第49回
夕食は、これもFさんの仕入れてきた情報でロコに人気があるというステーキハウスでとった。ここで再び、飲の次は食のカルチャーショックに見舞われる。レストランの内装は、アメリカンスタイルでコ洒落ていた。ディナーセットのサラダは、当時の日本ではまだ珍しかったサラダバー方式だ。腹が減っていたオレは、みんなの分を注文するや、素早くサラダバーに向かった。トマト、レタス、キューリ、オニオンスライス...並んでいるものは日本のサラダと変わらない。山盛りの皿を手に席に戻ってガツガツと食い始めた。
「ガリッ」
カリフラワーを口にしたとたん、サラダとは思えぬ歯ごたえと一緒に青臭い匂いが広がる。
(これって、生????)
日本で食べる時と同様に茹でてあると思っていたら、大間違いだった。これ以後、どこの国のサラダバーでもカリフラワーは取らないようにしているので、日本以外の国ではカリフラワーを生で食べるのが普通なのかどうかは未だに不明だ。ただ、先日韓国に行った際、野菜スティックに生のサツマイモが入っていたので(韓国人に聞いたところ、精がつくらしい)、生で食べる野菜も国それぞれなのだろう。
初日なので、夕食後は途中、例のスーパーに寄ってツマミやオヤツ用のスナックや果物を買いに行ったくらいで、そそくさとホテルに戻る。
窓際の応接セットのソファーでくつろぎながら、Fさんとビールを飲んでいるとノックの音。ルームサービスを頼んだ覚えはない。
(こんな時間に誰だ!?)
警戒しながらドアスコープを除くとKとモデル二人。どこか行きたいとこでもあるのかな? とドアを開ける。
「衣装合わせをしとかないと...」
言われてみれば、やっていない。Kは、モデルの二人と撮影で一緒になったことがあったので、多めに持って来てくれるように頼んだだけだった。日帰りロケの場合、衣装はその場で決めるのだが、海外ロケの場合は初日の夜に決めておくのが普通らしい。その方が効率よく撮影できるのは確かだが、Fさんもオレも海外ロケは初めてでそんなことは全く知らなかった。
ベッドの上に並べられた水着をFさんと一緒にこれは黒木、それは堤と選り分ける。
「じゃ、着てみてくれる」
Kの一声で、モデル二人は交互に渡された水着に着替えて出てくる。まるで水着ファッションショーの出前だ。
「こりゃ、いいや」
「最高っすね」
ビールの酔いが少し回っているFさんとオレは、二人がバスルームで着替えている間に上機嫌でヤニさがった笑みを交わした。ハーレムの主になったような気分だ。もちろん仕事なので、ちゃんと似合っているかチェックしたり、どんなシチュエーションで撮ったらいいか打ち合わせたりもしていたが、海外ロケ中の最高の余禄だった。
30分足らずで水着ショーは終わった。
「明日は、7時に下のラウンジで朝食ね。おやすみ」
K達を部屋まで送り出して、部屋に戻った。
「それじゃ、そろそろ行きましょうか?」
オレ達には、もう一つのお楽しみがあるのだった。