WEB本の雑誌

1月31日(火)

 今さらなんだけど、日誌というのは恐ろしい。この間、原稿を書いてアップし一安心したのに、すでに翌週の月曜日。追われるというよりは、襲われている感じか。そしてもっと恐ろしいのは、手帳を見つつ、数日前のことを思い出そうと思うのだが、ほとんと忘却の彼方にすっ飛んでしまっているということだ。

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 常磐線を営業。
 
 北千住のK書店さんで『白夜光』東野圭吾著(集英社文庫)を品出しされているMさんに声をかけると「週末の度に爆発的に売れていきます」との返事。当然といえば当然なのだが、直木賞よりテレビドラマの影響が強いのだ。

 『博士の愛した数式』小川洋子著(新潮文庫)も映画化に合わせて文庫化され、新潮社史上最速100万部突破とか。うーむ。本屋大賞も負けてしまったが、しかしテレビや広告であれだけ「第1回本屋大賞受賞作品」と紹介していただけるのは非常にありがたい。

 しかしそうはいっても売れるか売れないかはドラマや映画の作りによるとのことで、映像化即売れ行きUPとはいかないそうだ。果たして間もなく文庫化&映画化される『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン著(角川書店)がどうなるか楽しみ。そして文庫ではほとんど聞いたことのない責任販売制がどうなるかも楽しみ。

 その後は松戸のR書店さんや柏のW書店さんなどで本屋大賞話。ノミネート作品に対してそれぞれ賛否両論あるものの、こうやって年に一度ああだこうだ言えるのが楽しいよね、とのこと。ぜひ楽しんで下さい!

1月30日(月)

 2月の新刊『姿三四郎と富田常雄』の営業が佳境。
 委託のパターン配本を一切やっていない本の雑誌社では、書店さんの注文=部数なわけで、とにかく訪問して注文を集めない限り、商売にならない。

『姿三四郎と富田常雄』

 よく考えてみたらすごい本だ。なにせ一番有名だった『姿三四郎』もすでに新刊書店では手に入らず(オンデマンド出版のみ)、その著者・富田常雄さんの著作だってほとんど棚にないのである。そういう作家の評伝を営業するのだから、これは大変だ。しかも今のところ書店員さんで『姿三四郎』を読んだことがあるという人に出会っておらず、唯一ただひとり映画を見たという人を見つけただけ。

 こういう本を営業しろと言われたら、まあ普通、ふてくされて荒川、江戸川、多摩川土手愛好会に入ってしまいそうなものの、今回はゲラを読んでその面白さに感動しているため、まったく苦にならない。しかも珍しく営業トークというか本の紹介を真剣にしている(せざるえず)そうなると自分の存在価値がハッキリする。ハッキリするから怖いけど、それくらい追い込まれないとこのダラダラ人間はきちんと仕事をしないのだ。

 そうやってひとり盛り上がって営業に勤しみ、会社に戻ると、編集の藤原がぼそぼそ呟いている。

「ああ、『姿三四郎と富田常雄』が売れなかったら僕のせいだな。原稿も良いし、写真も良いし、資料も良いし、装丁も良いし」

 まあ、売れる売れないを気にするのは非常に良いことだけど、編集者があまりそこを気にしすぎるのもどうかと思うし、良いか悪いか判断するのは編集者じゃなく読者だし、売れた売れないの数字の判断もそれぞれだし、そんな焦るな藤原よ。

「本作るのって難しいっすね。」

 うーん、FC東京サポじゃなかったら、焼肉でも奢ってやったんだけどなぁ。

1月27日(金)

 書店店頭で『自遊人』3月号を発見。

 この神保町特集号には、編集長・椎名さんの浮き球&釣り仲間であるNさんから脅迫の末、書かされた神保町新刊書店紹介の原稿が載っているのだ。あわてて確認すると「日本一神保町に詳しい」との文字。うう。サボる場所には確かに日本一詳しいが…。

 原稿依頼といえば、我が愛するサッカー本出版社白水社から、まさに僕にとって最高のテーマである「サッカー本ワールドカップ」という依頼があり、ただいま本屋大賞ノミネート作を横目に、サッカー本ばかり読んでいる。

