WEB本の雑誌

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3月31日(金)

 朝、埼京線沿線で火事があったらしく、電車はチョロッと走っては止まるの繰り返し。別に早く行かなきゃいけない理由はないので遅刻するのは構わないのだが、いつも以上の混雑で『絶海にあらず(上)』北方謙三著(中央公論新社)が開けないのがツライ。海を愛する作家が、海を愛した歴史的人物・藤原純友を描いた本書。面白い! 面白すぎる。『火怨』や『炎立つ』にはまった人には絶対のオススメだぁ!と叫びたいが、満員電車でページがめくれない。

 昨日、取次店さん廻りを終えたため本日は一日中社内で本屋大賞発表会関連の仕事。が、発表会の用意はほとんど事務の浜田が仕切っており、言われるがままに仕事をする。こういうのは楽でいい。

 5時頃。なぜか猛烈に焼肉が食いたくなる。助っ人のアマノッチにそのことを呟くと「俺も今朝から食いたかったんですよ」と同調してくる。するとなぜか食い物の話なると耳がダンボになる編集の大盛り藤原が近寄ってきて「なんですか? なんですか? 焼肉を食いに行くんですか? そういえば牛角祭りってありませんでしたっけ? 僕電話してみます」と、いきなりHPで牛角を検索し、カスタマーセンターに電話し出す。

「あっ? 祭りじゃないんですか? 牛角の日ですか。で、それは今日じゃないんですか? あっそうですか」。

 しかしもう僕も藤原も助っ人一同全員が猛烈に焼肉を食いたくなってしまっており、もはや祭りだろうが、そうじゃなかろうが、カルビ480円が290円になろうがなるまいが、焼肉を食うことを胃袋が決定していた。

終業時間の6時を待って会社を飛び出し、笹塚駅高架下の焼肉屋へ向かったのである。

 いやービックリした。肉を焼きだしてすぐ藤原はもちろん、助っ人のテッペイとスズキセンパイが大盛りご飯を頼んだのは仕方ないとしても、それをペロリと平らげた後、スズキセンパイは2人前はある石焼きビビンバを僕らには一口もくれずにあっさり食いやがった。いやそんなことで驚いていられなかったのだ。なんとテッペイは大盛りご飯を2度おかわりし(都合3杯食った)、それでももの足りなそうな顔をしてメニューを眺めていた。大盛り藤原はたったいっぱいの大盛りで満足していたぞ。情けない奴だ。

 最初は僕と藤原で奢ろうかと考えていたが、これだけ食われるとさすがにその気も失せ、割り勘で会計。いやー、若いってすごい。

3月30日(木)

 9時に出社。
 通勤本は『絶海にあらず(上)』北方謙三著(中央公論新社)。
 もしかしてもしかして、この本は瀬戸内の『火怨』かも…。まだ上巻の途中だけど、胸が熱くなって仕方ない。藤原純友なんて教科書で海賊のように書かれていたイメージしかなかったのだが、いやはやカッコイイ。ああ仕事なんてやってらないぞ。

 しかしそうはいかない。本日はできたてホヤホヤの『本屋大賞2006』の見本を持って、取次店さん廻りをしないとならないのだ。これさえ終われば、あとは4月5日の発表会に集中できる。さあ、もうひと踏ん張り。

 御茶ノ水、飯田橋の取次店さんを廻り、昼飯は深夜+1浅沼さん推薦のラーメン屋、神楽坂・黒兵衛にて味噌ラーメン。うまい!

