8月30日(金) 最終回
一応『炎の営業日誌』は今日で最後なので、最終回らしいことを書こうと思います。
まず、一度でもこのページを読んでいただいた方に、深く感謝します。
ありがとうございました。
元々、ホームページを立ち上げるときのコンテンツ不足により、一方的に連載が決まっていて、ある日あるときから突然始まってしまったのが、この『炎の営業日誌』でした。このタイトル自体も勝手に決まっていたもので、僕自身、サッカーに対しては、かなり燃えている自負がありますが、仕事に関しては、どこまで燃えているのかわからず、いまだにタイトルには違和感を感じています。
書き始めて、辛かったのは、毎日書くというその労力よりも、書ける話と書けない話を区別することでした。
営業マンとして、毎日書店さんや取次店さんをうろついていれば、いろんな話が聞け、ネタに困ることはまったくなかったものの、あまりに裏話的であったり、批判的であったり、特ダネ的であったりして、本来そういうものを書けば、かなりエキサイティングな内容になったと思いますが、しかし、それがこの連載の本意(あるとすれば書店や本が楽しいものと伝えたい)とは、噛み合わないので、一切書くのを控えました。
ただ、たまにその取捨選択を誤ってしまい、苦情や怒りの電話やメールを頂いたこともありました。そんなときは数日間、気分が荒れ果て、夜中にサッカーボールを蹴飛ばしたこともありました。
書くこと、そしてそれを公表することは、とても難しいことだと実感しています。
それから基本的に僕の日々の仕事(営業)について書いているわけですから、その話の舞台は書店さんや出版業界が基本になります。書店員さんは、不動の、売場という顔をさらす場所で働いているので、そういう人達を書くというのは非常に難しいものでした。何か危険があってはいけないし、業界内部から反発を喰らっても大変だし、またプライベートなことはもっと書きづらく、書店名や担当者を頭文字で表記するのを基本にしつつ、難しいときは完全に匿名にしてみたりして工夫をしたつもりです。迷惑をかけてしまった書店さん、書店員さんも少なからずいらっしゃると思います。この場を借りてお詫びします。
2年間続けてみて、良かったことはあるのかと言いますと、この連載のおかげで、書店員さんと親密になれた部分は少なからずあるような気がします。先月連載を辞めたいと書いたとき、安田ママさんから即刻存続希望のメールが届き、柏のS書店Mさんから熱いメッセージを頂き、また一度しかお会い出来ていない小山市のS書店Tさんからも「書店員のストレス発散のため存続を」という手書きファックスを頂いたりしました。また営業中もこの連載の話題から話が盛り上あがることもあり、それはとてもうれしいことでした。
それから、まったく知らなかった人と知り合えたのも大きいです。専門出版社化学同人の営業Yさんとは本当にこの連載だけでつき合いが始まり、今でもメールや電話でやりとりしています。もしYさんが京都ではなく東京の出版社に勤めていたら、夜な夜な酒を飲んだであろうと考えているほどです。また長老みさわさんを始め、幾人かの読者の方ともつき合うことができ、非常に感謝しています。
そういった人間的なつながりとして喜びを感じることはありますが、書くこと自体の喜びはいまいち思い浮かびません。これはきっと僕の中に、根本的に書きたいとか、何かを伝えたいという気持ちがなく、そんなことよりも営業マンとしてもっともっと突き進みたいと考えているからだと思います。
だから、もし、このホームページで初めて『本の雑誌』を知り、そして興味を持って頂き、購読してくれた人がいるとしたら、それが僕としては一番うれしいことです。
長くなりましたが、ご愛読頂き、ありがとうございました。
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……。
本当はこれで終わるはずだったのに、なぜに帰って来なければならないのか…。
悔しいけれど、次週からの『帰ってきた炎の営業日誌』もよろしくお願いします、とつけ加えておきます。