WEB本の雑誌

9月30日(月)

 記憶に間違いがなければ5年前の今日、本の雑誌社から採用の連絡があった。
 その電話を受けて、普通の転職希望者であれば喜ぶのが当然なのだろうが、あの時僕はそれほど転職する気がなく記念受験のような気分で履歴書を送っていたし、おまけに行ってみたら会社とは呼べないほどの小さな所帯に、尻込みしてしまっていたから、正直「採用になりました」と言われ困惑し、焦って保留ボタンを押してしまったのだ。

 その電話で伝えられた給与額も、普通の転職にはあるまじきダウン掲示だった。まあ、それまで僕がいた専門書の出版に比べ、本の雑誌社は商いが小さいからそれは仕方がないことだろう。しかし、そのとき僕は結婚してまだ数ヶ月でお金がかかる時期だったから、数十秒とはいえ、かなり深刻に悩んだ。生活と希望を両立することは、やはり不可能なことに近い。

 しかし僕は、保留を解除し「お世話になります」と伝えた。それは面接の冒頭で、発行人だった目黒さんに聞かれた「なぜ応募してきたのか?」という質問に対して答えた自分自身の言葉が、心の中で蘇ったからだ。

「書店営業がしたいんです」

 それまで働いていたのも同じ出版業だったが、医学書の専門出版だったためその営業先の多くが医療商社であった。どうもそれが僕には馴染めず、大好きな本屋さんを仕事場にしたいと考えていた。その願いが叶うなら、例え小さかろうと、給料が下がろうといいじゃないかと「了承」の結論を出したのだった。

 あれから5年。
 今日もダラダラと雨が降る中、書店さんを廻った。あいにく担当者がお休みの書店さんが多く、あまり良い営業が出来たとは言えない。それでも茗渓堂さんや東京ランダムウォーク神保町店を訪れ、公私含めていろいろな話が出来た。これこそ僕が求めていた人と人の間に本を挟んだ仕事であり、とりあえずサッカーも観られ、メシも食っていけるから、5年前の選択は間違いではなかったのだろう。

◆今日売れていた本
神保町地区 『山の上ホテル物語』 常盤新平著(白水社)
「担当者不在のためコメントなし さすがご当地…なのか、ベスト10入り。ちなみに僕も買ってしまった」

9月28日(土) 炎のサッカー日誌 2002.08

 自分のレッズバカさについて改めて気づかされてしまった。いや、他のサッカーバカの皆さんもみんな一緒なんだろうけれど、当たり前のように会話をしていて、普通の人から指摘されて自分のオカシサを思い知ったのだ。

 それはこの日、浦和在住なのになぜかレッズを愛してくれないひねくれ者のサッカーファン・東京ランダムウォークの渡辺さん夫妻が観戦に来ていて、試合前ちょっとビールを飲んでいたときのこと。そのとき渡辺さんの奥さんから指摘された一言が突き刺さってしまった。

「杉江さん達、選手のこと下の名前で呼ぶんですね。マサキとかケイタとかタツヤとか。何かスゴイ…」

 いやはや、そう言われてみれば僕らは福田と永井以外ほとんど下の名前で呼んでいる。深く考えたことはなかったが、あわてて思いついた言い訳は、自分の子供を名前で呼ぶ感覚に近いということ。そうレッズの選手みんなが僕らの子供であり、友達であり、仲間であり、同志であるのだ。だから成長すれば嬉しいし、頭に乗っていれば叱責し、落ち込んでいれば慰めたくなる。その気持ちをハッキリ言葉で伝えられない変わりに、様々なコールに想いをのせて叫んでいるのである。いや、勝手にそうこちらが思い込んでいるだけなんだけど、だからこそ「We are REDS」なんじゃなかろうか。

 そういえば、毎日曜ごとに干しているレプリカユニフォームを指さされながら近所の人に「サポーターとファンの違いは何なの?」と聞かれたことがあった。そのとき咄嗟に思いついた説明は「ファンは観戦者であり、サポーターは選手と一緒に戦っている人間を指します」だった。果たしてあっているのだろうか?

 僕自身は全試合見に行っているわけではないから、胸を張ってサポーターです、とは言えない気もするし、ただレッズがなければ人生の80%の楽しみを失ってしまう人間なので、恥ずかしさを込めてレッズバカと自称している。ただ他人から見たら立派なサポーターに見えるんだろうけど…。

 さてさて、レッズは2NDステージ開幕から一度も負けておらず、最高の滑り出し。本日も清水エスパルスを相手に延長にもつれこんだが、それでも負けずVゴール勝ちしてしまった。およよよ。

 ここまで来たら思わず優○なんて言葉を使いたくなってしまうけれど、こういうことはこの「○勝」という言葉を出した途端に、負け出すという恐ろしい前例もあるので、あえて謙虚にまだしばらく様子を見よう。

 それにしても来年の還暦は、赤いチャンチャンコの変わりにレッズのレプリカユニフォームをくれとほざきだした父親。なんと各コールの歌詞カードまでプリントアウトしてきて、大声で声援を送っているではないか。

 おまけにトゥットがVゴールを決めた瞬間、生まれて一度も抱きしめられた記憶のない僕を力強く抱きしめ、涙を流していた。もちろん、その向こうでとっくに還暦を過ぎた母親も見知らぬ前後の人と握手握手。

 ハマるのは良いけれど、ハマり過ぎは息子として困る。両親にはできるだけ長生きして欲しいのだが、この興奮の仕方を見ているとそのうち心臓発作で死ぬんじゃないか。

 そのことを伝えると父親も母親も声を合わせ「ここで死ぬなら本望だ」なんて僕のいつもの決めゼリフを吐く始末。おまけに兄貴は子供が産まれて3週間足らずなのに、その子と妻を残してブルジョア席で観戦したいた模様。ああ、アホな一家の血が恐ろしい。

9月27日(金)

 夜、第12回鮎川哲也賞&創元推理短編賞、創元推理評論賞の受賞パーティーに参加。本来僕のような営業マンが参加する場ではないのだが、浜本の代理として会場に向かった。

 しかし元々パーティー向きでない人間であり、まさかここで原稿の依頼をするなんてとんでもない他人の褌相撲も出来ないし、それ以前に本格ミステリー関係の作家さんもほとんど知らず、とにかく一緒にいった深夜+1の浅沼さんや銀河通信の安田ママさんに教えを乞いまくるうちに2時間があっという間に過ぎ去ってしまった。

 いやー、それにしても大きな出版社というのはスゴイもんだ。盗み見た名札で確認しただけでも有名作家さんがズラズラいて、こちらはミーハー的驚きの連続。この関係から多くの作品が生まれ、そしてそれが本屋さんに並び、読者に渡る…と考えてみたら、何だか素人並に信じられない光景を目の前にしていることに気づき、思わず上気してしまった。

 興奮しつつ「本の雑誌もパーティができるようになるといいんですが」と浅沼さんに伝えると「20周年のパーティとか杉江君が入る前はいろいろあったんだよ、でも会費制だったけどね」と笑われてしまった。
 ……。

9月26日(木)