 その後は都営三田線に乗って志村坂上へ。なぜかレッズサポだらけの取次店K社さんを訪れるが、サポ仲間はおらず、鹿島サポの仕入れ担当者さんに見本を渡す。これにて一件落着。

 川沿いの道を歩いて北赤羽駅に向かうと土手沿いに満開の桜。思わず桜の木の下にあるベンチに座り、しばし休憩。桜と、橋を渡る車を眺めていると、何だか旅に出ているような気がしてきた。そういえば、去年も本屋大賞の見本を出し終えた後、ここでしばらくボーっとしていたのだ。

 風が冷たくなった頃、立ちあがり、会社に戻る。
 そのまま藤原に呼ばれて、企画会議。
 「そういえばお前の名前は藤原だな? 藤原家となんか繋がりがあるの?」と聞いたら、昨日の負けでよほど機嫌が悪いのか、完全に無視。

 本の雑誌社にいる藤原家の末裔は、純友同様向こう見ずで、「WEB本の雑誌」及び単行本の企画をドカドカ提出。少し考えが足りない部分があるような気がするけれど、それは僕も一緒。自分が面白いと思うなら、ヤレ! ヤレ! 好きにヤレ! と全部了解す。

 勢いに乗ったのと、桜の木の下の休憩で頭が柔らかくなったのか、こちらもいくつか企画を思いついたので、浜本に提出。こちらも一応全部OK。本屋大賞が終わっても忙しくなりそう。  

3月29日(水)

 午前中は『本屋大賞2006』の事前注文〆作業。これが大変なんだ。

 しかし実は今夜ナビスコカップの第1戦があり、それに参戦するため事務の浜田には内緒でスケジュールをこっそり半日早めに変更していたのだ。ムムム。どうにか予定通り終わりそう。〆作業を終えてサッカーに行けるなんて、最高じゃないか! しかも我らが浦和レッズ、例え日本代表に4人呼ばれていても、絶対FC東京なんかに負けない。

 昼前にどうにかメドがつく。

 そこに編集部の藤原が出社。

「杉江さん、僕も今日行きますからね!」と青と赤に塗られたFC東京のチケットホルダーを揺らす。アホ、バカ。今日サッカーあるの、秘密なんだよ!

 しかし時すでに遅し、地獄耳の浜田が「なぁ~に? なぁんだって?」と閻魔大王様よろしく藤原のチケットホルダーをむんずとつかむ。

「浦和レッズ VS FC東京? ナビスコカップ? 駒場スタジアムだと? もしかしてそのためにあたしは昨日残業をつき合わされたってことか?」

 もはやそこにいたのは独身女性ではなく、(ゴニョゴニョゴニョ)。
「どうしてうちの会社の男性社員は揃いも揃ってダメ男なのよ!」

 スンマセン。

 しかしダメ男はダメ男でも、僕は一応今までの直帰→サッカーのときも、それなりに働いていた。この日も昼に会社を飛び出し、営業してそれから駒場に向かったのだ。

 ところがすごい男が我が社にいたもんだ。12時に出社して、4時半に「全身の倦怠感」でバックれやがったのだ、藤原は。ハハハ。


炎のサッカー日誌 2006.04

 やはり僕は水曜日の試合が好きだ。日常のなかに突然舞い込む非日常。一緒に観戦しているNさんは「試合開始前になってこの湧いてくるように赤くなる水曜日のスタジアムが好きだ」ともらしていたが、そうこの日駒場スタジアムを埋めた1万6千人のサッカーバカは、藤原ほどではないにしてもどこかで何かを捨ててサッカーに想いをぶつけに来た人たちなのだ。そのサッカーバカ・エネルギーが水曜日のスタジアムのどこか牧歌的な雰囲気をつくるのだろう。

 そうはいっても本日の対戦相手は憎きFC東京。駒場でのFC東京戦といえば、我らが聖歌・福田コールをパクって、出島封鎖、カレーやらいろんなものが飛び交った伝説の試合以来、因縁の闘いである。

 しかしそのFC東京サポは、試合開始前に応援をボイコットしたのか、一斉に出島から消えた。そりゃここまで2勝2敗1分けの不甲斐ない成績なら仕方ないだろう。しかも本日の我が浦和レッズ、日本代表で4人欠き、山田と永井はケガ、おまけにGK都筑を休ませ、久しぶりの山岸を出す、まさにターンオーバー・浦和レッズBチーム。こんな暢気な対応をされたらそりゃ怒るだろう? あれ? その割りには試合が始まったらすっかり席に戻って応援してやがる。いったい何がやりたかったんだろう。

