WEB本の雑誌

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12月27日(月)


 期待させるだけさせて、最後にはホテルの前で頬を叩きさっと帰ってしまう性悪女。まさに我が浦和レッズの04年はそんな感じで、昨日の天皇杯準決勝敗北ををもってシーズンが終了し、何だか思い切り気が抜けてしまった。

 ため息ばかりついていたら、赤子を抱えた妻に「それでも期待できるようになっただけ良いじゃない」と慰められたが、期待できるようになればなるほど、その期待は脹らむわけで、それが壊れたときのショックは今までの以上に大きいのだ、と呟きつつ、その手でボタンを押し操作している「Jリーグ ウイニングイレブン8 ~Asia Championship~ 」は会社から出たお祝い金をくすねて買ったゲームであり、しかもここで操作している浦和レッズも最後の最後で負け、優勝を逃しやがった。ああ…。

 しかしどんなに落ちこんでいても、妻の手に抱えられている息子を見ればすーっと心が楽になるってものだ。生まれてくれた喜びに変わるものは、この世にないのではないか。いまだ息子の顔を見る度に涙が溢れてくる。

 この息子がいつか浦和レッズのユニフォームを着て、ピッチに立つことがなかろうか? こればっかりはトンビが鷹を生む可能性もあるから、ないとも言えないし、あるともいえない。そして僕はこの息子から「信じる」ことを強く教わったので、息子の可能性を信じてみたいと思っている。

 ついつい思い描いてしまう夢物語であるけれど、とにかくその第一歩としてサッカーボールをプレゼント。妻からはサッカーを強要しないようと怒られるが、いいじゃねぇか、自分の息子に強要したって…。

★   ★   ★

 本日をもって04年の仕事収め(いちおう)。
 みなさま、1年間ありがとうございました。
 たぶん来年も続けますのでよろしくお願いします。

12月22日(水)


 年末のクソ忙しい時期に、出産、退院と3日も休んでしまい、いやはや机の上と頭のなかは壮絶な状態へ。仕方ないというか大事なものは何なのか?ってことなんで、とにかく会社に来られた日には、必死に積もりにつもった仕事を片づけていくが、まあ、ある線を越えたところで物理的不可能な領域に達するわけで、そうなったら手を挙げるしかないだろう、というかすでに手を挙げていたりして。

 おかげさまで04年最後の新刊『増刊 おすすめ文庫王国2004年度版』もしっかり出すことができ、『本の雑誌』1月号は例年どおり売れているようで直納ラッシュ。忙しいけど嬉しい。おまけに秋から冬にかけた新刊3点『翻訳文学ブックカフェ』(増刷!)『コバルト風雲録』『千利休』が良い感じ売れているから、いやはや終わりよければすべてよし、良い一年だったと言えるのではないだろうか、ってとにかくこの仕事の山を片づけない限り、終わらないのだ。

 昨夜、退院してきたガキをじーっと眺めていて、誰かに似ているなと考えていたのだが、朝ハッと閃く。森三中の坊主頭の奴に似ているのだ。ここでウゲっと唸るのではなく、森三中を好きになってしまうのが不思議なところ。これが親ってものなのか。

 働け!

12月16日(木)


 分娩台に横たわる妻の上に置かれている時計を見ると、いつの間にか日付をまたいでおり、破水したと叩き起こされた朝の4時から約20時間が過ぎようとしていた。経産婦は楽よなんていっていたのはウソのようで妻は先ほどから何度も「痛~い」と叫び、僕の腕に爪を立てつつ、強く握りしめてくる。男である僕はどうすることもできず、助産婦さんの声に合わせ「ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」と妻にリズムを伝えつつ、出血、赤ちゃんの異常とトラブル続きだったこの妊娠のひとつひとつを思い出していた。

 そう初夏の頃。この日誌で「あきらめざるえない」と書いた赤ちゃんが、僕ら夫婦やお医者さんの予想を良い意味で裏切り、夏を越え、秋を過ぎた頃には回復し、そして冬を迎えたこの前々日の14日には37週目の検診日で、もういつ生まれてもおかしくないと言われていたのである。あの赤ちゃんがここまで育つなんて…。とーちゃんもかーちゃんもお前の力を信じてやれなくて、毎日毎日泣いてばかりいたんだ。ごめんな。

 助産婦さんのかけ声が「ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」から「ハァッ、ハァッ、ハァッ」に変わり、出産が佳境を迎えていることを知る。妻の汗を拭きながら「もうすぐだよ」と声を掛けたが、視線を合わせるのがやっとらしく、言葉は何も返ってこなかった。妻よ、お前もほんとに大変だったけど、もうひと踏ん張り、頑張ってくれ! 赤ちゃんも今、一生懸命頑張っているぞ!

