WEB本の雑誌

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5月31日(火)


 すぐさま直納に向かいたかったが、午前中は雨。

 午後太陽が出てピッカリ晴れたので、満を持して助っ人と二手に別れ、直納。有楽町の三省堂さんを訪問すると担当者さんから「わざわざ、ありがとうございます」とのねぎらいの言葉をかけられ、苦労もぶっ飛ぶ。

 最近、妻から一段と激しい緊縮財政を言い渡されており、金遣いに厳しくなっている自分の懐から考えると、本を1冊買って頂けることがとてつもない大変なことだとわかる。だからこそ、こうやって直納してみて、当初納品した10冊が、平台でぽっこり穴を開けて2冊とかになっている姿をみると、ほんとにほんとに感動してしまう。何だか涙が出そうになったので、あわててお店を後にした。

 本が売れるってのは、やっぱりうれしいっすね。

5月30日(月)


 朝から雨。気合いでチャリンコに乗り駅に辿り着くが、なぜか駅前が大勢の人でごったかえしているではないか? なになに? 我らが日本一最弱な電車武蔵野線が、信号機故障やらで南越谷ー西船橋間で運転見合わせ? ということは僕は大丈夫ってことか? ところがどっこい南越谷で折り返し運転がそううまく行くわけもなく、それで多くの人がホームに入れず溢れているというわけだ。

 くはー、だったらこんな雨のなか無理してチャリンコ乗って、出社しなくても良かったわけか…と後悔していたら、逆行きの電車がやってきたので、あわててホームに駆け込み、乗車。時間は1.5倍かかるが、こうなったら東川口経由埼玉高速鉄道(南北線)で出社してやろう。ちょうど読み続けたい本『猿猴 川に死す』森下雨村著(平凡社)もカバンのなかにあるし。

 ところが赤羽岩淵で本来乗るべき埼京線に乗り換えれば良かったものの、座れたのと雨のなか歩くのを億劫がって四ッ谷まで行ってしまったら、なんとなんと総武線も何かがあって止まっているではないか。会社に行くなってことか?

 それでもどうにかこうにか出社したのに、誰にもこの必死さが伝わらないのが悲しいところ。でもでも搬入1週間も経っていない期待の新刊『清原なつの忘れ物BOX』(全2巻)の注文が、バタバタ飛び込みだし、大喜び。電話の向こうで「うわーもう1冊しかないんですよ~」なんて言われるとすぐさま直納したくなるのだが、この雨では本が傷んでしまう。仕方ない。明日直納部隊を作って、ガーンといくぞ!

5月29日(日) 炎のストライカー日誌 2005.01

「見る」だけでなく「やる」のも好きなサッカーは、現在も月2回程度のペースで続けている。

 特に今年は凄まじいまでの絶好調ぶりで、相当数のゴールを決めており、日本代表の得点不足解消には絶対必要な人材だと自称しているのだが、ジーコには伝わっていないらしい。相も変わらず固唾を飲んで見守る「代表メンバー発表日」に名前が読み上げられたことがなく、結論、やはりジーコはダメ監督だ。

 それでも日本代表を諦めずに続けているサッカーだが、本日は11人メンバーが集まらなかったためフットサル。おまけにDFが誰ひとり参加しなかったから、母親のお腹のなかにいたときからFWだった僕が、DFに回される緊急事態。

 えっ? マジ? ほんと下手なんだよ、守るの。なんて呟いてみたのだが、キャプテン森川の指名を断ると今後の試合日程が届かなくなるので、仕方なくポジションにつく。

 で、なんでこんなにDFが下手なのか自分なりに考えてみたのだが、思い当たることがあった。それは中学校時代のサッカー部のことで、あの頃、校内暴力とか『BE-BOP-HIGHSCOOL』とか不良文化の影響をモロに受けてしまった僕らの中学校は、サッカー部の先輩が5人も6人もパンチパーマに鬼剃りを入れていたのである。

 見ただけで怖いそんな先輩に、止せばいいのに、1対1の練習中、思いきりスライディングカットしてしまった僕は、そのまま部室に連れてかれ、ここではとても書けない仕打ちをされて、それ以来DFが嫌いになったというわけだ。いやー、やっぱり何事にも原因があるんだ。

