海老の蒸し物や、烏龍茶炒飯なんかも。茶農家兼茶館でいただいた、そのまんま茶葉の天ぷらも美味しかったなぁ。
私もお肉を煮るときに烏龍茶を使ったりしています。脂が抜けて、あっさり美味しくなるんですよ。
食べる茶葉で忘れてはいけないのが、ラペソー。ミャンマーのお茶です。ラペは「茶」、ソーは「湿った」と言う意味。湿ったお茶?とちょっと不思議になりますよね。
その正体は、新芽を使った茶葉のお漬け物、発酵食品です。
食べ方は、まずお皿の真ん中にラペソーを盛り、周りにピーナツや干しエビ、胡麻など4、5種類の具を並べ、塩と油と混ぜ合わせながらいただきます。
ああ、もうこれ絶対美味しいやつ......!! なかなか日本では食べる機会がありませんが、いつか必ず!!と憧れております。
いろいろな世界のお茶をご紹介して参りましたが、最後は私が留学していたタイのアイスティー、チャーイェン(ชาเย็น) 。チャーは茶、イェンは冷たいという意味(なので熱いお茶はチャーローン)。
特徴は、すさまじく甘い、そしてなぜかびっくりするほどオレンジ色。甘さの元は練乳、オレンジの元は食紅です。良い茶葉をたっぷり使えばオレンジ色のアイスティーができますが、現在は食紅を使うことの方が多いとか。
暑い暑いタイ、日中はあっという間に40度を超えます。日向になんていたらすぐに焼き上がっちゃう。ビニール袋にたっぷり入れた氷と甘い甘いチャーイェンをストローですすりながら、木陰でぐだぐだするのがタイの午後。あぁ、懐かしい。
世界のいろいろなお茶、いつか、その国で、その空気の中で、その国の人たちと一緒に、飲んでみたいですね~。
《台湾の茶葉料理は茶葉がしっかり主役です。
写真は茶葉の天ぷら(左)と、炸茶蝦條(海老を鉄観音茶葉と金萱茶葉と揚げたもの)》