先週に引き続き、社内引っ越し作業第2日目。
本日は編集部の大移動。僕は自分の場所をとりあえず確保しているので関係ないが、ちょっとした隙を見せると、机ごと捨てられてしまいそうなので、社内に残り見張りをする。セコセコと『増刊 おすすめ文庫王国』の〆作業。
昼過ぎにバイトにやってきた川合くんは、珍しく会社にいる僕を見つけて
「あれ?今日は杉江さん、会社にいるんですか?」と聞いてくる。
「そうそう、デスクワークがあるから、今日は社内にいるんだよ。」と答えると
「へえ…、だったらそれが終わったら机を運ぶの手伝って下さい!」と言われる。
おいおい、何が「へえー」だ。ついに助っ人にもつかわれる立場になってしまったのか…。オレも仕事をしているんだよ、川合くん!!チクショー。
そのまま黙って〆作業をしていたけれど、あまりに社内がうるさく集中できない。予定していた机の配置場所が、どうも思っていた広さと違っているようで、ケンケンガクガクの大騒ぎ。それを右にずらせ!だとかもっと前に持ってこいだとか、もう大変。あまりにうるさいので、僕は逃げるようにして、笹塚K書店さんへ営業に出かける。
しばらくして戻ってみると、どうにか机の位置は決まったようで、ひと安心。あとは、それぞれの荷物や資料を移動すればいいのかな?なんて考えていたら、部屋を見渡していた編集の金子が、
「何だか野暮ったいんだよなあ…、営業部がさあ。」と言い出す。ウロウロと狭い営業部を見て回り、突然思いついたように
「スギエッチの机がいけないんじゃない!その机に貼ってあるメモとか、短冊がカッコ悪いんだよ。なんか会社っぽくなっちゃうんだよね。」と指摘してくる。
そう言われても、ここは会社だし、野暮ったかろうと、カッコ悪かろうと、実務がやりやすければそれでいいんだ。メモだって短冊だって必要だから貼ってあるんだよ、と言い返そうかと思ったが、あまりにみんな目がイッテいる状況だったのでそのまま黙る。
そう言われると僕だけ美的センスがないような感じがしてきて、みんなの机を見て回ることに。確かに僕の机は野暮ったい。頭にきたので机の大掃除を始めた。
引き出しを開けていらない物を捨て、机の上を整理していると、今度はマックの前に座ってウェブを覗いていたデスクの浜本が、
「炎の日誌を読んでると、杉江だけやたらに働いているように見えるんだよなあ。なんかなあ…。」と言い出す。
それに同調するように、助っ人川合くんが
「アレはズルイですよねぇ。なんか杉江さんやたら良い人じゃないですか、ほんとは僕の牛舌を盗み食いするような人なのに、ちゃんと真実を書かなきゃダメですよ!」
と後追いする。
ウォーーーーー!!
どうしてこの会社の人達は、僕をほっといてくれないんだ…。次から次へと余計なことを言い出して、ああでもない、こうでもないなんて、勝手なことを言ってばかり。
確かに僕は日誌に仕事のことを書いているけれど、それは全部ほんとの話。こんなところにウソを書いても仕方ないでしょ、浜本さん。僕はちゃんと働いているんですよ。レッズのない日は…ですけどね。
それに川合くん、僕は確かに川合くんの牛舌を食ったけれど、焼き網の上に乗っている肉が、誰の肉かなんてわからないよ。「僕が焼いていたんです」なんて突然真顔で言われてもさあ。それにあの後、キレイに焼けたレバーをあげたじゃないか。それで一件落着だったんじゃないのか?そんな話を持ち出さないように。
もう僕の頭のなかも爆発寸前のところで、とどめの一発。
机をいじっていた営業事務の浜田が突然
「あっ、杉江さんゴメン!」と金切り声を上げる。
えっ、何?オレの机でもぶっこわしたのかと思いきや
「えーっと、T出版社のIさんから電話があったのを伝え忘れてました。」
それなら別に今から電話すればいいんでしょ?と受話器を持ち上げたら
「今日じゃないんです。」
「えっ、昨日のこと?」
「いえ……。」
「じゃあ、いつなの?」
「先週の……、木曜日なんですけど。」
おいおい、もう5日も経ってるよ、勘弁してくれよ。
あぁ、会社にいるとろくなことがないなぁ…。
とっとと帰ろう。