 なんてブツブツ呟いていたら早速ワキを抜かれ、1点計上。キャプテン森川から「おめー、何やってんだぁ!」と怒鳴られ、思わず頭に来てロングパスを通したら今度は森川のトラップミスでせっかくお膳立てしたゴールチャンスが無になってしまった。「テメーこそ、何やってんだぁ!」

 ジーコがみたら大喜びするほどの自己主張の固まりの僕らのチームは、決してまとまることがないけれど、でもでもこうやって好き勝手叫びながらボールを蹴って、そしてたまに勝つとほんとにうれしいんだな、これが。

 結局この日はトラウマを抱えたDFが抜かれまくって敗北してしまったのだが、それでもやっぱり身体を動かすのは気持ちいい。あと10年。息子と試合に出られる日まで、とにかく続けるぞ! そしてジーコよ、呼び出し、待ってるぞぉ!!! 先輩の呼び出しは二度とイヤだけどね。

5月28日(土) 炎のサッカー日誌 2005.05

 1時過ぎ。そろそろスタジアムに向かおうかと思ったら、その足に娘がしがみつく。
「パパ、行っちゃダメ! サッカーより私と遊んで」と澄んだ瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。く~。こんなこと、妻にだって言われたことがないぜ。

 しかし、娘よ。お前の父親はちょっと普通の父親とは違うのだ。何せサッカーバカ、そしてレッズバカ。そこでサッカーが行われているなら、その場に向かい、大声で怒鳴らなければ生きていけないのだ。

 トリャー!としがみつく娘を引きはがし、すでに諦めている妻に渡し、チャリに飛び乗る。その背後で「うらわれっずなんて,だ~いきらいっ!」の叫び声が響き渡るが、娘よ、間違っているぞ。浦和レッズが悪いのではない、浦和レッズに愛を捧げた父親が悪いのだ。

 そんなこんなで辿り着いた駒場スタジアム。敵は男の夢を叶えておきながら決して楽しそうでないオーナーを持つヴィッセル神戸。野球同様こちらもチームが混乱しているようで、あってはならない監督人事に明け暮れている。

 こんなチームに負けてちゃいかんよと気合いを入れて応援するが、プレスも弱く間延びしたラインのなか、やっとゴール前に辿り着いても、相手GKに好セーブに阻まれ、なかなか点が入らない。

 しかし前回のこの日誌で書いたとおりスタジアムの雰囲気が試合を変えると信じ、後半はほとんど止まらぬコールを続ける。それでもゴールを奪えず、センターラインに掲げられたのは2分のロスタイム表示。

ウラ~ワレッズ、ウラ~ワレッズ、プライド・オブ・ウラワレッズ!

 浦和のプライドって何だ?
 どんなときでも諦めないってことだろ!

 そう思ってレプリカユニフォームのエンブレムを掴んだら、長谷部から信じられないパスが交代出場の岡野に通り、岡野はそれをダイレクトでセンターリングをあげ、エメルソンがヘディングしたボールがゴールネットを揺らした。

 地鳴りのような歓喜の声が駒場スタジアムを震わせる。たはー劇的過ぎる!!I 観戦仲間と抱き合い、そしてハイタッチをしていると、なんと62歳の我が父親が興奮して泣いているではないか! その奥で65歳の我が母親が、観戦仲間のNさんと抱き合っていた!

 娘よ、この喜びを知ったら、人生楽しくなるぞ~。
 いつかお前がくることを、父ちゃんはスタジアムで待ってるぜぃ!

5月27日(金)


 10代の頃。例えば目の前でおじさんが酒を飲んでダジャレをいっていたらどんな思いで見つめていただろうか? 「くだらねー」か「早く帰りてー」だっただろうか。

 それが10数年も経つと、実はそのおじさんのダジャレは、実は照れ隠しであって、その奥にもっともっと深い何かがあるのだと分かる。それは何か? うまく言葉で言い表せないし、格好悪いけど、やっぱり「人生」ってものかもしれない。

 おじさんの笑い声の奥に、決して表情には出さない仕事の苦労があるだろうし、あるいは家族の悩みがあるかもしれない。しかしそういったものを表に出さず、自分を道化にしてその場を盛り上げているのだ。それは言ってしまえば生きるプロってことなのかも。

