7月31日(水)
もうこの国は、この街は、そしてこの地球は壊れてしまったのかと思うほど異常な暑さのなか営業に出かける。本の雑誌社営業の掟として、書店さんに入る際は、どんなときでも上着を着るべし!というのがあるのだが、ここまで暑いと上着を着ている方が迷惑な気がしないでもない。
書店員さんも、ダラダラ流れ落ちる僕のおでこの汗を眺めつつ(年々落ちるスピードが速くなっているのはなぜ?)上着を脱いで良いですよと優しい一声をかけてくれるのだが、なかなか素直に従うことが出来ずにいる。
それは前の会社も含めて10年以上に渡ってこのようなスタイルで営業を続けてきたある種、職業病なのであろうが、上着を着ずに訪問すると欠落感というか喪失感というか、妙に不安な気持ちになってしまい、いつも以上におどおどした営業になってしまうのだ。僕のなかでは上着=公の場という動かしがたい概念が出来上がってしまっている。
それ以外でも、3色ボールペン(決して本を声に出して読まない)、手帳、注文書、画板が僕にとっての武士の刀にあたるもので、そのどれかひとつが欠けると、途端に営業力が弱まってしまう。
埼玉を営業。川口のS書店さんを訪問すると、ポイントサービスが開始されていて、おお!と驚く。担当の方に話を聞くと、実はこれが一大事になってしまっていて、組合や出版社からクレームが来ているとか。
1000円購入すると50円の商品券(その書店で使える)を渡していて、これは再販制という考えから問題になるのだろうか? それにしてもポイントカードは何軒かの書店さんで既に導入されていて、そちらはそれほど問題にならず既成事実として受け入れられつつあるような気がしていたから、いまいちクレームの根拠が理解できない。
先日横浜を訪問した際、駅ビルルミネではルミネカードでのお買い物は、常に全商品5%OFFと大々的に歌われていて、それが確か本の購入にも有効になったと聞いている。また他のルミネでも同様に実施されているはずで、それはルミネ主導の方式で、書店側が反対してもかなり強行に加盟させられるという話だった。
それにパルコ系列では何年も前からバーゲン期間中のペックカードでのお買い物は、同様に5%引きになっていて、その期間書店さんの売上がドーンと増えると聞いたことがある。
S書店さんの方式が現金購入に対することだから厳しい指摘を受けるのか、本しか買えないポイント還元だからなのか、主導が書店さんだからなのか、よくわからない。どちらにしても、片方を許して、片方はダメという指導の仕方はおかしいと思う。
いや、もしかしたらどちらにも指導はしているのかもしれないが、だからといって今までポイントカードを実施していたお店に、何らかの実際的な報復措置が取られたとは聞いていないし、そもそも今年の3月再販制維持が決まったとき、ポイントサービスなどによる、段階的還元だかを促進していたような気がするし、出版社主導の値引き本というのもよくわからない。いったい再販制の下では、どれが良くて、どれがダメなんだろうか? メーカーに定価決定権があるということなら、例えば本の雑誌の単行本を3冊以上買ったら、5%引きという取り決めは可能なのだろうか? 業界内にいながら恥ずかしいけれどよくわかない。
そんな疑問のオンパレードのなかでも、デパート関連のポイントカードに対し、出版業界内のルールが、果たして小売りという大きなルールに対抗できるのだろうかという疑問が一番大きい。