 未読本の中から超面白サッカー本を発見し思わず後悔の声をあげ、既読本には唸り声をあげ、新刊(なんと昨年のサッカー本大賞授賞出版社えい出版から『欧州サッカースタジアムガイド』なんて素晴らしい本が出た)わお!と跳びはね、まるで浦和のゴール裏にいるときのように忙しい。いやはやこれはまだ一行も書いてないけれど、傑作原稿になること間違いなし! 掲載は「出版ダイジェスト」3月10日号の予定。

 そうはいっても、本業である営業をおろそかにしたら会社は潰れてしまうわけで(これは僕の能力に関係なく、営業がひとりしかいないため)、日中はいつも以上に張り切って書店さんを駆けずり廻る。ううん、やっぱりこれが一番楽しい!

1月26日(木)

 本の雑誌チーム(浜本&松村&助っ人多数)は『本の雑誌』3月号の下版で声をかけられるような状況でなく、また孤独な単行本編集(藤原)も『姿三四郎と富田常雄』がそろそろ大詰めで徹夜ヒゲづらで訳がわからん言葉を発し出す。

 そんな夕方6時過ぎ、浜本が藤原の耳元でコソコソ話しかける。

「お前さ、昼飯ちょっと遅かったよね?」
「ハイ。3時頃食いました」
「じゃあさ、夜ご飯は遅めだよね」
「ハイ、9時前かと」
「じゃあさじゃあさ、俺は今からおやつを食べるから夜ご飯は一緒に大吉でいい?」
「了解です! 今日は何にしようかなぁ。大盛りみそ煮込みうどんとファミマのおにぎりかな」
「ちょっと出かけてきます」

 しばらくして戻ってきた浜本の手には、ささ家の太巻きと唐揚げがあった。
「ねえねえ、藤原。唐揚げ1個あげるよ。こっちの大きいの」
「ウワ~、うれしい。ありがとうございます」

 歴代、本の雑誌社員及び助っ人は間違いなく浜本が食べ物を人にあげるところを見たことがないだろう。私も勤続9年にして初めての経験である。しかも大きい方を渡したぞ!

「ああ、おいしいなぁ。夜、ご飯何食べようかなぁ。藤原どうする?」

1月25日(水)

 直行で川越。
 川越は浦和より風が冷たい気がするが、街自体は大きいと思う。そのせいか午前中からK書店さん、B書店さんともお客さんが入っていて活気がある。地元にこれだけの書店があったら幸せだろう。B書店のOさんは「平日も休日もそんなに差がなくなりました」と話されるが、それはたぶん勤務先のある東京で買わず、ここまで帰って購入する人が増えているからではなかろうか。

 僕はサッカー場に通い易いということだけで今の場所(東浦和)に住んでいるけど、やっぱり良い本屋さんがあるというのは重要なことだったのではなかろうか。買う買わずに関係なく、僕にとって本屋は癒しの場であり、刺激を受ける場でもあるし、会社の帰りに地元の駅にたどり着いて、そこで本屋さんでワンクッション入れられたらなんて幸せなことだ。できればそこに新古書でなく、古本屋さんもあったらいいな。ああ、東浦和。

 その後は、大宮、さいたま新都心、浦和、川口と営業。この沿線及び周辺はただいまショッピングモールが乱立し、今や平日と休日の人の流れは完全に違う。しかしさすがに乱立し過ぎ(どうしてジャスコはこんな狭い区域にこれだけ出店するんだろうか?)そろそろ過当競争の時を迎えるのではないか。そういうなかで紀伊國屋書店さんが入っているさいたま新都心のショッピングモールは駅近くであり、両方の条件を手に入れている珍しいケース。本日のように平日昼間に訪問しても結構混んでいるのだ。

 うーん、ショッピングモールだけでなく、大宮駅のように駅中もあったりするし、もちろんネットもあるわけで、いったいこれからモノはどこで売れていくんだろうか。

1月24日(火)

 渋谷を営業。

 ブックファーストさんを訪問すると何だか妙に混んでいる。そういえば前回来たときもレジに列が出来ていて、店員さんに声をかけられなかったんだっけ。ムムム。それに何だか年配の人が多くなったような気がするな。やっぱり大盛堂さんと旭屋さんが閉店になった影響が出ているんだろうか?

