11連敗もしていると、さすがに観に行くのが辛くなる。
僕、木曜日辺りから不機嫌の人となり、会社で声をかけられても横柄な応対しかできなくなってしまう。出来ればこのまま平日が続き、土・日をすっ飛ばして、また来週が始まって欲しいと願ってしまう。しかし誰にも公平に明日が訪れるように、未来のほとんどない明日が僕にも訪れる。
サッカー観戦は、いやレッズを自由席で応援することは、何度も書いているけれどまさに「苦行」である。ツライなんてもんじゃない。雨の日も風の日も雪の日も試合開始の何時間も前から並んで、見られるものはほとんど負け試合である。ふつう、待ちに待つものって、美味しいラーメンだったり、心臓が飛び出すくらいのアトラクションだったり、基本的に期待を越えるものなのに、僕らレッズサポは期待を大きく下回るものにこれだけ並ばなきゃならないのだ。
おまけに我が浦和レッズ。今季、チームの核として大型補強したエジムンドにいきなり逃げられてしまった。最低というか、最悪というか、もう言葉がない。言葉がない変わりに、唯一、前節の試合で「生」浦和エジムンドを見られたことに感謝する…、いや、感謝なんてするわけない!! 退団の報を聞いた夜、僕はビデオを引っ張りだし、エジムンドが映るたび、ティッシュの箱を投げつけた。
ならばどうして応援するのか?
そんなもの僕にもわからない。
この日だって朝7時に目覚めた瞬間「もう絶対辞めよう…」って何度も呟いたし、自転車を漕ぐ気力がないのは、何も向かい風のせいではないのを知っていた。途中、バイパス道を越える大きな交差点で止まったとき、思わずトラックに飛び込もうかと真剣に考えたことも白状しておく。だってそれ以外辞める方法がわからない。
しかしその気持ちをどうにか押さえつけ、試合開始6時間前から並びに加わり、溜息を三千回くらい吐き出したとき、僕がなぜここに来ているのか、答えが見つかったのだ。
試合開始5分前。
レッズゴール裏から静かに、しかし力強くコールが始まった。
それはエリビス・プレスリーの名曲「愛さずにはいられない」のサビである。レッズサポはいつでも逆境に立たされる運命で、その逆境に立たされる度、この歌を歌ってきたのだ。男達のセンチメンタルな懇願の叫びが競技場を覆い、もちろん僕もそのコールに加わる。どんなことがあったって僕たちは「愛さずにはいられない」んだ。
そして次は、戦いの狼煙でもある「ウォーリア」が始まる。まるで戦国時代のいくさみたいな遠吠えであるが、この遠吠え何度聞いても(叫んでも)血が沸き立つ。
試合開始と同時にコールは「PRIDE OF URAWA」に変わった。
アーレオー、アーレオー、アーレオーレアーレーオー
アーレオー、アーレオー、俺達の浦和レッズ
浦和レッズ、浦和レッズ、浦和レッズ、浦和レッズ
浦和レッズ、浦和レッズ、PRIDE OF URAWA REDS
そう、ここには誇りがあったんだ。
11連敗している浦和レッズは何も浦和レッズというチームではない。僕たち、みんな浦和レッズであり、それは例えどんなに負けようが外国人選手に逃げられようが、変わりはない。国籍と同じように僕たちみんなが浦和レッズ。勝とうが負けようが、そのこととはまったく関係ない誇りがある。
だから僕は、どんなにつらくても、競技場に通うんだ。
J1 ファーストステージ 第2節
浦和レッズ vs 名古屋グランパスエイト
0対0 引き分け