3月6日(火)各誌3月号より
いつも愛読しているコラムや、3月号で気になった読み物、印象に残ったもの、楽しみにしているものをメモしておきたい。
「オール讀物」3月号
なんといっても、森絵都「女たちのペットレスキュー」が読ませる。「原発20キロ圏内同行取材」という副題が付けられたルポだが、70ページもある大作だ。人間に近づいてきて体をすりよせてくる犬もいれば、警戒して近づいてこない犬もいて、置き去りにされた犬や猫の生の姿にはっとさせられる。犬猫のレスキューをしているのは四十代の女性が圧倒的に多いとの指摘は興味深い。
「小説新潮」3月号
第四回新潮文庫感動大賞 受賞作発表というページがあり、選考委員の小川洋子が選んだ大賞と優秀賞が掲載されている。大賞は新潟の高校二年生だが、その作品「十七歳」が素晴らしい。特に、ラスト1行が秀逸だ。
「小説現代」3月号
坪内祐三「酒中日記」を読んでいたら、映画監督の内藤誠が、きわめて低予算でペイできる映画(の原作)が見つかったと言うので、何ですか?と尋ねると、小説現代で連載している酒中日記、ブコウスキー原作の映画、アレよりもっとドキュメンタリー風にするの、これなら予算三百万円で撮れると。主演は誰でいくんですかと尋ねると、それはあなたですよ、あなたに決まってるじゃないですかと言われた話が出てくる。最近はほとんど映画を見てないが、それなら見てみたいなと思った。
「小説すばる」3月号
椎名誠「風景進化論」は第3回だが、そのページを開くといきなり「国分寺書店はもうなかった」と見出しが目に飛び込んできた。そうか、国分寺書店はもうないのか。続けて読みたくなったが、ただいま椎名の全著作をデビュー作から順番に読んでインタビューしている最中なので、その順番がくるまで新作は読まないことに決めている。そこで、そっとページを閉じた。
「野性時代」3月号
大沢在昌氏誌上小説講座は第9回で、忙しい作家がよくこんなことを出来るよなといつも感心している。ところで、この野性時代、文庫の付録もついて定価が500円。ちなみにオール讀物、小説新潮、小説現代、小説すばるの定価は、順に、990円、1000円、940円、880円だ。野性時代の500円がいかに安いか並べてみると一目瞭然。しかも雑誌の厚さは野性時代がいちばんなのだ。
「小説推理」3月号
喜国雅彦「本棚探偵最後の挨拶」は日下三蔵の書庫の写真が圧巻で今月も読ませたが、ここでは郷原宏「日本ミステリー論争史」をあげておきたい。今月でこの連載も11回目である。忘れていることが多いので、とても参考になる。先月号までは邪馬台国論争の紹介だったが、松本清張と高木彬光の論争を丁寧に紹介して興味深かった。
「読楽」3月号
三浦しをんの連載「神去なあなあ夜話」は第3話である。もちろん、『神去なあなあ日常』の続篇だ。三浦しをんは近作『舟を編む』がベストセラーになっているようで、たしかにあれも面白いが、職業小説ならこの『神去なあなあ日常』もなかなかに面白かった。こちらに登場するのは林業だ。将来についてあまり深く考えていない平野青年が林業の世界に飛び込んで(というよりも送り込まれて)、そこで新たな体験をしていくというのが前作だったが、その面白さは『舟を編む』に匹敵する。にもかかわらず、『舟を編む』だけがクローズアップされているようで、私は面白くない。いや、『神去なあなあ日常』も売れたのかもしれないが。
「ミステリーズ」51号
川出正樹の連載「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション」は2回目だ。「魅惑の翻訳ミステリ叢書探訪記」との副題がついたコラムで、今回はあの「クライム・クラブ」篇。一つだけ注文というか個人的な希望を書いておけば、この連載、1回が6ページなのだが、これ、短いのではないか。最低でも8ページ、出来れば1回10ページはほしい。いまからでも遅くはないので、編集部は検討されたい。
「本の旅人」3月号
西原理恵子「スナックさいばら」は第四回目だが、先月号の漫画が傑作だった。佐野洋子と対談したときのことを紹介する漫画だが、「私くらいの歳になるとね、やっときゃよかった話で盛り上がるのよ」というコマに続いて、次のコマでは3人の女性が「私は42歳のとき昔からずっと好きだった人にさそわれて−−でも夫も子供もいるし」「私は50歳の時、こんな歳で素敵がお誘いがあったのに断って」「若いころから夫とはうまくいってなかったのに自分を踏ん切れなくて恋ものがして」と発言し、三人が声を揃えて「やっときゃよかったのよねえ」というコマに続くのは、著者らしき女性の声が目いっぱいに大きく「いーですか皆さん。女の浮気はバレません」と続くのである。
「本」3月号
相変わらず、高島俊男の連載「漢字雑談」が読ませる。この連載ももう24回とは驚く。1回12〜13枚だろうから、もう少しで単行本になるか。それが楽しみである。
「ちくま」3月号
鈴木則文「東映ゲリラ戦記」が面白い。高島俊男の「漢字雑談」も個人的には愛読しているが、版元のPR小冊子でいちばん楽しみにしているのは、ただいまこの連載である。映画監督の自伝はたいてい面白いが、これも例外ではない。今回は1972年公開の「温泉すっぽん芸者」に笹沢左保が出演する顛末について。ただいま第6回なので、こちらは単行本になるまでまだしばらく時間がかかるだろう。