 若い頃だったら「あんな大人には絶対なりたくない」と思ったであろう人が、今では目指すべき目標になっている。不思議だけど、そのくだらないギャグに腹を抱えて笑いながら、僕は「こんな大人」になりたいと思った。そしてこういう出会いがある「営業」という仕事を愛しく感じた。

5月26日(木)

 高田馬場、池袋、大塚、上野と営業。

 すっかり遅くなってしまったので直帰しようと会社に連絡。特記事項なしとのことで、京浜東北線に乗り込み、帰宅の路へ。

 ところが列車が川口に着いたところで、閃きを感じ思わず下車。
 S書店のコミック担当Kさんにお会いしたくなったのだ。ついでに『清原なつの忘れ物BOX』の感想を聞いてこようと。

 しかしKさんは不在で残念無念。それでも、なんかフットワークの軽さに自分自身はちょっと満足。

5月25日(水)

 助っ人のNさんと二人で神保町S書店さんへ『千利休』を30冊直納。400頁を越えるこの本、なんと1冊で650グラムあるのだ。おお! 二人で18キロ。しかし荷物を作った浜田の微妙な割り振りが気になる。僕16冊、Nさん14冊。「女の子だからねー」というなら、20冊と10冊でわければ良いのに、そんなに僕は頼りないのか?

 その後は、水道橋の山下書店さんを訪問。ここは周囲の環境にあった品揃えをする独特なお店で、野球、格闘技、競馬が3本柱といった感じか。東京ドームや後楽園ホールなどで、その日行われるイベントに沿った店頭平台の展開をいつも楽しみに覗いている。

 本日その平台にはプロ野球交流戦のパンフレット(http://www.npb.or.jp/information/2005interleague_program.html)が多面積みされていた。おおこんなものが出ていたのかと、O店長さんに話題を振ると「いやー大人買いが多くてうれしいっす」との返事。えっ?!

 なんとこの交流戦のパンフレット、12球団別々に作られているそうで、同封されているトレーディングカードもチームごとに違うそうなのだ。ということは全部欲しいプロ野球ファンも多いわけで、その方々が12冊まとめて(1冊1000円)大人買いしていくという。しかも試合をやっている球場でもホームチームのパンフレットを売っているだけのようで、全12球団揃って売っているところはほとんどないみたい。

 いやはや「無茶苦茶おいしいじゃないっすか?」なんてバカ丸出しの銭勘定をしてみたが、O店長さん曰くドームで開催される試合自体は減っていて、特に昨年のこの時期は巨人VS阪神戦があったから、それと比べると弱いとか。恐るべし、山下書店。

 しかしこのお店の恐ろしいところはこれだけでなく、なんと高額の(定価7350円)『ユニフォーム物語』綱島理友:著綿谷寛:絵(ベースボール・マガジン社 ) をすでに数十冊売っているというではないか。

 いやこの本、確かに素晴らしい本で、かつては野球バカだった僕も一瞬欲しいと思ったが、その値段に負けてそっと置いてしまった経緯がある。うう、やはりO店長さんが話す「趣味のもので、しっかりしたものを作ればきちんと売れる」というのは本当なんだな。

 ちなみに12球団別々パンフレットで一番売れているのはどこか? それは福岡ソフトバンクホークスと北海道日本ハムファイターズだそうです。遠いから

5月24日(火)

 渋谷を営業。

 ブックファーストを訪問するが林さんの姿はなく、淋しい限り。いや当然といえば当然で林さんは3月から産休を取っており、つい先日無事女の子を出産されたところなのだ。いやはや、ふーふーいいながら棚差しされていたあのお腹から、赤ちゃんが出てきたかと思うと感慨深い。

 しかし怒濤の育児で参っているかと思いきや、しっかり自分のお店に客注を出しているようで、一安心。そしてYさんやHさんら同僚の方々が林さんの穴を埋めようとしっかり働いている姿を眺め、思わず胸が熱くなってしまう。復帰にはまだしばらくかかるでしょうが、「その日」をお待ちしております。そしてまた『新・カウンターの向こうから』を連載してください。

 その後は渋谷の各店に顔を出しつつ(坊主頭をさらけ出し)、青山ブックセンター本店へ。担当のYさんから、いまだにお客さんから「あらやっていたのね」と言われることがあると聞き、ビックリ。