 新宿を営業。
 新宿は大規模なK書店さんが2件あり、その間に中小の書店さんが各デパートや駅地下街に入り、大変な激戦区となっている。しかし、流れ出る人が多い分、それぞれ客層が別れ、それに合わせた個性的な品揃えをしているので棚や売れ筋を確認するとその違いが面白い。

 今は改装したルミネ1のA書店さんが好調で、それはスターバックスを取り込んだフロアー展開と独特な棚構成が若い女性に受けているからだろう。小社営業事務の浜田曰く「あそこに行くとつい買わされるのよ」という指摘通り、本を買わす演出が上手い。今後は、小田急デパートにあるS書店さんも改装が入るという。まだまだ新宿の戦いは続くようだ。

 エスカレーターを上り下りし、デパート内の書店さんを訪問し、最後はK書店さんへ。

 大規模な書店さんは、大きな器の在庫量につい圧倒されてしまい、なかなか書店員さんの個性が伝わりにくい。しかしそれぞれ工夫という意味では大小に関係なく、品揃えや平台にこだわりを持っている。K書店の日文担当Kさんと話しているとその熱い想いが伝わってきて思わず感動してしまった。

 それは書店員として若手の作家を育てるという強い意志。それらの作家の本をなるべく多くの人の目に留まらせ、少しずつでも売れファンを根付かせるという売場ならではの作業である。自分で読んでこれから伸びて欲しいと思った作家は新刊に合わせて既刊も平台に載せたり、良い場所に積んだりと工夫を凝らしているのだ。

 なかなか気づく人も少ないかもしれないが、是非、大量在庫に埋没してしまいがちな大型書店さんの、ほんの一角を占めるそんなキラリとした棚や平台を楽しんで欲しいと思う。

◆今日売れていた本
新宿一小さな書店 『図解「儲け」のカラクリ』 インタービジョン21編(三笠書房)
「ビジネスマンはもちろん最近は年輩の方まで買われていきますね、きっと読み物としても受けいられたのでしょう」

9月25日(水)

 月に一度のデスクワーク日。
 『本の雑誌』の編集後記と書店さん向けDMを作成。会社にいるとなぜか精神が疲れ、営業に出ると気持ちは楽なのだが肉体が疲労する。だから、こういう日の夜はなかなか眠れない。午前2時頃まで読書。

 先週買った7冊は、すでに未読を出さずに読み切ってしまった。どれもこれもお薦めしたいほど面白かったのだが、ある時ある人から「杉江さんが日記に書く本はあんまり面白くないのよね」と忠告を受けたことがあるので、それ以来、当欄で本の感想を書くのは控えるようにしている。

 ただ『建築に夢をみて』安藤忠雄著(NHKライブラリー)を読んで以来、年も忘れ「オレは建築家になる」なんて社内で大騒ぎするほどハマってしまった。実は僕、機械設計は専門学校で習っていて、それなりにしっかり勉強したのだが、果たして建築設計に通じるところはあるのだろうか?と今、真剣に悩んでいたりする。

 こうなると、本屋さんに行っても文芸書の新刊棚はそそくさと横目で確認するだけで、一直線に建築書売場へ向かってしまう。どれもこれも今まで見たこともない魅力だらけの本なので、おおコレだ!なんて手に取りまくる。

 しかし哀しいことに専門書はちっと高い。3000円なんてのがざらで、読むのにかかる時間が一緒だとしたら、文芸書平均1500円前後に比べると倍の金がかかる計算。本に対しての月予算1万5千円が3万円になると、これは妻子持ちのサラリーマンにはとても出せない金額。うーん、じっくり買うしかない。

 そのうちどこかで「炎の建築日誌」なんて連載を始められたら笑えるのだが、それはきっと夢の話。

9月24日(火)

 ここのところ先輩にいわれた言葉を頼りに、入社したときに渡されたマニュアルを再度読み直し、初心に戻って仕事をしている。これが結構端折っているところがあって大変だ。無駄な仕事=省いた仕事ではなく、面倒な仕事=省いた仕事になっていることに気づき、自分の甘さに強い嫌悪感を抱いてしまう。それでもとにかく原点回帰を目指し、溜息を吐きつつ取り組んでいる毎日。

 営業活動にしても、いつも〆切期限に迫られているので、訪問が飛び飛びになってしまう書店さんがある。3ヶ月ぶり、4ヶ月ぶり、半年ぶり。そういったお店に改めて顔を出すのは、初めて営業するお店以上に緊張するもので、今日も4ヶ月ぶりに訪れた書店さんの前で足が止まってしまった。

 近くにあった公園のベンチに座り込み、煙草に火を付ける。夏の暑さはとっくに過ぎ去り、心地よい風がビルの谷間にある公園に吹き付けるが、僕の気持ちは真夏以上のうんざり勘に占領されていた。

 営業に向いているのは、こういうときでも何食わぬ顔をして訪問し、あっという間に自分のペースに出来る人だろうな。こんな引っ込み思案の人間がひとりで営業しているんじゃ会社のためにもならないし、自分自身も向いていない仕事をするのはもう限界だろう。いろんな後悔が渦巻き、ベンチから腰を上げるのが不可能なことのように思えていた。

 ふと顔を上げると、目の前に小さな子供がいた。まだ掴まり立ちがやっというくらいだから1歳前だろう。平日が休みであろうお父さんが近くにいて、そのお父さんに向かって「パッパ」と声を発しながら、一所懸命怪しい足取りながら向かっていく。何度も尻餅をつき、何度も立ち上がり。尻餅をつきながら、お父さんに向かって笑っている子供。

 こんなことを告白するのはとても恥ずかしいのだが、その光景を見ながら、僕は家にいる同じ年頃の自分の子供を思い浮かべていた。今頃きっと近所の子供達と集まって、宝物になっている洗剤の計量スプーンを片手に砂いじりをしているだろう。今日は三輪車の取り合いでケンカをしていないか…。

 そして知らぬうちに涙が流れていた。

 子供に「どんなときでも強く生き抜いていって欲しい」という願いを込めて名前をつけておきながら、僕はこんなベンチに座り込んでいるとは。……。

 そう考えたとき、自然に腰が上がった。そしてトイレに入り顔を洗って、久しぶりの書店さんへ飛び込んでいった。

9月20日(金)

 新刊『注文の多い活字相談』の搬入日。装丁もうまく仕上がり、売れて欲しい1冊。

 しかし初版の刷り部数を読み誤ってしまったのが痛い。だいたい搬入の3週間前に初版部数を印刷会社に発注することになっているのだが、今回は夏休みなどで営業日程が押してしまいうまく書店さんを廻りきれない段階で発注になってしまったのだ。最終的な追い込みを終え、取次店さんに渡すデータをまとめたら、アラ、大変! 新刊搬入時点でほとんど在庫がないという黄色信号点灯。

 あわててD印刷のKさんに電話を入れたのが10日前。優しく理由を聞いてくれたがKさんの一言は非情なる冷たさで「もう印刷し終わって製本に回ってますよ。アハハハ。無理です」

 売れて欲しいが、こうなると増刷のタイミングが難しい。昨年増刷成功率50%の営業マンには荷が重過ぎる。ああ。

 渋谷を営業し、会社に戻ると、ストレスの溜まる一件があり、気分はブルー。僕はやっぱり会社勤めに向いていないと改めて自分の性格を思い知る。

 こういうときは本屋に行くのが一番と帰りがけに笹塚K書店さんへ。散々営業で廻っているのに、結局本屋好きはここでしかストレス解消できない悲しさを感じつつ、目星をつけていた本を購入。