 なんてことを店員のHさんに確認したら、やはりそのとおりだそうで「このお店いつ出来たの?」なんて聞かれることもあるそうだ。これは別の売り場の人に聞いたのだが、岩波の新刊を発売日に買いに来られるようなお客さまも多くなり、いやはや旭屋さんや大盛堂さんにはこういうお客さまが付いていたのかと感心されていた。こうやってお店はその姿を変えていくのかな?

 確かブックファーストさんが出来たときに、意識していたと思われるのがリブロ渋谷店(当時はパルコブックセンターだったか?)。そのリブロ渋谷は、尖ったお店から普通のお店に変更しようとし、そして今また尖ったお店に戻ってきていると思われる。

 しかし戻ったといっても、かつてとは違った尖り方であり、その変化こそ90年代と00年代の違いなんじゃなかろうか?なんて訳知り顔で書いているけど、具体的にどうって書けないのが僕の頭の悪いところだ。

 その尖ったリブロでは、売上ベスト2位に『子供と昔話』なんて雑誌が入っていて、何ですか?これはとのけ反ったところ、小沢健二のお父さんが編集されている雑誌だそうで、そこに小沢健二が小説を連載しているとか。うーん、いろんな意味ですごいな。

 新宿に戻り昨日はお休みだったブックファースト新宿ルミネ1店さんを訪問すると、向こうから歩いてきた店員さんがどこかで見かけたことのある顔で、うーん、これは別のお店でお世話になっていて、こちらで会うのは初めて? それとも書店とは別のところで会ったことがあるのかな? なんて悩んでいると向こうも曖昧な笑顔で見つめてくるではないか。あわててネームプレイトを確認すると、おおおおお! お前は昔うちでアルバイトしていたIでははないか!!

「やっと書店員になれました。いつか挨拶しようと思っていたんですけど」なんて。おいおい冷たいじゃないか早く言ってくれよ。とにかく、こういう再会は無茶苦茶うれしいので、今度飲みに行く約束をする。

 そういえばミクシィで元助っ人のイケッキーが「覚えてますでしょうか?」なんてかなり遠慮したメールを送ってきたけど、野嶋君の代から後の助っ人よ、みんなちゃんと覚えてるよ。たまには近況連絡してね!

1月23日(月)

 もう3回目でだいぶ慣れてきたけれど、本屋大賞が動き出すと、精神のバランスがあやうくなる。プレッシャーというか、なんというか。今年もどうにか頑張って乗り切るしかない。しっかしどうしてこんなこと始めちゃったんだろう…なんて。

 ノミネート作品を発表するといろんな人からいろんなことを言われる。

 特に多いのは「Aが入っているのが納得いかない。でもBが入っていて良かったけど」なんてことなんだが、実はその数分前「どうしてBなんて作品は入ってるの? Aは当然だけど」なんて他の人が言っていたりする。

本というものはそういうものなんだろう。

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 新宿を営業。

 紀伊國屋書店新宿南店さんを訪問すると、入り口脇に面陳された『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)に手書きPOPが立てられていた。

 何気なく読み出したら、いやはや、すごい。この気持ちのこもったこのPOPを読むためだけに、このお店に行っても良いかも、なんて思ってしまうほどの感動だ。ここまで来たらPOP自体が作品になっているといっても良いのではなかろうか。作品として100万部売れることも嬉しかろうが、こういうPOPが立てられることも嬉しいだろう。リリーさんは幸せだ。

 その後は、詩や短歌の担当Sさんとお話。
 文芸書の売り場のなかでは減らされる一方のジャンルで、Sさん自身も担当替えのときは、ちょっと地味かもと想っていたそうだ。しかし、これがやってみたら面白いのなんのと話される。

「もうほんと可愛いんですよ、1冊1冊の本が。手に取られるのを待っているっていう感じで、新刊に追われる文芸書と違いますよね。それで私自身も詩を読み出したら良い作品いっぱいあって、それをPOPに書いたら、ちょっとづつ売れてる感じで。1冊売れるのがとてもうれしいです」

 そうか…。このお店が人気があるのは、『東京タワー』についていたPOPもそうだけど、店員さんたちの素直な本への愛情がこうやって売り場に現れ、それがお客さんに伝わっているからなんだろう。

 それにこうやって売ってもらえる本は、なんて幸せなんだろう。部数はもちろん大切だけど、藤原よ、俺たちも書店員さんが売って幸せな気持ちになれる本をつくろうぜ!