 そうか…。出版業界では昨年夏の青山ブックセンターの閉店、再オープンは大ニュースとなり、いまもここ本店と六本木店、広尾店(屋号が変わりましたが)が開いているのは誰でも知っている事実だが、一般のお客さんには「閉まった」ということだけがニュースになってしまい、その後の再オープンという報が届いていないのか。六本木店は路面店だから分かりやすいが、ここ青山本店は奥まっているだけに、足を運ばない限り気づきづらい。

 再オープンしたから一件落着なんて考えていた僕の甘さが嫌になる。そんな簡単なことじゃないんだな。そしてそのハンデを取り戻そうと、Yさんや他の方々が必死になって、いろいろなイベントも開催しているとのこと。興味のある方は、是非、青山ブックセンターさんのホームページをご確認下さい。
(http://www.aoyamabc.co.jp/)

5月23日(月)

 待望の『清原なつの忘れ物BOX』の搬入。

 熱いのか冷たいのかイマイチわからない編集担当の荒木が「清原さんの過去の作品をずっと読んでいるのですが、マジで凄いです。忘れ物BOXを読んで興味を持ってくれた若い読者が、清原さんの過去の作品へ遡及してその凄さを『発見』する一助になれるなんていい仕事に関わらせてもらったと思います。」とメールを送ってくるほどの作品なので、今後の動きが楽しみ。

★   ★   ★

 しかしここ数年5月は何か悪いことが起こる月で、特に昨年は妻の長期入院と赤ちゃんの問題で、ボロボロになるほどのヒドイ出来事があった。だから今年は謙虚に、それこそ営業中に見つけた神社にお参りなんてのをしていたのだが、結果は一緒だった。公私でいうと、今度は公の方でぐったりする問題が起き、いやはや……。

 月曜日になると毎週、顧問の目黒が遠い目をして「人生、普通が一番。こうやって健康に暮らせるだけ感謝しよう」と呟いているのだが、本当にそのとおりだと実感する。

 それでも昨年は、家族一丸となってあの苦境を乗り越えたのだから、今度もどうにか乗り越えてみせよう。そういやいつもアホなことばっかり言っている兄貴が、あのとき泣きながら電話した僕に言ってくれたっけ。「越えられない試練は与えられない by どっかの神さま」って。それを信じて頑張るべ。

5月21日(土) 炎のサッカー日誌 2005.04

 スタジアムの雰囲気が勝敗を左右する。

 例えば昨年のナビスコカップ決勝のFC東京戦。我が浦和レッズは前年の覇者であり、3年連続の決勝進出を果たしていた。そのせいか、この日国立競技場のレッズサポーターの間には、どこかのんびりした空気が漂っていた。そして結果は、周知のとおりPK負けであった。

 それから今期のセレッソ大阪戦。この前節のFC東京戦で素晴らしい勝利を納めていたので、何となくサポーターもこのまま勝っていけるのではないか、なんて不思議な自信が渦巻いていた。結果は今期ワーストと言われるほどの最低の試合であった。

 逆に良い意味でその雰囲気が勝利をもたらしたのが名古屋戦。試合前のゴール裏には勝利を切望する熱気というか狂気が、まるで炎のように立ち上がっていた。試合は圧倒的なゲームコントロールで勝利!

 このようにしてやはりサポーターの想いとピッチの結果は間違いなく連動しているのである。だからサポーターは緊張感を持って、勝たせるための応援をする必要があるのだ。

 しかし、それを毎回継続させるのは、選手と一緒でなかなか難しい。何せこちらも人間だから体調不良のときもあれば、つい集中を切らししまうこともある。それにはゴール裏だけでなくスタジアム全体の雰囲気も大切だ。例えばこの日のアルビレックス新潟戦なんて、なぜかリーグだと5万人を越えるのに、ナビスコカップでは、さいたまスタジアムは空席が目立つ3万人。これでは約半分が空席であり、ガラガラのスタジアムに慣れていない僕らには、緊張感を保つのが難しい状況だった。

 ところが、試合開始前にコールリーダーがハンドマイクを持って怒鳴った一言で、一気にボルテージがあがる。

「随分空いているけど、邪魔な奴がいないと思えばいいじゃねーか」

 くはー、カッコイイ…。そういえば我が愛読書『狂熱のシーズン』ティム・バークス著(白水社)で、ヴェローナFCのサポーターが、試合の1週間くらい前から、相手が一番凹むコールを考えているって書いてあったっけ。今回は敵でなく、味方をネガティブからポジティブへ一気に鼓舞する叫びだったけれど、ほんとたった1発の言葉でサポーターは目の色を変えた。