『私たちがやったこと』 レベッカ・ブラウン著(マガジンハウス)
 「今でも読み返すくらい好きな『体の贈り物』の著者の新作!」
『椿山課長の七日間』 浅田次郎著(朝日新聞社)
 「お前は絶対泣く!と目黒に薦められ」
『半落ち』 横山秀夫著(講談社)
 「お前は間違いなく涙を流す!と目黒に薦められ」
『建築に夢をみた』 安藤忠雄著(NHKライブラリー)
 「『光の協会』平松剛著(建築資料研究社)を読んで以来、安藤忠雄&建築に興味が湧き」
『造形集団 海洋堂の発送』宮脇修一著(光文社新書)
 「チョコエッグを作った会社。こういう企業モノは割と目に付くと買っている」
『MISSING』 本多孝好著(双葉文庫)
 「未読なのが恥ずかしい…」
『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』 高岡英夫・松井浩著(メディアファクトリー)
 「もちろんワールドクラスになるために…」

◆今日売れていた本 渋谷某書店 『D.T.』 みうらじゅん 伊集院光著(メディアファクトリー)
「担当者不在のためコメントなし 『海辺のカフカ』が切れてしまっていたのかベストの1位に輝いていた!」

9月19日(木)

 昨日、タオルケット一枚で眠っていたら、身体が冷え切り震えながら目覚めてしまった。もうすっかり秋なんだと、フラフラ立ち上がり、押入の隅に丸まっていた毛布を引き出し、再度眠りのなかへ。ところがしばらくすると猛然と痒みが襲って来るではないか。今度はハッキリ目を覚まし、あわてて寝間着を脱いで確認する。

 全身22カ所、赤く染まったダニに噛まれた痕。これが猛烈に痒い。ボリボリ掻いているうちに日が昇ってしまった。

 とりあえずかゆみ止めの薬を塗って出社する、が、しかし。スーツやYシャツで擦れる部分が、こすれる度に触発されて痒さがぶり返す。僕は掛け布団を股の間に挟み、抱きかかえるようにして眠る癖があるのだが、その結果、ダニに噛まれた22カ所のうち9カ所が、いわゆる人前ではいじれない下腹部に集中しているのである。通勤で利用する痴漢ナンバー1の埼京線のなかでそんなところをいじっていたら一発で通報されるであろう。ああ、痒い。だけど掻けないこのツラさ。何だか頭の芯が歪んでいくような気がして倒れそうになってしまった。

 会社に着いて、みんなに訳を話し、遠慮なくボリボリ全身を掻く。心地よさに浸りつつ、昨夜考えた「週1出社」の話をしようと浜本に近寄っていくと、「おお、杉江くん、ちょうど用事があったんだよ」と先手を打たれてしまった。とりあえず話を聞いてからこっちの要望を伝えよう。

「あのさ、WEBのこと昨日、打ち合わせしたんだけど、新しいコーナーの企画を思いついたんだよね。」

 なんだか非常に嫌な予感がしたが、僕は身体を掻くことに意識が集中していた。

「でね、どういう企画かというと、『帰ってきた炎の営業日誌』になってから最後に【◆今日売れていた本】って書いているでしょ? あれが評判良いんで、表紙写真を入れたりして、別コーナーにするわけ」

 あまりに恐ろしい言葉が浜本の口から飛び出したので、痒さはどこかへ消えていく。これは早いうちに手を打たないとダニどころの被害じゃ済まないし、まさに僕の得意技「墓穴を掘る」展開ではないか。そもそも評判が良いというのはウソだ。そんなこと誰も言っていないではないか。僕は、あわてて口を開いた。

「ちょ、ちょっと待ってください。あれは、まあ、新連載ってことで、何かひとつくらい新しいことをしようと思って適当に始めただけで、予想以上に大変なんで、そろそろなかったことにしょうと考えていたとこなんですよ。いや、勘弁してください」

 浜本はまったく僕の目を見ず、ほわぁーと煙草の煙を吐き出す。手元には昨夜打ち合わせしたメモのようなものがあり、そこには大きな赤い字で「決」と書かれてあった。

「いやー、そう言われても、もう決まっちゃったんだよ。昨日、杉江君が浦和レッズの応援している頃話し合っていて、まあ、いない人から話が聞けないし、プログラムの問題とかもあって、即決しなくちゃいけなくてね。うーん、よろしくね」

 この会社はいつもこのようにして新しいことが決まる。いや、決まっている。出来るか出来ないかは関係なく、すでにやることになっている。よく考えてみたら前の会社もそうだった。知らないうちに出張のスケジュールが組まれていた。会社ってどこもそうなのか。だたそういうことにいちいち文句を言っていたら、仕事は回らない。従順なのか、何なのかわからないけれど、サラリーマンを10年もやっていると、どうにかなるだろうと意識も芽生える恐ろしさ。

「僕の話はこれだけ。杉江君も何か用があたんじゃないの」と浜本が聞いてきたが、とても週1出社なんて提案するどころではなくなってしまった。もしこれで、本当に週1しか会社に顔を出さなかったら、とんでもない仕事が僕の担当になってしまうだろう。給料や休みが増えるのはいくらでも歓迎するが、仕事が増えるのは勘弁してほしい。

 帰り道、ダニについての本を買い漁り、ふと、その養殖を考える。とりあえず、あの毛布を捨てずに、浜本のデスクの周りにじゅうたんとして引きつめてやろう。ああ、それにしても痒い。


◆今日売れていた本 『ファースト・プライオリティー』 山本文緒著(幻冬舎)
下北沢「『海辺のカフカ』で隠れちゃってますけど、初速は良いですよ。この厚さで1600円は安いし。」

9月18日(水)

 3連休を明けたら、あれほど山のようにあった『海辺のカフカ』村上春樹著(新潮社)が忽然と消えていた。それも5や10といった初回搬入の少ない書店さんではなく、50、100と入荷したお店の平台に影も形もないのだ。

 昨日廻った京王線は8件中、上巻の在庫があったのが1件のみ。今日廻った埼玉では7件中1件。計15分の2。これほど店頭在庫がないというのは凄すぎる。凄すぎるが、これで良いのか?という疑問も涌く。果たして読者は増刷の搬入まで「読みたい」という気持ちを持ち続けてくれるのだろうか?

