ときおり激しい雨粒が落ちてくる。僕は合羽も着ずビショビショになりながら大声を出していた。例え風邪をひいてしまったとしても選手と同じ立場で戦いたいし、今日さえ生きていられればどうでもいい。
目の前ではアウェーユニを着た我が浦和レッズの選手達が、自信を持って堂々と戦っている。間もなく終了のホイッスルが鳴ろうとしていたが、スコアの4対0は決して奇跡でも偶然でもない。危ない場面はほとんどなく、つねにレッズペースで試合は展開されていた。山瀬、エメ、達也、エメ。あともう少しで僕たちの手に、優勝カップが収まろうとしていた。
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朝8時に家を出た。
今回やっとの思いで手に入れたチケットは指定席だった。だからもっと遅くに家を出ても良かったのだが、とてもじっとしていられなかった。駅のホームはすでに赤いものを身にまとった人達であふれていた。
新宿駅で総武線に乗り換えようと思ったが、なんだか無性に歩きたくなる。新宿御苑の脇を通って千駄ヶ谷へ抜ける道。この道はかつてラグビーを見ていた頃いつも歩いていた道だ。御苑の木々に止まる鳥たちの声が時折聞こえる以外、ほとんど静寂に支配されている。興奮を抑えるためには最適な道だ。
ゆっくり歩きながら、今までのことを振り返る。良い思い出はほとんどない。1試合に限定してみればもちろん幸せな時を過ごしたことはあるけれど、それにしたって優勝という最高の幸せを僕たちは一度も味わったことがない。よくそれでも11年間通ったものだ。勝ちたい、勝ちたい。今日こそは勝ちたい。そして優勝の喜びを噛みしめたい。
国立競技場を埋めた約5万人のうち8割はレッズサポだったのではなかろうか。レッズのフラッグがアントラーズ側ゴール裏以外ほとんど埋め尽くしていたのだ。乱立する真っ赤な旗。それはサポーターの誇り。そして「勝ちたい」という想いの現れ。試合開始寸前、満を持してのコールが始まった。
アレオー、アレオー、アレオレアレオ。
アレオー、アレオー、俺たちの浦和レッズ。
浦和レッズ、浦和レッズ、浦和レッズ、浦和レッズ。
浦和レッズ、浦和レッズ、プライド オブ 浦和レッズ。
2時試合開始。
4時試合終了。
4対0の圧倒的な勝利。
そしてナビスコカップ優勝!
僕たちの選手が本気で喜んでいる。抱き合う。拳を突き上げる。お互いにたたえ合う。僕たちの選手がだ。
まばゆいスポットライトがピッチを照らす。中心にいるのは僕たちの選手だ。こんな光景を見られるなんて…。信じていたけど信じられない。
「2003年、ナビスコカップチャンピオンは浦和レッズ」というアナウンスが流れ、僕たちの選手が表彰台に上がる。
そしてついに僕らの手に優勝カップが収まった。
僕らのためにクイーンの『We Are the Champions』が流された。
いつまでも続く歓喜の雄叫び、歓喜のコール、歓喜のハイタッチ。浦和駅西口では、夜遅くまでコールが続いていた。
We Are Diamonds We Are Diamonds Yes We Love You Boys In Red
We Stand Beside You Forever Always Yes Red Diamonds You're The Best
We Are Diamonds We Are Diamonds All Together Hand In Hand
We Will Keep On Singing For You Yes Red Diamonds You're The Best