 そして一気に火のついたゴール裏は、まるでひとつの生き物のように、歌い、叫び、飛び跳ねた。その気持ちは選手にも当然乗りうつり、前半早々エメルソンのゴールが決まる。その後も(前半は)美しいポゼッションサッカーが展開され、最終的には2対1の勝利であった。その結果もやはりこの日のスタジアムを現していたのではないか。

 すなわち、WE ARE REDS!ってことだ。

5月20日(金)

 午前中、飯田橋の深夜+1に『千利休』を直納しに行くと、店長の浅沼さんが「今年のベスト1を見つけたよ」と興奮しているではないか。その本とは『タフの方舟 1 禍つ星』 ジョージ・R・R・マーティン著(早川文庫)で「物語っていうのがどういうものか、とにかく面白いから読んでくれ」と得意の押し売り、もとい強力推薦。

「それは素直に買いますが、僕の推薦本も聞いて下さい」と現在猛烈にハマっている高野秀行さんの著作すべて、特に『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)を大プッシュ。絶対平積みにしてくれ!とつばを飛ばしつつ、もう2冊、小路幸也著『HEARTBEAT』(東京創元社)と横山秀夫著『ルパンの消息』(カッパノベスル・光文社) も推薦。ってどうして僕、他社本だとこんなに押しが強くなれるんでしょうか?

 おまけに今日なんて『タフの方舟』と取り寄せをお願いしていた『ツアンポー峡谷の謎』F・キングドン・ウォード著(岩波文庫)を買っているうちに、すっかりいい気になってしまい、自社本の営業をしないまま、お店を後にしてしまったではないか。

 アホ! アホ! アホ! この坊主頭を誰か叩いてくれ~。

5月19日(木)

 5周年を間近に控え、当ホームページ『WEB本の雑誌』のリニューアル会議。

 会議が始まったときには「ワンサイト、ワンキラーコンテンツ」なんて言葉が飛び出していたので、これは無尽蔵に広げてきたコンテンツの大幅削減かと思いきや、それぞれ考えてきた企画を話しているウチにどれも面白そうで「それやろうよ!」との声が会議室に響きわたる。

 それにしても5年前と今ではネットを巡る環境がまったく変わってきており、最近はこのようなオフィシャルなHPより、ブログやミクシィが中心になりつつあるような気がする。

 そうなると果たして告知以外のコンテンツを提供することに意味があるのだろうか? なんてことを考えてしまうし、例えば原稿依頼をしようと思って調べていると、すでにご自身でブログを立ち上げられていたりして、そうなると今更頼むのもおかしいかなんて考えてしまったりする。果たして他の会社のHP担当者は、この辺のことをどのように考えているのだろうか?

 まあ、とにかく9月(目標)のリニューアルをお楽しみに!

5月18日(水)


 とあるお店のコミック売場で『清原なつの忘れ物BOX』の営業。

 実はこのお店には何度か足を運んでいたのだが、その都度運悪く担当者さんがお休みで、お会いすることが出来ずにいたのだ。この日はやっと出勤日に訪問することができ、そして清原さんの本の注文を無事いただくこともできた。

 そのとき前に訪問した際に置いて来ていた名刺を覚えてくれていたのか、「何度も来て頂いていたようで、申し訳ございませんでした」と声をかけていただいた。

 うー。なんだか思いきり感動してしまった。
 そしてこういう気づかいと言葉がかけられるような人間に自分もなりたいと思った。
 ありがとうございました、Nさん。

5月17日(火)

 『清原なつの忘れ物BOX』の見本を持って取次店廻り。搬入は23日になるので、その2,3日後に書店さんに並ぶのではなかろうか。※地域によって差が出ると思われますがお許しください。

 今回もキレイな装丁に仕上がり、触るのが恐ろしい。いやはや取り扱い注意。袋から細心の注意を払い、取次店担当者さんにお渡しする。N社さんでは、その担当者さんの後ろに初々しい新入社員が張り付き、仕事を教わっていた。うーん、うちも欲しいな、新入社員。社長いかがですか?