 そんな僕の疑問よりも、実害を被る書店員さんの怒りと絶望は大きいようで、配本と追加の対応へ非難囂々の嵐。つい話を振ったら、大変なことになってしまった。とほほのほ。

 売れる本を作るときこそ、フォローが大変なんだよなと考えつつ、そのスッポリ空いた平台に『海辺のカヌカ』とか『渡辺のカフカ』なんてカバーをつけ、自社本を並べたくなってしまった自分が哀しい。

 本日は取次見本提出のため直行し、そのまま書店営業をしてレッズ戦に駆けつけるため直帰してしまった。だからまったく会社に顔を出していない。サラリーマンとしてこんなんで良いのかとちょっと反省する。

 しかし通勤や会社への戻りという無駄な時間が省けるので、この方が書店さんを多く廻れ、非常に効率的だということに気付く。営業はとにかく売上を上げればいいんだ! 明日会社に行ったら、浜本に週1出社を提案してみよう。

9月17日(火)

 京都の化学同人の営業マンYさんが出張で東京に来ていたので酒を飲む。専門書の営業について話を伺うと、ほとんど僕が前の会社でやっていた仕事と同じで思わず笑ってしまった。

 専門書の営業は今僕がやっているような書店さんへの営業活動だけでなく、もっとダイレクトに読者のいるところへ向かう。大学生協はもちろん、各学会での展示販売や○○ショーなどの機器展示でのブース販売などで、独特の世界があのものだ。僕がいた医書の販売では、2日間の展示販売で100万円を超える売上を上げることが何度もあった。今、振り返ると信じられないくらいおいしい商売だったのだ。転職は難しい。

 そんな展示販売の話をしていたときYさんがポツリと漏らした言葉が心に残る。
「大変なんですけど、楽しいですよね。読者が目の前にいて、本を買っていくんですから」

 そう、営業マンとして書店営業ばかりしていると、ついその向こうにいる読者の顔が見えなくなってしまうことがある。自社の本が売れる喜び、そしてダイレクトな評判、それがなかなか実感できず、つい不毛なことをしているんじゃないかと不安になってしまうのだ。

 なんだかYさんの話を聞いていたら無性に展示販売がしたくなってしまった。読者と話をしながら1冊の本を売る喜びを感じたい。そういえば、東京ランダムウォークの渡辺さんが「本屋 本の雑誌」を作れば…と話していたっけ。それはやってみたいが…一番大事な資金がない!

9月14日(土) 炎のサッカー日誌 2002.08

 1ヶ月前のファーストステージ最終戦。ジュビロ磐田の逆転優勝をテレビで眺めつつ、正直言って、僕は我が浦和レッズとの大きな差にがく然とし、そして哀しい気持ちで一杯になっていた。

 なぜに僕は埼玉に生まれ、埼玉で育ってしまったのか。もし静岡の西部に生まれていれば、すでに何度も高々とトロフィーを天に突き上げる優勝の喜びを噛みしめていたはずで、なおかつ毎週、美しいサッカーが眺められたのだ。なぜ埼玉で生活しているからというだけで、これほどの苦しみを味わわなくてはならないのか。レッズの現実を知れば知るほど、哀しみと後悔は大きくなった。

 その日以来、まだ訪れたことのないアウェーの大地、王者ジュビロ磐田の本拠地に足を踏み入れたい気持ちが募っていった。もちろん、磐田を応援するためでなく、我が浦和レッズと何が違うのか、確かめたい一心である。

 だから、夜中の12時30分。眠い目を擦りつつ、いつもの観戦仲間KさんやOさんと待ち合わせした浦和のセブンイレブンを出発したときレッズが勝つことなんて夢にも思っていなかったし、トラックに囲まれて東名高速を走る間、誰も半日後に起こる「結果」について話はしなかった。

 埼玉よりも一軒一軒が広く取られた住宅地。そんななかに忽然と姿を現す磐田スタジアムは、信じられないほど、こぢんまりとした古ぼけたスタジアムであった。巨額の金を投じて建造された埼玉スタジアムと比較したら、雲泥の差。もちろん浦和レッズのホーム駒場スタジアムと比較しても、あまりに小さい。しかし、そのひび割れたコンクリートや、剥がれ落ちた塗装痕から歴史が感じられたのは、僕の思い込みのせいなのか。

 開門後、そのスタジアムに足を踏み入れて驚いたのは、サッカー専用だけあって観客席とピッチとの距離は恐ろしいほど近さ。ゴール裏コーナ付近最前列に陣取った僕から、コーナキックを蹴ろうとする憎き名波はすぐそこなのだ。ボールを蹴る音、選手がぶつかり合う音が、威圧感とともに僕を黙らせる。まさに生観戦の醍醐味が、この磐田スタジアムには、詰まっていた。

 前半、予想通り、ジュビロ磐田に攻められる。次から次へとボール際に顔を出すサックスブルーのユニフォーム。思わず指折り数を数えてしまったが、その数は浦和レッズと同じ11人。何だか当たり前のことが信じられない。

 しかし、浦和は守った。ベテラン井原はカバーリングに走り、両ストッパーの坪井と室井は、J最強ツートップ中山と高原に食らいつき、ことごとくボールを跳ね返す。皆さんに覚えていて欲しいのはこの坪井の名前。絶対06年のドイツW杯には名を連ねるだろう若手のホープ。

 そして守り続けて45分が終わった。
 
 そんなとき友人からメールが入る。「お前が負けると思ったらレッズも負ける、勝つと思えばレッズも勝つ」 気持ちはわかるが、それは日頃スタジアムに来ない人間のセリフでしかない。僕たちは毎週何時間も前から並び、丸一日無駄にした経験が山のようにあるから、ある程度、自己防衛を兼ねてネガティブな予想をしておかないとツライのだ。しかし、この日ここまでの選手の頑張りとすべてをかけたようなプレーを見ているうちに、その友人の言葉を信じたくなってしまった。

 選手がこれだけ燃えているのに、オレが信じなくてどうする?

 15分のハーフタイムで気持ちを入れかえた。あるのは勝利のみ。声を張り上げようとしたそのとき、いきなり浦和1イイ男の永井がゴールを決めてしまうではないか。驚き、喜び、興奮。KさんやOさんと抱きつき、周りの人達とハイタッチ。誰もが、目の前で起こったことが信じられないという表情をしていたが、その表情を浮かべるのは早すぎた。何とこの日この時間だけ浦和レッズは怒濤の攻撃を繰り広げ、コーナーキックから日本全国チビの夢を背負った田中達也が、ゴールを決めてしまったのだ。

 2対0。まだまだ時間は残っていて、ギアを入れかえた磐田の猛列な攻撃がレッズゴールを襲い続ける。ワールドカップ日本代表戦で残り時間の長さに恐怖を感じたが、それ以上に恐ろしく、鼓動は速まり呼吸することすら忘れてしまいそうなる。

 感情が激流となって押し寄せ、僕は、耐え続けるレッズの選手達の捨て身のプレーに思わず目頭が熱くなる。こんな体験、年回20試合以上観戦しても、なかなか体験出来るものでもない。なぜスタジアムに何度も通うのかといえば、どこでいつこんな素晴らしい試合が行われるかわからないからなのだ。それほど最高の試合が今、目の前で行われていると考えたら、全身がしびれ始めた。

 最後の最後で1点返されるが、2対1で浦和レッズ、ジュビロ磐田に4年ぶりの勝利! 浦和ゴール裏にズラリと並ぶアホなカメラマン達(磐田が勝つと予想していた)を見つめつつ、「We are Reds」を連呼する。

 そして僕は、埼玉に生まれたことを誇りに感じていた。

9月13日(金)

 理論的なことや具体的な数字はまったくわからないけれど、営業中に肌で感じているのは最近書店さんの来客数が激減しているような気がするのは気のせいなのか。

 半年前までだったら夕方の時間帯に顔を出したらとても声をかけられるような状態じゃなかった書店さんで、今、逆に担当者が僕を見つけて声をかけて来てくれたりすることがある。えっ、と思いつつ周囲を見渡すとまるで午前中のようなヒトの入り。恐ろしい。