 すっかり落ちこんでいた気分も晴れ渡り、何だか嬉しい気分でお店を後にする。残念だったのはSさんオススメの詩集を買い忘れたことだが、それは次の訪問で紹介してもらおうっと。詩集…似合わないかな。

1月20日(金)

 ついに「2006年 本屋大賞」のノミネート作品が発表。(http://www.hontai.or.jp/)

 遊び心と勢いで始めた企画もついに3回目を迎えました。これだけ続けば立派なものなのではないでしょうか? ってもっとしっかり続けられるよう実行委員会をNPO化したりして、3年どころか10年、20年の継続を目指して頑張ります。

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 ここまで集計等大変でしたが、これからはこれらを全部読まなきゃならない書店員さんが大変なわけで、もちろん僕も全部読みますので、頑張ってください。

 出版社の皆様もいろいろご協力をお願いすることがあるかと思いますが、ぜひお祭りを盛り上げるため、よろしくお願いします。

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 それにしてもやっぱりこの時期は書店員になりたくなるなぁ。投票権がないのが非常に悔しいっ!

1月19日(木)

 今年の入ってどうもやる気が起きないので、かつて出版業界に入った頃、胸を熱くさせて読んだマンガ『編集王』土田世紀(小学館)を会社に持ってきた。そして残業の合間に読み出したら「ウウ」「オエ」「ヒー」とすぐさま涙があふれ出し、「俺も営業王目指してまっ白になるまで頑張るぜ」なんてまるで小学生のようにその気になってしまった。なんて単純な奴なのだ。

 するとその様子を隣で見つめていた助っ人・本池彩が「そんなに面白いんですか? 貸して下さい」と言ってきた。果たしてこの男臭い熱いマンガを19歳の女子学生がわかってくれるんだろうか? でもまあ俺はもうやる気が出たから充分だ。途中まで読んでいたのを閉じ、全巻持って行かせたのである。

 その本池が本日3日ぶりに出社。こちらが「どうだった?」と聞く前に「良かったです。泣いちゃいました。このなかに出てくる営業マンカッコイイです」なんて興奮気味に話し出す。そうだろ、そうだろ、そうなんだよ。俺はその営業マンを目指しているんだよ。

「でも杉江さん、これ全巻じゃないですよ」

 えっ?! 実家にあるの全部持ってきたんだからそんなことはないだろう。リアルタイムで読んで全部買った、と思うよ。

 ところが、あわててネット書店でデータを確認すると、なんとその後5巻も出ており全11巻ではなく全16巻ではないか。「途中で終わっていてショックでした」と本池はいじけてしまうし、浜田には「まるで目黒さん」と呆れられる始末。うーん、いつの間にか無くしてしまったのか、それとも途中で仕事が忙しくなって買い忘れていたんだろうか。

 とりあえず同じく興味を示していた春から出版社に就職する助っ人タテノに「研修だ!」と11巻までを渡し、後日で代金を払う代わりに続きを買って来てもらうことにした。

 果たしてタテノは泣くか? 来週は『編集王』飲みじゃ!