 御茶ノ水、飯田橋、市ヶ谷と廻り見本出し終了。この見本出しの日は、毎回僕にとってひとつの区切りの日であり、唯一営業がひと段落つける日である。

 市ヶ谷の釣り堀を眺めつつ、ぼんやり太陽反射する水面をしばらく見つめていた。

5月16日(月)

 待望の新刊『清原なつの忘れ物BOX』の事前注文〆切日。うう、今回は本当に苦労した。前にも書いたが、やはりジャンルが違えばまったく新規の営業をしているのと一緒なのだ。いろんなジャンルの本を出している出版社の営業マンは相当大変だ。というか僕が今までいかに甘えた環境にいたか実感している今日この頃。

 夜になって、全ての注文データと短冊の付け合わせ。間違いがないかチェックしつつ、助っ人学生のS君に話しかける。

「月にどれくらい本を買う?」
「えっ買うのですか?」

 妙に買うという言葉を強調したので、「何だよ買うのですかって?」と突っ込むと、こんな答えが返って来るではないか。

「いや~、まず読みたい本があったら、図書館に行きます。そこにあれば借りて読みますし、なければ古本屋さんを廻ります。安く見つけたときは飛び上がっちゃうほどウレシイっす。でそれでもなければ本屋さんに行きますね。もちろん単行本は買えないんで、文庫専門ですけど」

 ちなみにS君は自宅通いの大学4年生。几帳面さは現在の助っ人の中で図抜けている。

「ここに自由にできるお金が1万円あったとします。まず僕は絵が趣味なので、その道具に毎月5千円くらいかかるんです。残りが5000円ですね。CDを2、3枚借りて、そのなかでどうしても持っておきたいというものを買います。3~4千円かかりますね。残りが本に回すお金ですから、単行本は買えませんよね。文庫、2,3冊。まあ両親が本が大好きなんで、家に転がっているのを読めば済むんですが」

 そうかそうなのかぁ…。何だか今自分が手に持っている注文短冊の重みが、急に増した気がした。

 この業界に入ってすぐ、先輩から「俺たちは生活必需品を売っているんじゃなくて、嗜好品を売っているんだ、だから売れるのが当然なんて思うなよ」と言われたことを思いだす。しかもS君なような人から見たら、単行本なんてもう高級品を売っているのとほとんど変わらない意識を持たないといけないってことか。1冊の本に、1500円、2000円を出してもらうということはそういうことなんだ。

 そういえば最近売れているのは低価格の本が多く、500円本が書店さんの平台を占領していたりするし、500円DVDがバカ売れしていって店頭で話を聞いたのは先週のことだ。気づいてみたら本も低価格化しているようなんだけど、どうだろうか?

 いや、そんなことはさておき、とにかく単行本1冊売るってのは、本当に本当に大変なことなのだ。S君の言葉で深く実感する。うー、頑張るべ。

5月13日(金)

 尊敬する営業マンであり、またサッカーバカ仲間でもあるL社のNさんに誘われ、A書店さんとの飲み会へ。ところがその書店さん、2軒とも僕の営業ルートに入っておらず、顔を出せていないお店だったのだ。いやはや厚かましいとはこのことだ。冷や汗ものでご挨拶し、今後の訪問をお約束。

 しかしこうやって酒の場から始まる付き合いは面白い。この日も店長さんと話していたら、同じ年なのが判明し、そこからはその時代に音楽の話で大いに盛り上がる。言ってみればいきなり懐に飛び込んでから仕事ができるわけで、(まあだからといって仕事がうまくいくとは限らないのだが)もし普通に営業していて、それだけここまで話を聞き出そうとしたら、2、3年かかってしまうのではなかろうか。Nさん、誘って頂いてありがとうございました。

 20代前半で営業マンになり、そのとき上司や先輩の接待を主にした仕事のやり方が、僕は大嫌いだった。昼間はほとんど仕事をせず、CMじゃないけれど、みんな5時くらいから元気になり出し、今日は大阪の支店長、明日は仙台の所長が来るなんて、新宿に飛び出していき明け方まで接待していた。

 そんなインチキくさい仕事の仕方ではなく、昼働けよというのがその頃の僕の考えで、ならば文句だけでなく実践しなくてはと、日中必死になって働いていたが、やはり上司や先輩に勝てず、悔しい想いをしていた。