 総武線千葉方面を営業。

 この路線、千葉郊外に伸びる単なる通勤路線に見えるが、実は出版営業にとって侮れない路線なのだ。それは何も大規模な書店さんがドーンとあるというわけではなく、地道にしっかりした棚を作っている中規模書店さんがたくさんあり、担当者さんも凄腕ばかりなのだ。有名どころでいえば、『白い犬とワルツ』(新潮文庫)を大々的に売り出したポップの王様がいて、爆発的ヒット数を誇るHP銀河通信の安田ママさんもいる。つい最近、本の雑誌読者には特にお馴染みの某氏(発表していいのかわからないので匿名にしておく)もこの路線の書店に書店員として復帰。営業する側の僕も、心地よい緊張感に包まれ、背筋が伸びる。

 もうひとつ、この路線の特徴があって、それは嘆美モノが非常に売れるということだ。なぜだかわからないけれど、妙に売れている。うーん…。

 さて、冒頭に書いた来客数の激減の話を安田ママさんに振ると、大きく頷かれ、ワールドカップ以降その傾向が強いというではないか。「売れない」と嘆く以前にお客さんが「来ない」になってしまっては、もうどうしようもないのではないか。出版不況はどうも脱出どころか第2段階に突き進んでいるような気がしてしまう。

 先のことを考えるととても暗い気持ちになり、いつもは安田ママさんとそんななかでも明るい話しているのだが、今日は二人揃って俯き加減の会話になってしまった。ああ、出版は大丈夫なのか?

9月12日(木)

 大型書店さんの新刊平台は、昨日で一気に様変わり。
 期待の新刊『海辺のカフカ』村上春樹著(新潮社)が搬入されたため、これでもかと言わんばかりの大展開。売場にそびえ立つカフカ塔やカフカ壁、あるいはカフカ島を眺めなつつ、ライバルにもなれない地味な版元営業は、自社の商品がその影で返品されていないか思わずチェックしてしまう。かなしい…。

 まあ、そうはいっても足を引っ張るどころか、全体的に本が売れることを願わずにはいられないほどの出版不況なので、カフカの出足を確認すると、ニンマリ「いいっすよ~」の返事を頂く。こんなに幸せそうな顔の書店員さんを見るのは久しぶりのこと。ただ、その笑顔の後、多くの書店員さんが「この後が難しいんですよねぇ」と思案顔になっていくのが気にかかる。

「今回は新潮社さんの発売前のあおり方がうまかったんで、春樹ファンが飛びつくように買っているんだと思うんです。それだと数がだいたい読めるんですけど、それじゃ困るんですよね。この後どこまで一般の人を巻き込めるか、そこが勝負。でも追加注文の数が難しくて…」と売れれば売れたで難しい問題を抱えているようだ。

 しかし裏を返せば、もっと難しいのは出版社の方で、新潮社の営業部もきっと初回分の売れ行きを確認しながら頭を抱えているのではないか。この売れ方がどこまで続くのか、あるいは広告の効果やこれから出るであろう評判の勢いで、どこまで伸びるのか。僕が新潮社の営業だったらきっと「ドラえも~ん」と叫んでいるだろう。

 出版営業は、他の業種の営業に比べ楽だと言われることが多いけれど、常に返品を頭に入れつつ、モノ(本)を作るをは非常に難しい。売れ行き良好から一転して、増刷分がすべて在庫になってしまった…なんて恐ろしい話は山のように転がっているのだ。

 そうは言っても、のんびり売れ行きを見ているわけにはいかず、初回搬入と同時に納品の少なかった書店さんからは即注文の嵐になっているであろうし、大量納品した書店さんだって、この売れ方なら追加の注文をドーンと出してくるだろう。そうなると、いつまでもデータを覗いているわけにはいかず、なるべく早い段階で決断を下さない限り、一番最悪な「売り逃し」の可能性も出てきてしまう。

 書店さんが一番恐れるのは自店での「売り切れ」で、出版社が一番恐れるのは「売れ残り」。返品可能である限り、このズレは一生変わらないと思う。

 まあ、こんなことをチビ出版社の営業が考えても仕方ないんだけど、せめてこれくらいしっかりした小説は消費物にならず、末永く売れて欲しいと願わずにはいられない。


◆今日売れていた本 もちろん!『海辺のカフカ(上)(下)』 村上春樹著(新潮社)
「久しぶりの長篇で、それも人気のある『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と似た雰囲気であれば、ファンは飛びつきますよ」

9月11日(水)

 今月の新刊『注文の多い活字相談』の事前注文短冊を持って、取次店さんを廻る。毎年3月、9月の決算時期は、仮の売上を立てるため各出版社大量に新刊を出すのが、出版業界の悪しき習慣のひとつになっているので、本日も仕入窓口での長時間待ちを覚悟で訪問。

 ところがところが、N社もT社もガラガラといって良い状態に思わずビックリ。混むどころかいつもより空いているくらいで、仕入担当者に確認すると「昨日は混んでいて、さあ9月が始まったと思ったんですが、今日はこんな状態なんですよ」と首を傾けていた。

 悪しき習慣がついに消えてなくなるのか? それとも出版社が新刊も出せないほど資金力がなくなってしまったのか? ちょっと恐ろしい風景だった。

 そういえば、先日浜本がポツリと漏らした一言も気にかかる。
「あのさぁ、杉江君。ハリーポッターの新刊は上下巻なんでしょ? 新聞に初回200万部とかって出ていたけど、スゴイ量だよね。それが初日に全部完売するわけでもないし、前日には納品されるわけでしょ。書店さんってそんなにストックする場所あるの? もしかしてハリーをストックするために他の本を返本するって可能性ない?」

 こちらも妙に現実味のある話で、ゾッとする。

 6月、7月、8月とワールドカップ以降書店さんの売れ行きは下降気味。どこの文芸担当者も新刊『海辺のカフカ』村上春樹著(上・下)新潮社に9月の売上を期待をしているのがヒシヒシと伝わってくる。小説が売れない時代…。それを打破することが出来るのか? 来週の書店さんのベストに興味津々だ。

◆今日売れていた本
地方小出版流通センター
『中村哲講演集 平和の井戸を掘る アフガニスタンからの報告』(ピースウォーク京都)
「ベストセラーになった『医者井戸を掘る』(石風社)の中村さんの講演集なんだけど、2刷りの3000部があっという間に売り切れちゃって…」

9月10日(火)

「本の雑誌」10月号の搬入日。珍しく晴れ渡った空の下、エッセ!オイサ!と社内に運び込む。

 基本的にこれは営業の仕事なのか、いつも僕と営業事務の浜田と経理の小林の3人で運び込んでいる。まあ、午前中に納品になるから、編集部は不在で仕方ないといえば仕方ない。それにしても浜田と小林は女性で、男女雇用機会均等法とはいえ、こんな肉体労働を強いて良いのだろうかとちょっと疑問を感じてしまう。