1月18日(水)

 ヤバイ!というよりはコワイ。
 うう、これは営業に出たくない、つうか出られない…。

 というのは本屋大賞ノミネート作品のことで、これ、発表は20日になっているけど、一応すでに集計は終わっていて、決まっていたりするわけだ。

 そのことを察知している書店さんを訪問すると「何よ? 何よ? どれよ?」なんて迫られ、思わずタジタジになってしまう。注文をちらつかされてもワタクシ動じませんが、サッカーのチケットをひらりなんてされると思わず言ってしまいそうになるのだ。

 しかしこればっかりはいくらいつもお世話になっている書店員さんとはいえ教えるわけにはいかない。実行委員一同守秘義務契約を結んでおり、それを破ると解任されてしまうのだ。(ほんとか?)長居は危険と、ザリガニのようにお尻から出ていくのであった。

 ところが本日は文庫コンペをやっている「千葉酒飲み書店員」の新年会で、いやはやここで松戸R書店のTさんや船橋A書店のIさんやHさんに囲まれ「まさか教えないわけないわよね~」なんてガンガン酒をつがれてしまった。

 皆さん、それだけ本屋大賞に本気なんですね。良かった良かった、ってそういうことじゃない? じゃあ、またもや自社本、しかもここ10回のうち9作品も自社本を選ぶ直木賞って素敵。本屋大賞も頑張りましょう!ってそんなことでもない? うう、早く帰ろう。

1月17日(火)

 当『WEB本の雑誌』の連載「U-50」の取材のため永江朗さんと千駄木の往来堂さんへ。小さな書店さんの取材といったらこのお店を外すわけには行かないだろう。ついに今回ご登場願うことになったのである。

 その往来堂2代目店長・笈入さんとは、その前に働かれていたA書店さん時代からお世話になっているのだが、その転職の話しを聞かされたとき、ビックリし、そして負けた!と感じたを思い出す。笈入さんとは、ほぼ同年代で、この人生のジャンプ力。僕にはその決断力もなければ、実行力もないだろう。

 あれから約6年の月日が経ち、本日その辺の話しも永江さんとともに伺ってきたのであるが、やっぱり負けてるなと痛切に感じ、かなりブルーになって冷たい風の吹き込む地下鉄のホームに立っていた。どうしたら強くなれるんだろうか?

1月16日(月)

 先週金曜日が第3回目を迎えた本屋大賞の一次投票〆切日になっており、この日の出社はその結果を知ることになる運命の出社であった。

 いやノミネート作品が何になるかという以前に、実は先週の水曜日時点でたいして投票数が集まっておらず、これはついに3年目で尻すぼみになってしまのか? なんて心配していたのである。

 でも確か去年もこんな感じで、これはたぶん、いや絶対、書店員さんが真剣に考え、期限ギリギリまで読んで投票になっているんだろうと信じ開き直ったのが木曜日。その木曜日(〆切前日)になんと90人の投票があり、これで昨年と並び一安心。果たして最終日にどこまで伸びるんだろうか?と期待しつつ帰宅したのが先週末。

 さて週が明けて本日。
 システム担当者から投票に参加した書店員さんの人数が届く。
 なんと去年より100人近く増えているではないかぁ!!!
 くぅーおー!!!
 皆様ありがとうございます!!!

 ということで、その票の集計にかかったのであった。
 2006年、本屋大賞ノミネート作品発表は1月20日金曜日(たぶん夕方)です。

1月13日(金)

 編集部員・大盛り藤原の歓迎会を兼ねた新年会。いや逆にしておかないとまずいのだ。新年会を兼ねた歓迎会を水道道路の上海料理・鍋家で開催する。

 まったく入社して半年も経っているんだし、俺だって松村だって歓迎会なんてなかったんだからもう良いじゃないかと思うんだけど、大盛り藤原はことあるごとに「いつになったらぼくの歓迎会やってくれるんですか?」と言うので、仕方なく新年会を兼ねて歓迎してやったのである。

 で、ならばということで顧問・目黒に声をかけると「忙しいんだけどなぁ」なんて嫌みを言いつつ、誰よりも早くお店に向かっているのには笑ってしまった。

 はたして大盛り藤原は、その名の通り麻婆豆腐、豆苗炒め、クウシンサイ炒め、唐揚げ、肉団子、餃子、シュウマイ、チャーハン、牛肉煮込み麺と食うに食うわ、そのおこぼれをこちらもすさまじい勢いで食う顧問・目黒。そしてお腹がいっぱいになったら子供ように早く帰りたがるのはどうかと思いますよ。

 嗚呼! 本の雑誌社の2006年は相変わらずこんな変な人達に囲まれて仕事をしなければいけないのかと、帰りの埼京線で涙を流したのであった。

 そうそう大盛り藤原は食うだけでなく、飲む男であり、酔う男でもあった。最悪っ!