 ところがそれから約10年も経ち、あることに気づく。接待という言葉がなんとなく嫌らしいだけで、実はそうやって酒の力でも借りてコミニケーションを取らないとなかなか人というのはうち解けないものだ。これは僕の独断と偏見なのだけど、特に男性はそうそう日中の仕事中には本心を出してしゃべったりしないから、なかなか深い話もできなかったりする。

 だからといって突然、夜な夜な酒を飲んで仕事をするタイプになれるわけではないのだが、最近は少しずつそんな場に顔を出し、いろんな人に会うようにしている。

 そしてもうひとつ気づいたのは、僕自身が昼間は自分をさらけ出さずに仕事をしているってことだ。ある意味営業マンを演じている部分があって、実はそれが書店員さんとの距離を作っていたりするのではなかろうか。しかし問題は、自分をさらけ出したときに、いったい何人の人が相手をしてくれるかってことか? うーん、難しい。

5月12日(木)

 出版案内が8割方出来上がる。あとは印刷に回して、新刊に投げこむだけ。1年以上前から作りたいと考えていたのだが、随分と時間がかかってしまった。ようは自分に出来ないことは。できる人に任せろってことか。うれしいような悲しいような。

 打ち合わせ、の隙間を縫って営業。とある書店さんを訪問し、担当者さんとお話していたらポケットから飛び出している赤い携帯ストラップが目に付く。思わず同志かと思ったが、よくみるとくすんだ小豆色に「ANTLERS」の文字。チッ!

 しかし、つい話を振ると、何々? 関西の支店にいたときも、大阪から日帰りで鹿島に通っていたって? ワオ! ある意味同志!! サッカーバカ発見!! うう、Sさん、今度ゆっくり語り合いましょう。出版業界サッカーバカ飲み会なんてのが、たまに開催されますので、ぜひぜひ、どうぞ。

5月11日(水)


 新しい仕事が降りかかりそうになり、それを引き受けたらパンクしますねと断ったのだが、すでにパンクしている気がする…。

 思い出してみると入社数年は本当に営業のことだけやっていれば良かったのだが、いつの間にか営業に、単行本の企画に、ホームページに、本屋大賞にととんでもないことになっているではないか。

 仕事も出来ないのに好奇心ばかり強い僕の性質と、自分の仕事だけで手一杯な他の社員の組み合わせが、功を奏し、じゃなくて悪魔の組み合わせになってしまったのだろう。まあ、他の会社に勤めていたとしても、何年かすると仕事が多種多様になっていくのは当然なのだがろうが、そうなったときには部下がいたりして仕事の分担が出来たりするのだろう。

 ううっ、誰かいれてくれ~。
 できれば部下より上司希望と会社の中心で叫んでみるが、まだ9時前で誰も出社していなかった。

 とりあえず「進行中の仕事」というノートを作って、足したり消したりしていってるのだが、とにもかくにも最優先は当然営業活動で、なぜなら本の雑誌社はパターン配本を一切使わない注文制の出版社だから、廻らなくては本は並ばず=食えない、という事態になってしまうのだ。

 これが普通の出版社なら…と思うのだが、そうはいっても最近は、パターン配本なんて名ばかりで、中小出版社はきちんと事前注文を取って、新刊時に短冊を提出しないと配本してもらえないんだから同じことか。たぶんその消えてしまったパターン配本の代わりに出版社は本部への営業を増やしているのだと思うのだが、それはそれでうまく本部と売場とかみ合わないと、返品が増えるだけだったりして難しい。

 営業方法をいろいろと考えてみるのだが、やっぱり僕は担当者と顔を合わせて仕事をするのが一番好きだし、ベターな気がする。

 なんてことを悩みつつ、聖蹟桜ヶ丘のときわ書房さんを訪問したら、その売場のパワーに圧倒され、しばし呆然。すごい…、どうしてこんなお店が出来るの?

 担当のTさんに話を伺うが、いやはやTさん。僕、入社当時からの付き合いだと思うんですけど、ここ数年のこの爆発的な成長って何なんでしょうか? 正直、仕事のレベル、付いていくのがやっとです。思わず驚きというか、尊敬です。

 もし今、どこか地方から書店員さんが来て、どこか見るべき書店はありますか? と聞かれたら、僕は間違いなくこのときわ書房聖蹟桜ヶ丘店を挙げるだろう。それは何も茶木さんを知っているからでなく、それくらい素晴らしい工夫とノウハウが、そして本への愛情がこのお店には詰まっているからだ。百聞は一見にしかず、覗いてみて欲しい。

 Tさんのパワーに圧倒されつつ、棚陰で思わず負けるもんかと呟く。
 仕事が多いなんて愚痴をいっている場合じゃない!

