第6回
配属に関しては、特に希望があったわけではない。2次面接の時に、それを聞かれたのだが、「どの雑誌に配属されても一生懸命やりたいと思います」的なマニュアル回答をしたら、
社長が、激高。
「ウチは「本の雑誌」みたいなミニコミとは違うからね!! そこのとこをちゃんと判ってくれてないと困るよ。それに、どんな雑誌でもといいっていわれても困るんだよ。ウチは専門的な雑誌もあるから、やりたいったってできないものもあるだろ!! 「さぶ」とか「JUNE」とか...」
(まあ、「さぶ」も「JUNE」も専門的な雑誌ですけど...、そっちの気はありませんし...)
具体的な誌名を求められていたのかもしれないが、グラビア誌は、数誌あったが判型が異なるくらいで中身はほとんど一緒。劇画誌も2誌あったが、表紙を付け替えても分からないような内容。個性のあるものでは、60~70年代を彷彿とさせる「小説官能読切」、「FOCUS」のエロ本版「Sexy LOOK」、中高年齢向け告白投稿誌「性生活報告」、"男と男の抒情誌"「さぶ」、"今、危険な愛を超えて"21世紀に入って地球規模で腐女子を生み出した「JUNE」「小説JUNE」、パンチラ写真投稿誌「セクシーアクション」、そのアイドル版「投稿写真」「写真少年」、そして"絶対アイドルマガジン"「ザ・シュガー」(Wの配属先の「Don't」は、マガジンハウスの「POPEYE」や講談社の「Hot Dog Press」でSEX特集をやると売れるので、毎号How to SEXの特集を組んだ雑誌を出せば売れるんじゃないかというコンセプトの下、創刊準備が進められている真最中だった。当然、入社前は知らない)とバラエティに富んではいたが、グラビア誌から選べば、なぜその雑誌なのか訊かれたら答えに窮してしまいそうだし、社長おっしゃるところの専門誌は当然ながら除外。小説誌や告白誌は読者年齢が高く、20代の若者が志望するジャンルではない。
となるとフツーは、「ザ・シュガー」か「投稿写真」、「写真少年」あたりを選ぶのだが、生憎オレは、ゴシップやスクープのネタとして以外のアイドルや芸能界には全く興味がなかったし、自分が漫画マニアなのを棚に上げて、いい歳をして(といっても20代ですけど)アイドルに「キャアキャア」いってるマニアを軽蔑してさえいた(近親憎悪というか、別ジャンルのマニアを敵視しがちなのは当時のマニアの特色)。そんな訳で、マニュアル的な回答をせざるを得なかったのだ。
そのオレがアイドル系の「投稿写真」に配属。履歴書に芸能・アイドルに興味なしと書いていたわけではないが(誰も書かないと思うが)、どう考えても適材適所とは言い難い。
(ま、芸能系といっても全体の1/3程度だし、ガチガチのアイドル雑誌の「ザ・シュガー」に行くよりは何倍もましか。カメラテクニックの企画もあるから、写真の知識は生かせそうだな。絡み写真のグラビアページもないみたいだから、男優をやらされることもなさそうだし。ウチの会社の中じゃ、レイアウトなんかも今っぽいほうだ。とにかく、決まった以上は頑張るっきゃないな)
最上階の社長室から編集部のある2Fまで、階段を降りながら、そんなことを考えていた。