「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「お母さん、もうすぐですよ、頭が出てますよ」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「お母さん、顔をあげて! もうすぐよ」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「おめでとうございまーす、ハイ、どっちかな?」

 妻の股の間に立っていた助産婦さんが、生まれたばかりの赤ちゃんを受け取り、捻るようにして正面を妻に向けた。そこには立派なちんちんがついていたのだが、僕も妻も、もう男でも女でもどうでもよくて、生まれて来くれれば十分だった。

「ごめんね。あきらめそうになっちゃって…」
「生まれて来てくれて、本当にありがとう…」

 妻の胸の上で、その名のとおり真っ赤な赤ちゃんが「フェ~」と泣いた。
 その泣き声を聞いて、妻と僕は号泣した。

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 いろいろとご心配をおかけしましたが、どうにか無事出産までたどりつきました。あの夏以降、何が起こるかわからない状況だったので、出産について書くことは控え、結果的に騙すような形になってしまい、本当にどうもスミマセンでした。

 そして励ましのメールをいただいた皆様には、どう感謝を返したら良いのかわかりません。ただ、冗談抜きで皆様の励ましを頼りに、ここまで歩いてくることができました。本当にありがとうございました。

12月13日(月)


 あれから二日が過ぎた。

 その間、何度もビデオの再生ボタンを押してみては、画像が映るとすぐに涙が止まらなくなって停止ボタンを押すということを繰り返した。何度も何度もそうやって、結局二日かけて進んだの前半の半分くらいだ。これ以上とても見ていられなかった。

 そこに映る選手達は、誰もが本気で120%戦っていた。
 ゲームに集中し、そしてボールに執着し、敵選手と体をぶつけ合い、ゴールを目指していた。僕がレッズサポでなく、単なるサッカー好きだったら、「素晴らしいゲーム」と表現するであろう、最高の試合が、最高の舞台で行われていたのだ。

 そしてその奥から聞こえてくるサポーターの声は、やはりこちらもいつも以上の声で間違いなく120%戦っていた。

 前日から用意をしていた人文字は約5万席に赤や白のビニール板や風船を置くため、有志が集まって夜遅く、あるいは朝早くから作業をしていたものだし、スタジアムの内外には「全員で応援して勝利を奪おう」という趣旨のビラがそこかしこに貼られていた。その甲斐あってか、いつもは着席している指定席観戦者も、この日は選手の入場時には立ち上がり、ゴール裏の声にあわせ、声を出し、手を叩いていた。埼玉スタジアムが出来上がってから、最高の環境が、まさにこの最高の試合でサポーター同士の想いによって生まれたのである。まさに「We are REDS」を体現する日であった。

 いったいサッカーの神様は何を考えているのだろうか?

 こんなにサッカーを愛し、サッカーとともに生きている人間の前で、これほどまでに悲劇的な結末を用意しようとは。それもまさにナビスコカップ決勝と同じ展開で、果たして年に2度も決勝戦で延長PK負けを期したチームというのが世界で存在するのであろうか? 

 どうして我らが浦和レッズの前にはこうやって悲劇ばかりが起こるのだろうか。連敗、J2降格、ギリギリの昇格、昇格組の初勝利献上…、挙げていけばきりがない程のいくつもの悲劇。なぜだ?

 それはきっと強くなるための試練…なのだろう。
 そう思わなければとても立ち直れないし、そうしなければならない。
 浦和レッズは、日本一の、アジア1の、そして世界を代表するクラブになるために、多くの悲劇から立ち上がることを、サッカーの神様は望んでいるのだ。

 試合後のスタジアム。
 J2降格決定時にはすすり泣きがそこかしこから聞こえ、涙声の「We are REDS」がこだまがしたが、この日は涙ではなく、完全燃焼したのか、座り込む人が多かった。そう僕らも120分+α戦い続けたのだ。

 そして最後の最後で起こったコールは悲劇性を孕んだ「We are REDS」ではなく、「ウラーワ、レッズ」であった。この違いは大きいだろう。

 そう僕らはすでに立ち上がろうとしていたのだ。
 ウラーワ、レッズ!