5月10日(火)


 GWボケのリハビリもなく、バリバリ営業スイッチオン!

 まずは直納を3軒。地元笹塚・紀伊國屋書店さんへ『笹塚日記 うたた寝篇』を、神保町・書泉グランデさんに『千利休』を、そして御茶ノ水・茗渓堂さんには本日出来上がったばかりの『本の雑誌』6月号を納品する。直納は重くて大変だけど、売れている実感がもてて、本当に楽しい。

 そんななか書泉グランデさんで、顔見知りの営業マンとすれ違い、思わず「良い本出してますね」と声をかける。その出版社、テーマ性があって、センスの良い写真集を出版されていて、いつも棚で見かける度に「良いなぁ」と手にとっていたのだ。しかもいくつかの書店さんで売れ行きも良いと聞いていたのだ。

 するとその営業マンはありがとうございますと礼を述べつつ「ほんと企画会議が丸一日かかることもしょっちゅうなんです。でももちろん売るのも大変ですからこうやって細かく回ってます」と話された。そこには、商品に対する自信が溢れており、しかも営業としての誇りである、売る事への熱意も感じられ、こちらも思わず元気にさせられてしまった。

 その後は大手町に移動し、丸ノ内線を営業。大手町のY書店さんは駅のコンコースの隙間に、棚を10数本並べた超ちびっ子本屋さんなのだが、こういうお店の工夫話は本当に面白い。

「サラリーマンが多いんで時代小説は当然売れるんです。でも文庫の棚が2本しかなくて、どこまで入れるかの選択が難しいですよね。今は司馬遼太郎、藤沢周平、池波正太郎と棚に差してますけど、もちろん山本周五郎も並べたいんですよ。でも入れるためには、どれかを外さなきゃいけなくて、でも外すものもないんですよ」

 そういえば、いつだか「本の雑誌」で書店員さんの座談会をやったとき、「入荷には意志がないけど返品には意志がある」なんて発言があったっけ。それはパターン配本でやってくる新刊本は、取次や出版社の思惑で勝手にやってくるが、それを返品する際は、自分の意志でどれを返すか選ぶってことだ。

 その話と同様で小さなお店は、たった1冊の本を置くか置かないかで相当悩み考えるもの。それは当然で、1冊1冊、売れる売れないかが当日の売上にシビアに響くわけで、常に真剣勝負なのである。その工夫と気持ちが棚から伝わってくるからこそ、こういうお店を回るのが楽しい。

 やっぱり営業は面白い!

5月9日(月)

 10連休かと思いきや、6日は出社で6連休、3連休のぶつ切りゴールデンウィーク。まあ4ヶ月の赤ん坊を抱えてどこにいけるわけでもなく、その9日間にしたことはレッズの応援2日(1日は天国、もう1日は地獄)、浮き球△ベース1日、大型ショッピングセンタージャスコで2日、実家の春日部に帰郷して1日、その他は家の近所のガキ達と4歳の娘とともに遊ぶのみ。

 しかも登園拒否していた娘が「パパが丸坊主にしたら幼稚園に行く」と訳のわからない条件を出したもんだから、思わず気合いで丸坊主にしてしまった。しかしこの丸坊主が娘と椎名編集長以外にはとても不評で、営業で向かった書店さんでは「押し売りか? ゴムひもはいらん!」と逃げられ、社内では誰も口をきいてくれなくなってしまったではないか。

 髪を切って分かったことのひとつ。僕、営業には向いていない顔らしい…。
 娘が幼稚園に通い出したから良いんだけど。

 本日からは通常仕事なのだが、キーボードはうまく打てないし、電話も思わず「杉江です」と出そうになるし、営業でも目を合わせてもらえないし(頭とそり込みを見つめられる)でいやはや本調子に戻るまで何日かかるのやら。

 しかし今月の新刊『清原なつの忘れ物BOX』の事前注文の〆切が近づいており、営業は追い込み状態なのだ。「くはー」と頭を叩いたらペチンと音がした。

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