「オール讀物」3月号
なんといっても、森絵都「女たちのペットレスキュー」が読ませる。「原発20キロ圏内同行取材」という副題が付けられたルポだが、70ページもある大作だ。人間に近づいてきて体をすりよせてくる犬もいれば、警戒して近づいてこない犬もいて、置き去りにされた犬や猫の生の姿にはっとさせられる。犬猫のレスキューをしているのは四十代の女性が圧倒的に多いとの指摘は興味深い。
「小説新潮」3月号
第四回新潮文庫感動大賞 受賞作発表というページがあり、選考委員の小川洋子が選んだ大賞と優秀賞が掲載されている。大賞は新潟の高校二年生だが、その作品「十七歳」が素晴らしい。特に、ラスト1行が秀逸だ。
「小説現代」3月号
坪内祐三「酒中日記」を読んでいたら、映画監督の内藤誠が、きわめて低予算でペイできる映画(の原作)が見つかったと言うので、何ですか?と尋ねると、小説現代で連載している酒中日記、ブコウスキー原作の映画、アレよりもっとドキュメンタリー風にするの、これなら予算三百万円で撮れると。主演は誰でいくんですかと尋ねると、それはあなたですよ、あなたに決まってるじゃないですかと言われた話が出てくる。最近はほとんど映画を見てないが、それなら見てみたいなと思った。
「小説すばる」3月号
椎名誠「風景進化論」は第3回だが、そのページを開くといきなり「国分寺書店はもうなかった」と見出しが目に飛び込んできた。そうか、国分寺書店はもうないのか。続けて読みたくなったが、ただいま椎名の全著作をデビュー作から順番に読んでインタビューしている最中なので、その順番がくるまで新作は読まないことに決めている。そこで、そっとページを閉じた。
「野性時代」3月号
大沢在昌氏誌上小説講座は第9回で、忙しい作家がよくこんなことを出来るよなといつも感心している。ところで、この野性時代、文庫の付録もついて定価が500円。ちなみにオール讀物、小説新潮、小説現代、小説すばるの定価は、順に、990円、1000円、940円、880円だ。野性時代の500円がいかに安いか並べてみると一目瞭然。しかも雑誌の厚さは野性時代がいちばんなのだ。
「小説推理」3月号
喜国雅彦「本棚探偵最後の挨拶」は日下三蔵の書庫の写真が圧巻で今月も読ませたが、ここでは郷原宏「日本ミステリー論争史」をあげておきたい。今月でこの連載も11回目である。忘れていることが多いので、とても参考になる。先月号までは邪馬台国論争の紹介だったが、松本清張と高木彬光の論争を丁寧に紹介して興味深かった。
「読楽」3月号
三浦しをんの連載「神去なあなあ夜話」は第3話である。もちろん、『神去なあなあ日常』の続篇だ。三浦しをんは近作『舟を編む』がベストセラーになっているようで、たしかにあれも面白いが、職業小説ならこの『神去なあなあ日常』もなかなかに面白かった。こちらに登場するのは林業だ。将来についてあまり深く考えていない平野青年が林業の世界に飛び込んで(というよりも送り込まれて)、そこで新たな体験をしていくというのが前作だったが、その面白さは『舟を編む』に匹敵する。にもかかわらず、『舟を編む』だけがクローズアップされているようで、私は面白くない。いや、『神去なあなあ日常』も売れたのかもしれないが。
「ミステリーズ」51号
川出正樹の連載「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション」は2回目だ。「魅惑の翻訳ミステリ叢書探訪記」との副題がついたコラムで、今回はあの「クライム・クラブ」篇。一つだけ注文というか個人的な希望を書いておけば、この連載、1回が6ページなのだが、これ、短いのではないか。最低でも8ページ、出来れば1回10ページはほしい。いまからでも遅くはないので、編集部は検討されたい。
「本の旅人」3月号
西原理恵子「スナックさいばら」は第四回目だが、先月号の漫画が傑作だった。佐野洋子と対談したときのことを紹介する漫画だが、「私くらいの歳になるとね、やっときゃよかった話で盛り上がるのよ」というコマに続いて、次のコマでは3人の女性が「私は42歳のとき昔からずっと好きだった人にさそわれて−−でも夫も子供もいるし」「私は50歳の時、こんな歳で素敵がお誘いがあったのに断って」「若いころから夫とはうまくいってなかったのに自分を踏ん切れなくて恋ものがして」と発言し、三人が声を揃えて「やっときゃよかったのよねえ」というコマに続くのは、著者らしき女性の声が目いっぱいに大きく「いーですか皆さん。女の浮気はバレません」と続くのである。
「本」3月号
相変わらず、高島俊男の連載「漢字雑談」が読ませる。この連載ももう24回とは驚く。1回12〜13枚だろうから、もう少しで単行本になるか。それが楽しみである。
「ちくま」3月号
鈴木則文「東映ゲリラ戦記」が面白い。高島俊男の「漢字雑談」も個人的には愛読しているが、版元のPR小冊子でいちばん楽しみにしているのは、ただいまこの連載である。映画監督の自伝はたいてい面白いが、これも例外ではない。今回は1972年公開の「温泉すっぽん芸者」に笹沢左保が出演する顛末について。ただいま第6回なので、こちらは単行本になるまでまだしばらく時間がかかるだろう。