12月8日(水)

 相棒・とおる(=太肉小背。32歳。中規模機械メーカー勤務。妻と子ひとり。住宅ローンあり)から先日連絡があり、ボーナスも出たことだし、たまには本でも買おうかなという内容であった。

 コイツは僕の悪友のなかでは数少ない本を読む人間で、まあ月に3~4冊はコンスタントに読んでいると思われる。また雑誌も大好き、というか情報が大好きで広く浅くいろんなことを知っている人間でもある。

 その相棒とおるが、買おうと思っていたのは『間宮兄弟』江國香織(小学館)で、柄にあわず江國さんの小説が好きだとのたまいやがる。まあ人の好みはそれぞれだし、『間宮兄弟』の兄にとおるが似ているような気もするので「買いなさい、読みなさい」と伝えておいた。

 そして本日メールが届く。
「いやー、スマン。たまには杉江の業界に貢献しようかと思っていたけど、つい『間宮兄弟』を古本屋で買ってしまった…そんなに安いわけでは無いのに(950円)。古本屋に平積みになっているってどういうこと?」

 平積みの件はともかく、すぐ近くで定価の半値近くで売っていれば、買ってしまうのが人間だろう。そしてその販売部数は我らメーカである出版社の販売数にはカウントされないのだから、本が売れなくなったと叫びたくなるだろう。

 本は間違いなく読まれている、けどこちら(出版社)に金が落ちてこないような形で読まれているのだ。

 またこの相棒とおるは『バッテリー』あさのあつこ著(単行本:教育画劇、文庫:角川文庫)も読み出したのだが、こちらはすべて図書館で借りているとか。年末に向けて3巻と4巻は貸し出し予約しているという。こういう人もきっと多いだろうな。本を読むための方法が、1に新刊書店という人はきっと減ってきていて、1に図書館あるいは新古書店という人が増えているのではなかろうか。

 さて、出版社はどうしたら良いんでしょうか?

 新古書店から金を取る方法…なんてないだろうし、図書館のシステムを変えるなんてことも難しいだろう。ちなみに相棒とおるの情報収集方法は、雑誌の立ち読みが減り、ほとんどホームページやメルマガになったともいう。

 うーん、とおるちゃん、どうしたら新刊や雑誌を買う?
 単行本の値段が安かったら買う? えっ? そうなったら新古書店がもっと安くなるって。じゃあ、カッコイイ本を作ったら? 別に所有欲はない? 参ったな。

12月7日(火)


 まもなく退職されるという連絡をいただいた、銀座A書店Oさんを訪問。

 いまだまったく心の混乱は収まっておらず、何を話したら良いのかもわからないまま、いつもどおり棚差ししていたOさんに声を掛ける。すると「杉江さんには殴られるんじゃないかと思って…」を身を固くされてしまったが、確かにそのとおり、これが学校だったり部活だったりしたら殴ってでも止めたであろう。それくらい残念で、そして同志だと考えていた。

 Oさんには本当にお世話になった。

 仕事に関してはとっても厳しい人で、自信のあまりない新刊を持って行くと、その自信のなさがしっかりバレてしまい思い切り突っ込まれた。しかしその逆に良い本を作ったときは、まるで自分の本のようにかわいがってくれ、そしてしっかり売ってくれた。

 だからいつも新刊のチラシができると、一番に銀座に持って行った。Oさんの反応をみて自信を持ったり、あるいは反省したり、そしてそれを原動力にしてその後の営業に向かったのである。
Oさんに認められる本を作りたい、営業したいと考えていたように思う。

 だから良い本ができた時に銀座に行くのは本当に楽しかったし、またその本が売れてOさんから電注をもらった時は、まるで犬のようにしっぽを振りながら、直納に向かったものだ。その逆も当然あって、そういうときは銀座のお店に入るのが本気で恐かった。この新刊なかったことにできないかなんて考えたこともあるが、でも、ほんと「仕事している」って気持ちを心底味合わせてくれる書店員さんのひとりであった。