 しかし、毎回毎回、納品が終わった瞬間に、発行人の浜本が出社してくるのが気にかかる。あまりにタイミングが良すぎて、思わず事務の浜田は本日ポツリと漏らしていた。

「どっかで見張っていて、終わるのを見計らっているんじゃないですかね?」
 うーん、真相は闇の中だ。

 営業を終え、夕方会社に戻ると助っ人学生たちはツメツメ作業が一段落ついたようで、10月号を黙々と読んでいる。
「おい! 読むな」と声をかけると不審そうにみんな顔を上げた。
「あのね、君たちは歩く広告塔なの。『本の雑誌』を読むときは、なるべく人の多いところで読みなさい。帰りの電車のなかで表紙が見えるように広げるのが一番良い。それで、たまに『ふーん』と感心してみたり、『ククク』と笑うんだよ」

 話の途中で、またバカを言いだしやがったと助っ人一同に下を向かれてしまった。……。

9月9日(月)

 季節の変わり目だからなのか、ここのところ非常に調子が悪い。友人と会っても、サッカーを観ても、何となく心のなかに「…」があって、毎年恒例の健康診断の問診票に「何をしても楽しくない」という質問があるのだが、今ならきっと「はい」に○をつけるだろう。

 仕事もプライベートも何だかうまくいかない。いや、今までだってそんなにうまくいってなかった。ただそれがあまり気にならなかっただけで、ここのところ妙にネガティブに気になりだしてしまったようなのだ。

 誰かと会話した何気ない一言を、営業の移動中に反芻し、妙に深読みしてイラついてしまったり、あれは失敗だったなんて自己嫌悪に陥ってしまったりしている。

 こういう状況だと仕事がキツイ。何だかモチベーションが上がらない。営業は、精神面が大きく影響するだけにツライ。

 ちょうど十代の頃バイト先でお世話になっていた先輩に会う機会があったので、話を聞いてもらった。

「5年くらいって確かに糸が切れるかもね。杉江君の会社は異動もないしね。異動ってリフレッシュになるときもあるんだよね。それに働きだして10年でしょ。立ち止まるよね。僕の経験だと、目先を変えてみるってことが大事かな。今の仕事を違う面から見てみるとか。それとね、原点に戻ってみるんだよね、入社した頃にやっていた仕事で、なにか省いていることがないか思い出してね」

 確かに、入社したときにノートに書き込んでいた仕事のなかで、意味がないように思えて省いたことがいくつかあった。そのことを先輩に話した。

「それ、それ。それをやってみなよ。一見意味がなさそうなんだけど、結構大事だったりするんだよ。それに、入社した頃の気持ちを思い出すよ」

 会社を辞めるのも難しいが、働き続けるのもまた難しい。とにかく先輩から教わった方法を試してみようと思う。

◆今日売れていた本
柏地区 またもや登場!『パーク・ライフ』 吉田修一著 (文藝春秋)
「一般的に本を読まない20代男性が買っていくのが大きい。ここから読書の輪が広がっていってくれるといいんだけど」

9月8日(日) 炎のサッカー日誌 2002.08

 2ndステージホーム開幕戦。敵は北の大地にしっかり根付きつつある、幸せの黄色い軍団ベガルタ仙台。東北道一直線でやって来ることができる彼らは、本日もバスを十数台連ねて、埼玉スタジアムへ参上した。これくらい相手チームのサポーターがやってくると、こちらも燃える。ニュースではアルビレックス新潟の動員も増えているという。Jの熱狂は東高西低なんだろうかとチラリと考える。
 
 いつもどおり開門数時間前から自由席の列並びに参加する。埼玉スタジアムのキャパなら別に並ばなくてもそれなりの場所が確保できるというのに、なぜか並んでいる自分がいる。大いなる謎。

 この列並び、非常に無駄なくキチキチにシートを敷かされるので、前後左右の会話の声が聞こえてしまう。その多くが本日の試合の予想だったり、選手の評判だったりするのだが、本日僕の後ろに並んだ、40代後半から50代前半と思われるおじさんが、ひっきりなしに鳴る携帯の話は、それとはまったく違うものだった。聞こえてくる単語は「労働債権」やら「口座差し押さえ」やら「売り掛け金」やら「再就職」やら。どうもつい最近、勤めていた会社が倒産してしまったようなのだ。

   ★   ★   ★

「どう? 新しい職場は? うん、そうそう。始めは慣れないから疲れるでしょう。うんうん。居心地は良いんだ。なら大丈夫だね。オレ? こっちはまだゴミ捨てっていうか残務整理があるから、会社に出ているよ。うん、まだ何にも。来週はとりあえず、職安に行くよ。うん。○○さんも頑張って。うん、じゃあね」

 部下か、誰かを励ましつつ、電話を切った。するとまたすぐ携帯電話が鳴った。

「はい。うん、来週のことね。……。いや、そこじゃ多分いくらの解雇手当が出るか決まらないと思うよ。売掛金を精算して、それで残ったお金がハッキリしてそれからだから。まあ、こっちが優先で、その後取引先の支払いって感じだけど、どっちにしても大した額じゃ…。うん。まあ、会議には出席するかなあ。まだわからないけど。じゃあ、会えれば来週」

 列がジワジワと動き出し、開門は間近。それでもおじさんの携帯はまた鳴り、律儀にそれを取る。

「あっ、どうもどうも。元○○会社の△△です。ハハハ。お世話になりました。……。ええ、まだ残務整理があるんで、次は……。今日ですか? 埼玉スタジアムに並んでいて、いつもの奴です。こればっかりはこんなときでも……。ハハハ、今日、勝って、ここんところのうさを晴らしますよ。気分転換です。ハイ、ありがとうございます。また。」

   ★   ★   ★

 余程このおじさんは人望があったのだろう。親身な電話応対からそのことが痛いほど伝わってくる。多分、本人は再就職が決まっていないのだろうが、部下の再就職先を電話で探しているようであった。

 列は進み、開門と同時に並んでいた人々は、三々五々それぞれ想いの場所へ席取りに向かう。僕もおじさんの後ろ姿を見つめながらも、逆の方向へ走っていった。

 多分もう顔を会わせることはないだろう。しかしあのおじさんも僕も、駒場スタジアムやここ埼玉スタジアムに通い、同じ言葉を張り上げる。
「う、ら~わ、レッズ!」

 この声援には、観客それぞれの想いが詰まっているのだ。勝つことだけでなく、それ以外の多くのことが…。
 そして選手は、それを背負えてこそ、初めてプロのスポーツ選手になるのだ。

「う、ら~わ、レッズ!」

9月6日(金)

 道の端っこが川になるほどの激しい雨。車を避けながら中央を歩く。朝から弱まることなく降り続く。出勤時、傘を差しながら自転車に乗り、駅に着いたときにはすでにスーツのズボンの折り目がなくなっていた。雨を蹴飛ばしながら走る通勤電車のなかから雨粒を眺めていると、なんとなく営業にでるのが億劫になってしまった。しかし、こういう日は売場が空いているので、逆に営業日和ともいえる。因果な商売。

 9月の新刊『注文の多い活字相談』の事前注文の〆切が迫っているため、そうそうぼんやりしてられない。まだ注文の取れていない書店さんを電車に乗り継ぎ、グルグル廻る。結局、雨だろうが、雪だろうが、ひとり営業は外に出ざる得ないのだ。まあ、淀んだ会社にいるより100倍増しだけど、いつまで気力と体力が続くのか最近不安になることもある。

