5月29日(木)
朝イチに顧問・目黒が降りてきて、いきなり「行くか?」と切り出される。一瞬、何のことかわからずポカンとしてしまったのだが、数日前、後楽園のY書店さんを訪問したときT店長さんから藤代三郎名義の新刊『馬券党宣言』(ミデアム出版)のサイン本を作れないかと頼まれていて、それを目黒にお願いしていたのだ。早速、二人で水道橋へ向かう。
最近、著者が書店廻りをするのが妙に流行しているが、僕は初めての経験でちょっとドギマギ。しかし、よく考えてみると、著者とはいえいつも顔を合わしている目黒だし、おまけに自社の本でもないわけで、ドギマギする必要もないのか…。サイン本の作製はあっという間に済み、目黒はそのまま競馬本を物色するというので、僕は一路千葉へ。
ところがやっとことさ辿り着いた千葉なのに、S書店さんでは担当のIさんが昼休憩に出たばかりという最悪な事態。戻られるまでには1時間はかかるとのことで、いやはや小石が胃にポチャンと落ちる。仕方なく新刊チラシを置いて、次なるお店K書店さんへ向かうが、こちらも久しぶりに会えるのを楽しみにしていた担当のKさんが不在で、またもや小石がポチャン。
ちなみに、この小石が1日10個溜まると、その夜は新宿3丁目方面で荒れることになる。ただいま2個。
不運を嘆きつつ、津田沼へ移動する。
恐る恐るP書店さんを覗くと、背の高い担当のKさんがすぐに見つかり一安心。良かった、良かったと声をかけ、そういえばKさん、いっぱい本を読んでいるらしいのだが、どんな本を読んでいるのか聞いたことがなかったと、何気なく「どんな本読んでいるんですか?」と問いかける。Kさんはボソリと「講談社文芸文庫が好きなんですよ」と答える。
その瞬間、僕の頭のなかに自宅の本棚が映像化され、その中から会話のポイント「講談社文芸文庫」を急速検索。しかししかし、あの白地の上の方にグラデーションされたカラーの背の本が1冊も見つからず、該当なしの結果がでる。ほんとに1冊もないの?とその結果が信じられず、再度検索をかけるが、答は一緒。この間、約0.5秒くらいの出来事なのだが、僕には数時間に思えるほど長さであり、またこの解答に頭の中は真っ白に。小石5つが固まった大きな石がポッチャ~ンと落ちる。
全身から妙な汗を流しつつ、Kさんが続いて呟いた「ドロドロした話が結構好きですかね」なんていうキーワードにすがりつき、なぜか、左脳は止めているのに異様に発達している僕の右脳が勝手に口を動かし、「ドロドロなら今読んでいる本がかなりドロドロで…」なんて呟きながら『いい人になる方法』ニック・ホーンビィ著(新潮文庫)を紹介してしまう。講談社文芸文庫ファンとニック・ホーンビィが繋がるとは思えない。思えないけど、口が開く。ああ。
担当のKさんは優しく「じゃあ読んでみようかな」なんて話してくれるが、またもや小石がポチャリ。
小石はその後も落ち続け、POPで有名なS書店さんを覗くが、僕の読んでいるような本には一枚もPOPがないことでポチャン、反対側のM書店さんでは担当者さんに会えずポチャン。これにて定数10個となり、今夜の予定は決まる。
それでも営業は続き、HP銀河通信(http://www2s.biglobe.ne.jp/~yasumama/)でお馴染みの安田ママさんを訪問。ここで一気に小石を吐き出そうと禁断の質問「安田さん、講談社文芸文庫って持ってますか?」をしようとしたのだが、すっかり話しているうちに忘れてしまって小石はまったく消化されないまま撃沈。
もちろん夜は、羊よりも従順な助っ人・及川君を従え、思う存分荒れてしまった。ごめんね、及川君。