 また「本屋大賞」のときも、Oさんは実行委員ではなかったけれど、影で必死に支えてくれた。当然投票もしてくれたし、つまらない批判が起こったりしたときは、僕以上に怒ってくれた。そして発表会には仕事で来られなかったけれど、夜遅く「お疲れ様でした」と電話してきてくれたときは涙が溢れた。

 ああ、書いているうちに思い出がもくもくとわき出してきて止まらない。金城一紀さんや竹内真さんを紹介してくれたのもOさんだった。そうOさんは若手の作家さんをしっかり見ていて、面白い本が出たときにはドーンと勝負し、必死になって売っていたっけ。

 ああ、やっぱりダメだ、殴ってでも止めたい。
 けど、同い年だから、辞めたくなる気持ちはすごくわかる。僕だって…。

★    ★    ★

 これはOさんの話ではないのだけれど、他の同い年の書店員さんとも話していて思わず深く頷いてしまったのだが、本当に今の30代は、会社のなかでツライ立場にいることが多い。それはなぜか多くの組織で40代が消えていて、50代の管理職の下がすぐ30代になっていて。それだけでもツライのに、この30代はまさに不況の中、就職した年代であり、その後はその不況がもっとどん底に陥ってしまい新入社員採用なしなんて会社ばかりなのだ。

 となると上もおらず、下もおらず、結局、管理職的な仕事もしつつ、現場の仕事もしなければならない状況に追い込まれる。しかし、その仕事量がツライのではない。その中途半端さがツライのである。どちらの仕事も100%できない、その精神的な疲労ですり切れてしまうのだ。

 ああ、こんなことをここで書いても仕方ない。けどこの業界だけ見ても、そんな30代の働き盛りがどんどん消えていっているのだ。特に書店さんの現場にその傾向が強く、まあ、それは結局、今の出版の仕組みの無理が、一番弱いところに出ているってことだろう。

 書店員さんをクローズアップするのは良い。しかしそれならばこの状況をもっとしっかり見つめて、もう1歩進めなければならないのではないか。それができなければ、書店員という本来経験が物を言う仕事が、単なる使い捨ての仕事になってしまうのではないか。

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 結局、Oさんとの別れは踏ん切りがつかず、また15日に顔を出しますといって、お店を後にした。

12月6日(月)

 順調に中央線の営業を終えられたので、立川から南部線を経由して聖蹟桜ヶ丘へ向かう。先月オープンした茶木さんのお店を覗くために。

 商業ビル「OPA」のエスカレーターを上って、新店・ときわ書房を覗くとその茶木さんは必死になって文庫の新刊出しをしていた。茶木さんの文庫棚の方針は、出版社別ではなく、著者&ジャンルをミックスさせた「あいうえお順」だから結構手間がかかるの。しばらくその品出しをされつつの会話。

「まだダメ。自分であそこもここも直さなきゃっていっぱいでくやしいよ。1月くらいまでかかるかもしれないけど、そのときになったら一度全部見てダメ出ししてよ」

 茶木さんのその謙虚さが好きだ。

「もうさ、単身赴任みたいなもんだから、息子とも全然会ってなくてさ。オープンのときに覗きに来てくれて以来かな、淋しいなあ」

 なんだかんだいいつつも、家族を愛しているのである。

「ほんと良い店にしたいから、頑張るよ」

 なんか不思議とやられちゃうんですよ、茶木則雄という人に…。
 茶木さん頑張って下さい。

12月5日(日) 炎のサッカー日誌 チャンピオンシップ第1戦篇

 先週の最終戦は、初めて3歳の娘をゴール裏に連れていき、サッカーを見るというまさに夢の時間を過ごした。しかし、それは優勝の決まった後の消化試合だったからで、本日は娘がどれだけ泣こうが連れていくわけにはいかない。何せ大事な「戦い」の間、アイスだおかしだと騒ぐものがいてはとても集中できんからだ。

 というわけで横国へひとりで向かったわけであるが、我が浦和レッズは横浜Fマリノスの醜いサッカーと戦う以前に戦わなければならない相手がピッチにいた。そうボールの動きにまったく追いつけない老いぼれ審判・岡田正義である。

 こういうことはあまり書きたくないけれど、本当に酷いジャッジの連続で、久しぶりに怒号のわくスタジアム。もちろん僕も大声で岡田を罵り、罵倒したが、いかんせんここはピッチとスタンドの遠い臨場感0のスタジアムだから岡田の耳にはまったく届かない様子。しかも、我が目の前でエメルソンの足が思い切り払われたのに、なぜかそのエメルソンにイエローカードが出される始末。おい、こら!