 この新刊、書名を決めるのにかなりの悶着があった。本の雑誌社内で、一番ツライのは雨に濡れる僕ではなく、多分単行本編集の金子だろう。鬼の編集・発行人浜本と、勝手なことばかりいう営業の僕の間に挟まれ、なおかつ著者は装丁家と打ち合わせもしなくてはならいなんて。だから金子は、唸ってばかり。

 昨年末に新刊スケジュールを打ち合わせしたとき、『注文の多い活字相談』の仮書名は『新・日本読書株式会社』。何だかそのまま何も考えず、本になりそうな勢いだった。

 しかし、そもそも僕は、第1弾をまとめたときの『日本読書株式会社』という書名が気に入らなかった。それだったらHPの連載同様『読書相談室』にして欲しいと訴えていた。ところが、この企画自体を考え出した顧問目黒から強烈なプッシュ。目黒にしてみれば、自分の夢だった企画なのだから『日本読書株式会社』という言葉に強い思い入れがあったのだろう。

 営業マンとして「売れている本」眺めていると、非常にわかりやすい書名の本が多い。書名を読めば、1発で内容がわかるような、あるいは売り文句そのものようなものだ。

 だから僕は、単行本の企画が挙がるたびに一番わかりやすい書名を考え、金子に伝える。しかし文芸編集者の誇りを持っている金子の感覚とは、かなり開きがあるようで、「スギエッチが挙げるのは、みんな実用書やビジネス書のタイトルだよ、それは文芸書の場合、帯の言葉なんだよ」と却下されている。

 しかし、それこそ僕の考えで、今は帯と書名が逆転しているのではないかと思っているのだ。

 そういう考えをまったく論理的ではない言葉で僕は金子にぶつける。金子は決して人の意見を尊重しない編集者じゃないから、微妙に参考にしながら、妥協点になる書名を挙げてくる。そして僕もある程度納得できる書名が出来上がると、最終的に浜本のところへ持っていく。しかしここでまたダメ出しが出たりする。

 苦悩のなかで決まった『注文の多い活字相談』。僕はこの本がとても好きだ。本はひとりで読んでいてもなかなか広がることが難しい。それが、この一個人の相談を読むと意外と似たような本を読んでいる人がいて、その解答が非常に参考になる。すでにゲラの段階で僕はフセンを貼っていて、未知の作品の読破に燃えている。

 ちなみにコレ、営業トークではありません。

9月5日(木)

 押し売りとか押し込み強盗という言葉は聞いたことがあるけれど、押し掛け生徒というのは聞いたことがない。本日突然、何の前触れもなく画伯沢野がパソコンを抱えてやって来たのだ。ちなみに沢野は児童書の出版社で長年営業をしていたから、本の雑誌社での立場は、取締役営業部長となっている。ということは、僕の直属の上司になるのだが、まあ、そういうことを意識したことはない。

 沢野は颯爽と現れ、いきなり
「金子いる? 金子」と叫んだ。金子は電気屋に出かけていた。
「じゃあ、浜本は?」
 机の下に隠れるようにしていた浜本は、小さな声で返事をした。
「あのさ~、パソコン教えて」

 それからすぐ浜本にとっては非常に有り難いことに、金子が戻った。二人はまず昼飯を食いに行き、会社に戻ると、日が暮れるまで「即席パソコン講座」を開催。

 パソコンを前にすると、椎名、目黒、沢野の3人の人間性がハッキリする。

 まず顧問目黒。
 すでに初めからパソコンを理解することをあきらめているので、とにかく自分が必要な情報だけを手にしようとする。ワープロ、ネット、それ以外のことは、まったく興味を持たず、とにかくひたすら、元助っ人のCさんと金子にその部分だけの使い方を教わる。だからいまだにROMとかRAMとかハード的なことはまったくわからないし、簡単なメンテナンスも覚えようとしない。パソコンを使うにあたっての座右の銘は「とにかく近くに詳しい人がいること」だそうだ。

 次は編集長の椎名。
 椎名は基本的に機械に興味がある。だからパソコンを前にして、いろんなことを質問し、得意の擬人化した方法で理解しようとする。だが、どうもその限界を超えてしまうようで、「うーむ」と唸り、途中で放棄。そしてパソコンなどなかったことにしてしまう。

 最後に営業部長の沢野。
 沢野はとても真面目な人なので、とにかく疑問に思ったことを何でも聞いてくる。パソコンを理解しようとしている気持ちは3人の誰よりも強く、メモもしっかり取る。ただ、しばらくすると同じことをまた質問してくるので、金子は粘り強く説明を繰り返さなければならない。

 有名な「ホトトギス」の句で当てはめると、「殺してしまえホトトギス」が椎名で、「待とう」が目黒。「泣かせてみよう」が沢野といった感じか。

 目黒の「待とう」は何も理解できるその日を待っているのではなく、誰かホトトギスを鳴かせるのが上手い人が来るのを待っているのだが…。

 金子は何度も何度も
「僕、仕事しないと…」と呟いていたが、沢野は聞こえていないのか、聞こえないフリをしているのか、「どうして?」「これは何?」を連発し、時間は刻々と過ぎていった。

 それでもとにかく第1回講義でワープロの使い方は終わったようで、次回からは添付して原稿を送るよと豪語し沢野は来たときど同様、颯爽と帰っていった。

 いったい沢野はどこまでパソコンを理解するのか、そして本の雑誌社は予定通り単行本を出せるのか…。様々な問題が沸き起こる「パソコン講座」であった。


◆今日売れていた本
銀座・某書店 『<映画の見方>がわかる本』 町山智浩著 洋泉社
「うちはこの『映画秘宝コレクション』シリーズが売れるんですよ。週5、60冊ペースで出てて、堂々の1位ですよ」

9月4日(水)

 祥伝社の営業マンHさんから電話を頂く。Hさんとは、かつて一度とある書店さんの飲み会で同席したことがあった。

「ご無沙汰しております。あの、大変恐縮なんですが、『本の雑誌』の来月号で…」

 先週、刷り上がった10月号のゲラを確認していたので、僕は、そこままで話の筋がだいたいわかった。一度しか会ってない人間に何か頼みごとをするのは誰だって心苦しい。だったら先にこちらから話してあげた方が楽だろうと、Hさんの言葉を遮った。

「あれですよね、北上次郎のガイドで、荒山徹さんの新刊『魔岩伝説』(祥伝社)を大きく取り上げていることですよね?」
「そうなんです」とHさんは安心した声になり、ゲラをFAXすることを伝えるととても喜んでくれた。

 しかし、その後に続いた展開は僕の予想外のことだった。

「実は、わたくし、営業部に異動になる前、編集にいたことは飲み会の席で話したと思うんですが、荒山先生のデビュー作(高麗秘話)をそのとき編集していたんです。原稿を読んで凄さに驚いて、絶対この人の本を出したいって…。デビューに立ち会ったのは荒山先生だけです。だから今回北上先生が書評してくれた…と聞いてすごいうれしくてうれしくて…。今は営業ですから、書店さんで、しっかり売って頂けるよう頑張ります」

