第62回
こうして、'87年6月号でマニア向けアイドル雑誌化が完了する。これ以後は、号毎のキャスティングとエピソード(時々、芸能以外の話)という形で進めていきたいと思う。そして、恐縮なのだが取材人数が多くなって、印象の薄かったコについては、触れないこととさせていただく。これまでもそうしていたが、名前があっても記述がないのはそういうことだと了解していただきたい。
'87年6月号/表紙・田中律子(グアムロケ)/グラビア・藤井一子/アイシミュ・守谷香/IDOL SCRAMBLE・姫乃樹リカ・田中美奈子・新井和美
新顔は、守谷香('69年7月26日生まれ、愛知県出身)と田中美奈子('67年9月12日生まれ、千葉県出身)。
守谷香は、松竹ミス・レインボーコンテストでグランプリを獲得し、レコードデビューも決まっていた。見た目通りの良家のお嬢さんといった感じでとてもおとなしいコだった。中森さんとの対談中に「やさしい人が好き」との発言に中森さんが「女の子ってよく理想の男性は"やさしい人"っていうケド、そんなの実はやさしさを装ってるだけかも知れないじゃない」と突っ込んだら、マジで泣きだしてしまうような純情さも持ち合わせていた(撮影中に衣装の問題で泣かれたことはあっても、取材・対談中に泣かれたのはこの時しかない)。
'88年7月号から三代目のアイドル相談室をやってもらっていたのだが、ある時、担当していた三橋祐輔が取材から帰ってきて、ニヤニヤ笑いながら、こんな話をしだした。
「今日の相談に痴漢によく遭って困るってのがあったんスけど、香ちゃんもよく遭ってたらしいんですよ。きっと、あーゆーコだから、文句も言えなくて、かなりひどい事もされちゃったんだろうなぁ~」
かわいそうと思っているのだか、いらぬ妄想に興奮しているのだかわからないが、そんなこともあって、とにかく芸能界に置いておくには心配な性格に見えた。
びっくりしたのは、その約10年後、X JAPANのTOSHIの洗脳騒動の時に、彼の奥さんがTVでコメントしている映像を見た時だ。最初は、(どっかで見たことある顔だけど...?)と妙なデジャブーを感じただけだったが、しばらくしてそれが守谷香だと気がついた。デジャブーを感じるくらいだから、面影はしっかりと残っていたのにすぐわからなかったのは、そのハキハキとした物言いが、オレの記憶に残っている守谷香と結びつかなかったのだ。'90年代に入る頃には、アイドルとしての活動がほとんどなく、その後もどうしていたのかは全く知らないが、10年という月日は、あのおとなしかった少女をはっきりとモノのいえる立派な女性に変えていた。