 なぜ僕がスタジアムに足を運ぶのか?
 そうスタジアムで起こることは、まさに人生そのものなのである。こうやって矛盾や過ちがまかり通り、不条理を押しつけられるのだ。

 しかしスタジアムには社会より自由が存在していて、その過ちに対して大声を上げ、床を踏みならし、態度を表明することができるのだ。大人になって身につけたクソみたいな鎧を脱ぎ、生身の人間として存在できる。だから僕はこの場が大好きなのである。

 しかししかし、どんなに怒鳴っても試合結果は変わらず(その辺も人生に似ている)0対1の敗北を期すが、敗北っていってもホーム&アウェーの2試合制だから前半90分が終わったってことだ。全然平気! 11日のさいスタで、この不条理を晴らしてやろうじゃないか。

 3対0で、浦和レッズの勝利。そしてチャンピオンへ! 僕には未来が見えた。 

12月3日(金)


 なんだか知らないうちにストレスが溜まっていたようで、ため息ばかりついているのを浜田に指摘される。ならばと帰りに本屋さんへ寄ってストレス解消。散々仕事で本屋さんに行っているのに、何をしているんだかだが、でもほんと本屋さんで棚を眺め、気にいった本を抜いていくとすーっと体が軽くなるのだから仕方ない。

買った本は以下の5冊。

『クロニカ』粕谷知世著(新潮社)

ーー同著者の『アマゾニア』(中央公論新社)が5つ★級の面白さだったのであわてて振り返り買い。『WEB本の雑誌』の「過去の新刊めったくたガイド」で調べたら、大森さんが4つ★つけていた。『アマゾニア』も誰か取り上げてくれないかな…。

『大いなる山、大いなる谷』志水哲也(白山書房)

ーー先週読了した『山の仕事、山の暮らし』高桑信一著(つり人社)でインタビューされていたひとり。若手アルピニストの第一人者で、かなり独創的な行動をしているらしく興味をもつ。

知性溢れる大人になるための3冊はこれ。
『クック 太平洋探検』1巻、2巻(岩波文庫)
『ふるさとの生活』宮本常一著(講談社学術文庫)

ーー30歳を過ぎて、岩波と学術文庫に恋してしまった。いやー良い本の山だ、と社内で呟いてみたが、全員に無視される。どうせ僕は雑草です…。

★   ★   ★


 帰りの電車で珍しく座れたのでそれらの本をパラパラしていたところ、岩波に投げ込みされている新刊案内で『はたらく若者たち』後藤正治著(岩波現代文庫)で出直されたのを発見。おお、これを読みたかったんだとあわてて途中乗り換え駅で下車し、購入。

 うーだからこそ、この投げ込みの案内を本の雑誌社でも作ろうと今夏に企画し、浜本からも了解をもらっていたのだ。しかし結局できずに半年も過ぎてしまった。深く反省!

12月2日(木)

 大きな荷物が届き、何だ?何だ?とあわてて開封したところ、なんと『書店風雲録』の台湾版ではないか。いやービックリ! 出版してすぐ引き合いがあって了承したのは覚えていたのだが、まさか本当にこうやって本になるとは。そういえば数日前に浜本がどうなったか電話していたな。いやはやしかしカッコイイ本になっていて、うれしい限り。中身を確認すると当然漢字(?)だらけで、固有名詞以外読めやしない。でもでもうれしい。

 というわけで早速ジュンク堂書店池袋店に向かい、著者の田口さんにお渡しする。すると田口さんも「これはすごい」と興奮気味に本を手に取り「家宝にします」と大喜び。自著が海を渡り、そして違う言葉で書かれ読まれる。まさに『翻訳文学ブックカフェ』の世界なのだが、目の前でそれが起こるとは。いやはや本当にうれしい。

「弟子にしてくれって台湾の書店員さんが来たりして」とか「ジュンク堂が台湾にお店を出したら田口さんが店長ですね」なんて軽口を叩きつつ、大いに盛り上がる。

 その盛り上がりのなか、何気なく文芸書の平台を見ると、『アマゾニア』粕谷知世著(中央公論新社)に手書きのPOPが立っているではないか!! この『アマゾニア』、僕が今一番気に入っている本なのだが、身近に読んでいる人がいなくて、感想を話すこともできず、悶々としていたところなのだ。