 ちなみにこの『魔岩伝説』への北上次郎の書評の書き出しは「すごいぞ、血が脈打つぞ」である。ゲラを読んだとき思わず笑ってしまったが、Hさんの話を聞いたら読まずにいられない。思わず、営業中に買ってしまった。

◆今日売れていた本
渋谷・青山地区 『パーク・ライフ』吉田修一著(文藝春秋)
「この辺じゃデビューしたときから売れていたけど、芥川賞の受賞はもちろん、装丁もキレイだし、作品も読みやすくなった気がしますね。しっかりファンが付いてくれるといいですね」

9月3日(火)

 首都圏をグルグル営業していると、本の売れ方の違いというのを感じる。それはお店の個性というものではなく、もっと大きな意味での都心部と郊外の違いで。

 まず断然に違うのがスピード。新宿や池袋、あるいは渋谷といった山手線圏内では、新刊が並んで1週間くらいである程度の勝負がついてしまうことが多い。新刊を並べるとそのときから売れる本はパーッと売れていき、その後、追加を出すほど売れるのか…というとまたそれは難しい問題だけど、とにかく動くスピードが速い。

 これが郊外の書店さんに行くと1テンポ、ズレる。都心部で動き出して1週間から2週間後に同じ本が動きだす。ある沿線の書店員さんは「いやー、そういう意味でいうと楽だよね、山手線内の書店さんのベストをチェックしながら、先に追加注文ができるからね」と話していた。

 その次に違うのは、売れる本のラインナップ。

 今日訪問した都心から約1時間30分のお店では、担当者が非常に外文好きな方で、一所懸命棚作りをしているのだが、その棚から本が売れることはほとんどないと悔しがっていた。例えば、今ならアーヴィングの新刊『第4の手』(新潮社)。これは都心の書店さんではベストに挙がっていることもある売れている本なのだが、これがもう自分が買った1冊以来ピクリともしないというのだ。

 こういう話は別の書店さん(都心から1時間)でも聞いたことがあって、そのお店の担当者は、かつて都心部の本店でバリバリ売っていた方なのだが、あるとき異動の辞令が降り、郊外のお店の担当になった。しかしそのお店になって思うように数字が伸びず、今までのやり方がまったく通用しないとかなり焦った表情で話されたことがある。

「とにかくパブリシティ。テレビで紹介されたとか、新聞に載ったとかそういう本が強い。いや、そればっかりなんだ。個性のあるちょっとまだ世間に認知されていない本というのが一番売りにくい。それを売って本店では数字を稼いでいたのにね」と。

 また別の書店さんでは、郊外の同一地域でも、新興住宅地はまだ売りやすい方だと聞いたことがある。本を読む習慣のある人が、住んでいるからかなぁとクビを傾げていた。

 ちなみにここで書いている郊外とは何も住宅地にある書店さんのことではなく、その県では大きな商業地でのこと。

 たぶん、都心で本を買っている人の多くが、この郊外に住んでいるんだろうから、この傾向のあまりの違いがどこから出てくるのかよくわからない。都心で本を買う人は地元の本屋で本を買わないのだろうか?

 それにしても首都圏という括りだけでこれだけ違うのだから、全国に話を向けたらきっともっともっと違うのだろう。それを考えると、坪数などで配本部数が決まる現在のパターン配本はやはり限界があるというもの。

 最後につけ加えておくと、郊外のそんな書店員さん達は、売りたい本がなかなか売れない状況で、ある朝出社し、売上スリップ整理をしていて、前日の売上にそんな本たちを発見すると、飛び上がるほど嬉しいらしい。誰が買ってくれたの? なんて思わず考え込みながら、その日は一日中ハッピーな気分で仕事が出来るそうだ。

◆今日売れていた本=『水彩画プロの裏技』奥津国道著(講談社)
小田急線沿線某書店「担当者お休みのためコメントなし」

9月2日(月)

 何だか誤解しているのは、読者なのか、僕なのか。「炎の営業日誌」に終止符を打ったら、淋しいというメールを頂いた。しかし、今日から「帰ってきた炎の営業日誌」が始まるのだ。タイトルが変わるだけで、何も変わり様がない。技術的にもネタ的にも今までを超えることは無理だろう。

 もしかして、もう毎日原稿を書かないとでも思われているのだろうか。それならそれで有り難いのだが、営業マンというのはとてもサービス精神の旺盛な生き物なので、こういう<場>がある限り、毎日原稿を書かざる得ない。

 とにかく、何も変わらず、新たな連載が始まります。ううう。

-------------------

 月が変わって9月。月の初めは気持ちが良い。なぜなら先月の売上をリセットでき、気分一新で、新たな営業を迎えるからだ。本日は大好きな横浜を営業。

 M書店のYさんを訪問すると、とある大手出版社から追加の注文分が入荷し、ご機嫌な様子。その本、どこでも売れるという内容ではないのだが、営業マンが
「Yさんのところなら客層が合うと思いますので、しっかりお入れします」と連絡してきたとか。互いのヨミどおり、初回50冊は完売し、今日その追加分が届いたとのこと。

 書店と出版社を繋ぐのは、書店員さんと営業マンであり、その関係が良好だと、このような無駄もストレスもない配本が成り立つと言うことだろう。

 追加分を早速平台に並べながらYさんが話したことを、お店を出た後、肝に銘じる。
「ほんと人間関係っていうか、営業マンにお店を見てもらうっていうのが大事ですよ。売上データだけじゃ見えてこないものが、その場にいるお客さんや棚構成からいろいろ伝わると思うんで。それが伝われば今回みたいに売り逃しをしないで済むし、ほんと週1や月1なんて無理は言いませんから、せめて3ヶ月に1度でいいですから、お店に来てくれると有り難いんですよ」

 次は、つい最近、大規模な改装を行ったルミネY書店さんを初訪問。同じチェーンの恵比寿店と同様の棚を使用しているようで、とてもスッキリ本が見やすくなった印象を受ける。棚構成が非常にうまく、コの字型の売場の両極に文芸と文庫を配置し、奥の部分が雑誌になっていた。これなら、混雑時期もお客さんがばらけるし、入り口から出口まで一通りお客さんが回遊するのではないかと考える。

 担当のOさんにそのことを伝えると
「まだ、改装間もないのでどこまで良いのかわからないですけど、順調です」と笑っていた。

 それにしても横浜近郊に住んでいる人や働いている人は幸せだ。駅近郊のビルだけで書店さんが5件以上もあり、今春のK書店の出店以来、既存書店さんもそれぞれ生き残りに必死で、営業時間を延長したり、改装を行ったり、あるいは本の品揃えに力を入れ、各店パワーアップしている。

 こんなバラエティーに富んだ書店さんの中から、好みの書店を見つけたり、書店のハシゴが出来るなんて、とても素晴らしいこと。ローカルな駅在住の一本屋好きとして、ただただ羨ましい。まあ、働いている側は大変だと思うけれど…。

◆売れていた本
 『天国の本屋』松久淳 田中渉著(かまくら春秋社)
 「朝日新聞夕刊の記事が出て以来、今までの数を越えてドーンと動き出した」

 『あなたは絶対!運がいい』浅見帆帆子著(グラフ社)
 「第2弾『あなたは絶対!守られている』が出たら既刊がまた売れ出した」