2ndステージが始まって、ヴィセル神戸、東京ヴェルディと破って2連勝。そして本日の敵は憎きジュビロ。そろそろ王者という文字が薄れてきたとはいえ、そうは簡単に勝たせてくれる相手ではないだろう。しかし2ステージ制のJ1では、たった15試合しかなく、勝利で得られる勝ち点3はとても大きな意味を持つ。だから本日も当然、勝たなければならない。そう、優勝するために。
さいたまスタジアムの試合では、試合開始寸前の、控え室から出てきて、選手がスタンドの下の、えーっとあそこはなんていうんだ? たまりとでも言えばいいのか? とにかく入場する前に互いのチームが集合するところが、オーロラビジョンで映される。僕はその映像がとっても好きだ。
それぞれ面識のある選手同士が握手を交わし、互いの健闘を約束しあう。時には談笑しているシーンも映ったりするが、地元が一緒だったりすれば仲も良かったりするのだろう。しかしそれもピッチに入るまでの話で、白線に囲まれたラインの中に入ったら敵以外の何者でもない。そこにはスポーツが持つ、独特な世界が描かれていると思うのだ。
この日、その映像が映っているとき、浦和のゴール裏では、こんな歌が歌われ出した。
「ゴールでオレたちをアツくさせろ オーオオー ウラーワレーッズ 」
そう、僕たちは、雨が降ろうと、風が吹こうと、ここスタジアムで熱くなりたいのだ。そして熱くなるために一番必要なのは、我らがレッズのゴールであり、そのゴールが呼ぶ勝利なのである。この声が、この歌が、あそこにいる選手たちに届いているだろうか?
試合開始とともに、ゴール以上に僕を熱くさせたのは、レッズの選手達のディフェンス意識の高さであった。前線の永井、エメ、山瀬が、ジュビロボールになる度に、すさまじい勢いで追い込みを始める。悪いときならその追い込みが単発で終わってしまうのだが、この日のレッズは、すべての選手が糸で結ばれているように動き出す。ゴール裏上段から見ていると、その美しさに思わず鳥肌が立ってしまった。
その美しさに見とれているうちに、山瀬→永井とボールがつながり、我らが神様、エメル尊様へボールが渡る。神よ! 祈る暇なく、エメはドリブルし、狭い角度から正確なシュートを放った。ゴール!!!!!! まさにストライカーのゴールだ。
今度はその15分後。「ついに生まれ変わった、か?」の山田が、山田にしか理解できない天井シュートを放つと、それは漫画のようにゴールに吸い込まれてしまった。思わず笑ってしまったが、ゴールはゴール。これで2対0。ジュビロって弱くなったなぁ…なんて考えていたら、選手も気を抜いてしまったのか、前半終了間際に前田に決められ、2対1。隣で観戦している酔っぱらいオヤジは、そのゴールに気分を害し「だからダメなんだよ~」と怒鳴っていたが、確かにそのとおり、レッズの悪いくせだ。
後半が始まると、今度は完全にジュビロのペース。それでもどうにか耐え続ける。またレッズボールになったときに、ジュビロお得意のサイドへの追い込みをかけられても、レッズの選手は焦ることなくボールを回し、前線にボールへ送る。いやはや、うまくなったもんだな。そのボールが前線にわたり、鋭いカウンターを何度も繰り出すが、この日は先週と違って決定力がない。2対1の膠着状態のなか、時計が進む。
その膠着状態をやぶったのが、この世で一番ムカツクサッカー選手・福西である。こいつは可愛い顔して非常にお行儀が悪く、クラスにいたら一番タチの悪いタイプの生徒だろう。その福西がお得意の肘鉄を永井にぶつけ、この日は先生もとい審判がしっかり見ていて退学もとい退場処分を受ける。バンザイ!
ところがところが、問題なのは、ひとり減ったジュビロが元気になってしまい、あっけなく西にゴールを決められてしまったこと。これで2対2の同点、残り時間は9分+ロスタイム。
正規の時間9分があっという間に過ぎ去り、第4審判がロスタイムの表示を掲げる。そこには「4」文字。後ろで見ていたあんちゃんが「4分あるぞ、勝てるぞ~」と叫んだ。そうあきらめてはいけない!この試合に勝つか、引き分けるか、それは雲泥の差だ。勝ち点2も大事だし、今後の選手達のメンタルにも多大な影響をおよぼすだろう。祈りではなく、執念で、僕は歌い続けた。
3分が過ぎた。
あきらめてはいけない。
でもダメかも…。
そんな風に思ったとき、ゴールが生まれた。
あきらめることなく、走り続けた我らが長谷部誠のドリブルから放たれたシュートが、倒れ込むゴールキーパーの上をとおり、ゴールネットを揺らしたのだ。
その瞬間、埼スタが爆発した。
ゴール裏はもちろん、バックスタンドも、メインスタンドも2階もが総立ちとなり、4万人の声にならない雄叫びが響き渡った。
まさにゴールが俺たちを熱くさせた瞬間だった。
熱くなりたくて、スタジアムに足を運ぶ。
熱くさせてくれるものが、そこにはある。
3対2、開幕3連勝。しかし先は長い。
浦和レッズよ、もっともっと熱くさせてくれ!