 興奮して誰が書かれたんですか?と問うと、目の前にいるKさんで「面白いですよね」とこちらはこちらで盛り上がる。Kさんから「なかなか売れないんですけど、でもわたしはこれを本屋大賞で推薦します」との力強い言葉をいただく。

 うー、ピアノは弾けなくてもいいから、僕はしっかり本を推薦できる頭と言葉が欲しい。それができればこの場でこの『アマゾニア』の面白さをバリバリ書くのだけれど、いやはや能力不足で何も書けず、是非店頭で手にとって見て下さいとしか言えないのがツライ。

 その後も順調に営業を続け、何だか嬉しいことの多い日だなと思いつつ会社に戻ったが、1本の電話で地獄に堕ちる。

 大好きな書店員さん、銀座A書店のOさんが間もなく退職されてしまうというのだ。Oさんには公私ともにお世話になっていて、思わず電話口で「嫌だーーーーー」と叫びたいほどのショック。今は、まだ、この気持ちを言葉にできない。

12月1日(水)


 昨年ナビスコカップを制したときは「リーグで勝たなきゃ」と鹿島サポや磐田サポの書店員さんに言われ、ならばリーグを!と気合いを入れて今年に望み、目標通りステージ制覇。これで一件落着かと思ったのだがそうではなく、今週末にはファーストステージの覇者と闘うチャンピオンシップが控えており、それを制したら次は先週さいたまスタジアムのゴール裏に描かれた『GO TO ASIA』があるわけだ。

 まるでドラゴンボールかキン肉マンのようだが、こりゃサッカーバカにはたまらない。浦和レッズとともに中国とか韓国とかはたまたイランやサウジに行くなんて、考えただけでもワクワクしてしまう。勝ちましょう! 浦和レッズ。

 というわけで、そのまず第1歩チャンピオンシップのことを考えると仕事どころではなくなってしまうので、しばし頭から封印していたのだが、神田のB書店を初訪問に近いかたちで営業に向かうと、なんと担当のSさんが僕のレッズバカぶりをご存知だったらしく(ってDMで毎回書いていればバレますね)、営業話を終えたところで「うちにもいるんですよ」とYさんをご紹介していただく。

 互いにおめでとうございますとヘンな挨拶で始まりつつ、お話を伺うとなんとYさん、うちの町内の隣町、しかもずーっとその辺の住んでいるとかで生粋の浦和者。いやはや僕のような春日部から移住組と違ってイイですねぇと羨ましがってしまったが、近いうちにまたレッズ話で盛り上がりましょうと約束し、お店を後にする。わたくし正直に申しますがレッズのおかげで結構仕事が捗っております。浦和レッズよ、ほんとにありがとう。

 その後訪れたお店では、なんと180坪のお店で、前日の売上が480万円なんてビックリな話を伺い腰を抜かしてしまう。坪2万6千円? 未だにそんな店が存在するのかと店内を見つめるとお客さんでいっぱい。うーん、こういう数字を聞くと、ついお店の大きさで部数を考えてしまう悪い癖を反省する。

 そして最後が深夜+1の浅沼さんを訪問。給料日明けなので売上に貢献しようと財布を出すと、イイ本ありますぜと『七王国の玉座』ジョージ・R.R. マーティン 著(早川書房)を差し出される。面白いのはわかっています、ということで他の文庫3冊とあわせて購入したらなんと8000円越え。ありゃとあわてて『七王国~』を裏返したらこれ1冊2940円、その向こうで浅沼さんはニンマリ。何だかしてやられた気分だったが、これで数ヶ月が胸を張ってお店を訪問できるってもんだ。

 それからこの『WEB本の雑誌』の「恋愛小説談話室」でシンさんの書き込みによって出版を知った『日の出食堂の青春』はるき悦巳著(双葉文庫)も購入し、電車のなかで即読。『じゃりン子チエ』ファンなのでこの著者のマンガを読めるだけでうれしいのだが、僕の大好きな屈折した青春ものでいやはやたまらない。「じーん」と胸をふるわせつつ、会社に戻る。

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