1月12日(木)

 神保町のS書店さんを訪問し、年末年始の売れ行きなどを伺う。

「毎年うちのお店の一年間の売れ行きベスト10みたいなものを並べるんですけど、例年はまあお祭りというか飾りみたいなイメージだったんですよ。それが今年はそこから結構売れちゃって。特に河出さんの「三大宗教」(『常識として知っておきたい世界の三大宗教』『常識として知っておきたい日本の三大宗教』ともにKAWADE夢文庫)なんか、再度平台で展開しています」

 売れ出すと長いという最近の流れがそういう結果を生むのだろう、が売れる本の値段が下がっているのは気になるところ。

「そうなんですよね、新書とか文庫とかになっちゃって客単価は下がってるかも」と話される。

 たぶん本の世界にも二極分化が進んでいて、それは売れる売れないの差が激しくなっているのと値段の問題に顕著に現れていると思う。単行本から文庫化のスピードは速くなる一方だし、その文庫や新書への参入もかつては考えられないような出版社が声をあげている。文庫はすでに器として機能せず、値下げの方法のひとつになっているだろう。

 もし僕が本の雑誌社でなく、そこそこ点数のある(出す)出版社にいたら、1500円とかの定価設定はしないだろう。1000円以下か2000円以上。そうなればおのずと作る本も変わってくるわけで、もはや「そこそこ」という考えは、通用しないのではないか。

 うーん、あと数年もしたらいきなり文庫という流れも出てくるんじゃないかと思うけど、これがしっかり考えられた結果ならともかく目先の数字を追っただけのものだとしたら、それは自分の首を自分で絞めているようなものにならないか心配だ。えっ? もうそうなってるのかな。

1月11日(水)

 大手町ではやっぱり塩野七生の“ローマ人の物語”シリーズが売れるそうで、暮れに出た『キリストの勝利』(新潮社)が調子が良いとのこと。平日だけの売上をみると本店を越えたりするそうで、もしかしたらこの辺の層に向けてもっと出版社は本を作った方がいいのかも。

 他でも最近は定年後の暮らしを考える本や2007年問題の本も調子が良いらしく、いわゆる段階の世代の人は、何かを知るために始めに選択するのは「本」や「雑誌」の可能性が高いと思われるので、ここは大きなマーケットなんだろう。『本の雑誌』もそろそろ活字を大きくした方がって、作ってる本人が読めなくなっているのは怖い。

 その後は銀座をちょろっと回って六本木へ。
 青山ブックセンターを訪問し、店長のIさんにご挨拶。Iさんは「俺ももう歳だからみんなと同じように荷物運んだりするのがつらくなってきたね」と弱音を吐かれるが、いやいや現場が大好きなまさに職人書店員のIさんにはいつまでも第一線にいて欲しい。

 青山ブックセンターも、すでにクラッシュ&リ・オープンから一年半近くが過ぎており、もう余裕ですか?と聞いてみたら、そんな簡単なことではないらしく、あの2ヶ月間閉めていたときに離れてしまったお客さんを取り戻すのは大変なことらしい。「それに閉店前に戻っただけじゃダメなんだよね。もっと上を目指さないとさ」とのことで、Iさん含め青山ブックセンターの皆さんの戦いはまだまだ続いているのである。

1月10日(火)

 なぜか突然暖かくなって、町には随分と人が出てきたようだ。新刊もポツポツ出だしたし、これでやっと年末年始が終わり、通常に戻ったということだろう。

 まずは渋谷B書店さんを訪問し、本屋大賞実行委員会で作るフリーペーパー「LOVE書店」の配布を仕入れのTさんにお願いする。ついでにTさんはFC東京サポなのでサッカー話で盛り上がる。しかし盛り上がっているのは自分だけで、妙に冷たい視線を感じるのは大量補強のせいか。そのまま2階の文芸フロアに向かうが、レジに人が並んでいたので邪魔にならないようにと5階のコミック売り場を先に訪問。

 すると『のだめカンタービレ』の展開されている棚にPOPが立っていて「限定版の予約受付は終了しました」の文字。えっ! 限定版? こんなに売れているコミックに、わざわざ限定版を作るの?

