第37回
12月号では、またまた新企画が一本(またまたオレの担当(泣))、真鍋公彦(あさのまさひこ)の「あいどるいらすとぽーとれーと」が始まった。真鍋クンは、吉岡平さんが紹介してくれた人で、本職(?)はフィギュア系なのだが、アイドルも好きで、しかもイラストも描けると守備範囲の大きい多才な人物で、「そのうち何かレギュラーで」と話していたのがこの企画で実現した。真鍋クンはこのコーナーをきっかけにアイドル系ライター兼イラストレーターとしても活躍するようになり、他社のアイドル系ムックの表紙イラストを飾るなど活動範囲を拡げることになる。
この号の表紙・巻頭は江戸真樹(ついでに「森伸之の制服ヌーベルバーグ」も。森さんは、「実物のアイドルに会える」と大喜びだった)。10月号のグラビアに続いての登場だ。例の「おウチに帰りたい」発言以来、オレ自身が「このコは応援してあげなくちゃ」と多少入れあげていたせいもあるが、正味の話は、「投稿写真」水着のグラビアをやってくれるアイドルが少なかったこともある。なんせ、撮影衣装の話になると編集長は二言目には「水着でできるか訊いてみろ」とせっつく。オレとしても腰を引いているわけでもないが、事務所側は、なかなか首を縦には振ってくれない。そういう状況の中で、江戸真樹の事務所は非常に協力的だったのだ。
2か月ぶりに会った江戸真樹は、驚くほど激ヤセしていた。元々、線の細い方ではあったがふっくらとしていたホホの肉が落ちて、筋が入るようになっていた。さらに、前の撮影時と同じサイズの水着と用意していたのだが、ブカブカで本来ボディラインがクッキリ出るはずなのにシワが寄ってしまう。仕方なく正面撮りの時は、背中の部分をクリップで留めて何とか凌いだほどだった。
(やっぱり、つらいんだろうな~)
それでも健気に笑顔を見せている江戸真樹を見ながら、同情するしかオレにできることはなかった。
これが江戸真樹との最後の仕事となり、次の年の夏、レギュラー番組中のショートドラマの収録に真黒に日焼けして、髪の毛をパーマでクルクルにしたそれまで(一応連続ドラマ)とはまったく違った姿で現れ、現場をパニックに陥れながらも、転校という形で降板し(彼女のマネージャー曰く、「この世界に入って、あんなに驚いたことはない」)、彼女は芸能界から姿を消してしまう。彼女にしてみれば、ささやかな抵抗だったのかもしれないが、彼女を盛り立てようとしていたスタッフやファンにとっては裏切りに他ならない。だが、彼女の本音を垣間聞いていたオレは、その話を耳にした時、吉岡さんが言っていたような最悪の結果にならなくてむしろよかったと心配の種が一つ消えた気がした。