 担当のSさんに質問すると「最近多いんですよ」と他のおまけ付きコミックも教えていただくが、どちらも人気コミックだったりして、そうなのかコミックは今それが普通なのか。そのうち文芸書もこういうものが出てくるんじゃないかと思ったけれど、よほどキャラ勝負の話しじゃないとダメか。作家のファンというも減っているから難しいかもな。

 ああ、それにしてもこの『のだめ』も『ハチミツとクローバー』もこのSさんや山下書店新宿店にいた永嶋さんが「自腹S」なんて応援団を作って販促していたんだよなあ。それが今や大ベストセラーでいやはや感慨深い。

 そのSさんからは「コミックに新規参入されて成功した本の雑誌社にはとても期待してますので、今年も良いコミック出してくださいね」と言われ、思わず赤面。コミック部編集長浜本茂様、頑張ってください! 僕も期待してます。

 その後は京王線を営業。下高井戸の啓文堂さんでは文庫コーナーで『人間動物園』連城三紀彦著(双葉文庫) が、手書きPOPと共に大きく展開されていた。今や普通になりつつあるこういう店頭風景も、4、5年前は珍しかったわけで、「自腹’S」も含め、売り場もどんどん変わっていくんだな。

1月6日(金)

 豪雪で被害が出ている地域がたくさんあるというのに、こんなことを書くのも気が引けるけどいやはや今年は本当に寒い。今まで冬は、靴下2枚重ねに股引、それから手袋にコートという考え得る限りの防備で凌いで来たが、今年はそれではとても対応できない。本日も思わずお店に入ってガタガタ震えてしまい声が出なかった。しかしさすがにフェイスマスクをするわけにもいかず、うう、どうしたら良いんだろうか。しかも埼玉は東京よりも確実に2、3度は低く、駅からの自宅までの自転車は命がけだ。

 寒さのせいか、それともまだお休みなのか、何だか書店さんも空いている印象を受ける。年末にあまり大きな新刊が出なかったとかで売上もイマイチだったようで、ちょっとよろしくない雰囲気。今年はハリポタが出るしなんて言いたいところだけど、それは本の雑誌社には関係ないわけで、地味ながら非常に面白い2月の新刊『姿三四郎と富田常雄』よしだまさし著の営業に勤しむ。

 こうやって事前にゲラを読んで面白かった新刊は、部数に関係なくとても胸を張って営業が出来るもので、とてもうれしい。それにしても戦中の紙の配給の時代に、位の一番に増刷されていた『姿三四郎』とその著者の作品が今ではほとんど新刊で手に入らないとは恐ろしい。うーん…。

1月5日(木)

 明けましておめでとうございます。
 本年も『本の雑誌』及び単行本、それから『WEB本の雑誌』とこの「炎の営業日誌」をよろしくお願いします。

 さて今年の目標は何だろうか。立ててもあまり意味がないのだが、目標がないと走れない。ならばなんだ? うーん、転職か…。
 
 相変わらず学生と間違われるような童顔なのだが、これが今年の夏には転職ボーダー年齢といわれる35歳を迎えるわけで、そろそろ今後の人生について真剣に考えた方がいいのではないか、なんて考えている。

 今の仕事は死ぬほど好きで、『本の雑誌』も愛しているのだが、相変わらず会社になじめないのと、義母と子供二人を養っていくにはツラスギル待遇。妻のため息も聞き飽きてしまった。好きなことをするのも大事だが、家族の笑顔はもっと大事だ。

 大好きな佐野元春の『ガラスのジェネレーション』の歌詞「つまらない大人にはなりたくない」をシャウトしつつ10代後半から生きてきたのだが、35歳の今、生きるのに精一杯で、つまらないか楽しいかなんてよく分からなくなってしまった。たぶん、今後も生きるのに精一杯なんだろうが、仕方ない。

 そうは書きつつ、とりあえず年始なので仕事の目標を立てる。

<営業>は、初心に返る。この仕事を10年以上も続けていると妙な先入観を持ってしまったり、小手先で数字合わせをしてしまうのだが、やはり営業という仕事は、商品を中心に人と人が出会う仕事であり、その出会いから新しいアイデアが生まれるべきだと思っている。そういう意味でも多くの書店さん、そして多くの書店員さんに出会いたい。出張も行こう!

<WEB本の雑誌>リニューアルも落ちついたが、まだこれは途中であり、この4月には大がかりなシステムを持った新たな交流の場所がオープン。そちらがしっかり盛り上がるようにすることと、この「炎の営業日誌」も3ヶ月に1本くらい面白いことを書こう。いや書けるようになりたい。

<本屋大賞>今年で第3回目を迎える本屋大賞をとにかく成功させること。3回目が大事ですよなんて言われることもあるのだが、1回目だって2回目だってそういわれてきたのだ。そういうプレッシャーよりも、あって当然だと思われる方がかなりプレッシャーで、そもそもこんな続くものだと思っていなかったというか、1、2回やって終わりだと考えていたのだ。しかしここまで来たらトコトンやるしかないし、参加している書店員さんたちが真剣にそして楽しんで投票していただいているようなので、10年、20年の継続を目指してきっちりやっていきたい。

 ※書店員の皆様、一次投票の〆切は13日です。一年間の思いをぶつけてください! 読者の皆様も楽しみにしていますよ。それからフリーペーパーの申し込みも間もなく終了です。是非「本屋大賞」と本屋さんを盛り上げるため店頭で配布してください。

 細かい目標はノートに記す。そう転職するにしても仕事が出来ないことにはどうにもならないので、とにかく今、この場で頑張るしかない。

 そんなことを考えていたら浦和レッズに黒部光昭と相馬崇人の移籍が決定したとの報。うう、何だかスゴイことになってきたな浦和レッズ。俺もついでに獲ってくれ~。

1月1日 元日 炎のサッカー日誌 2006.01

 Jリーグが始まる前、僕にとって、サッカー観戦といえばダイヤモンドサッカーと高校サッカーと天皇杯、それにワールドカップの夜中の中継に、友だちがいつもチケットをくれたトヨタカップとキリンカップか? サッカー観戦は少し距離のあるところにあった。

 それがJリーグが始まり、我らが埼玉にチームができ、気づいたら年間シートを購入し、ホーム毎試合を観戦するのはもちろん、アウェーにも出動していた。そしていつの間にかその街に引っ越していた。サッカーはすぐそこに、そう僕の生活の一部になった。

 浦和レッズは弱かった。ビックリするくらい弱かった。そう、つい最近まで、僕はレッズ戦を苦行と言っていたのだ。罵声怒号がスタジアムを埋め尽くし、喜怒哀楽でいえば「怒怒怒怒怒哀」と書きたくなるような展開だった。試合後はため息ばかり、自転車に乗れば悔しさがよみがえり涙を流していた。

 それが、あの頃夢に見ていた元日の国立だ。

 浦和レッズのゴール裏は、試合開始1時間以上前から通路まで人で埋め尽くされた。しかしかつてのナビスコカップ初ファイナル進出のときのような浮ついた興奮はなく、誰もが当然のようにこの場に立っていた。ここ数年の成績を見ればもう強豪といってもいいだろう。もはや僕らは勝つことを信じ、90分後には高々とトロフィーを掲げていることがわかっていた。まさに勝者のメンタリティーだ。

 元日、国立。コールリーダーの第1声から、優勝決定後約1時間に渡る国立ジャックまで延々とゴール裏には歌が響き渡った。そのコールは、そのまま浦和の街まで手渡され、その夜、居酒屋「力」の前ではビールかけ、プラワポイントの前では発煙筒とロケット花火が打ち鳴らされていた。

 優勝が当たり前…になりつつある浦和レッズを作ったのは、間違いなく僕らだ。
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