 さて浦和レッズBチーム。
 こうやって見るとアレックスや長谷部の上手さがよくわかる。ついでにやはりこのチームを支えているのはDFで、闘莉王の高さ、読み、強さはギドが言うとおりJリーグ屈指だし、その前で90分間休むことなくプレスをかける鈴木啓太は素晴らしい。

 前半は一進一退、0対0。
 後半開始早々、FC東京の両サイドから激しく攻められ、よもやの失点かという場面を3つも奇跡的に回避。すると闘莉王からワシントン、そしてBチームの期待の星、17歳エスクデロがゴール。その後も結構危ない展開だったが、終了間際にどんな境遇でも腐らない男・酒井がゴールを奪い、2対0の勝利。まさに精度の差が出た闘いだった。

 ワオ! 浦和レッズBチームも負けないぞ。

3月28日(火)

 郵便で届いた「週刊朝日」に何やら付箋が…。
 もしや発行人・浜本のケチぶりがスクープされたか?

 あわてて中を確認するとなんとなんと新刊の『姿三四郎と富田常雄』よしだまさし著の1ページ書影入りの大きな書評が掲載されているではないか! しかも「読書界の自由人の愛情が甦らせた作家」の見出しの元、文芸評論家・縄田一男さんが「快著誕生を心から喜ぶ」と素晴らしい誉めよう。ありがとうございます。

 実は前日の産経新聞の書評欄でも作家の森詠さんが「こうした目利きの愛情あふれる著者に再発掘された富田常雄は幸せな作家である」とこちらもとても読み応えのある書評で紹介してくださり、いやはやこれは出版社冥利に尽きる。

 営業マンがこんなことをいうと嘘っぱちに聞こえるだろうが、ほんとにほんとに『姿三四郎と富田常雄』は面白い! そして自信を持ってオススメできる本なので、ぜひどうぞ!

3月27日(月)

 いつもどおり9時に出社。

 通勤読書は本誌3月号で椎名さんが紹介していた『アマゾン源流生活』高野潤著(平凡社)。昨夜本棚整理をしていて、最後まで読んでいなかったことに気づいたのだ。ああ! ビックリ!!

 しかし地球っていうのはほんと広いもんだ。こちとら埼京線に揺られ痴漢に間違えならないように必死に両手をあげているっていうのに、アマゾンではジャガーが吠え、猿が木の実を割り、ヘビが脱皮し、何だかそのあまりの違いに、まるで星空を眺めているような気分になってしまった。

 先日読んだ『虎山へ』同様、世界のどこかで、今現在も、虎や猿や、あるいは怪しい微生物が猛烈な自然のなかで生きているってことを感じられるだけで、豊かな気持ちになれるのはなぜだろう。

 郵便物が届き、何だろうと開封するとおお! いつだかときわ書房聖蹟桜ヶ丘店で、Tさんが朝礼するそのわきで、生まれて初めて化粧をされ、写真を撮られた『スカウト』リクルート刊ではないか。

 すごいすごい本文だけならともかく、なんと表紙にもこの気の弱そうな営業マンの顔が写っているし、そういえば電車の中吊り使うかもなんて連絡もあったのだ。果たしてどうなっているのだろう? 

 とにかくリクルートに迷惑をかけてはいけない。
 相棒とーるに、シモザワよ。それに主ちゃん、へーし、みっちゃん買ってくれ~。
 子分・ダボよ、お前は100冊買え!

3月25日(土) 炎のサッカー日誌 2006.03

 我が家の鉄則で、アウェーの試合は年1回というのがある。

 これは給料振込の銀行口座の暗証番号は、僕に教えないというのと同じくらい重き鉄則である。しかし去年の年末はいてもたってもいられない状況になり、土下座の末、鉄則を破り、アウェー遠征年2回目の新潟に向かった。

 どうにかその後も夫婦関係は続いているが、一触即発、激しい心理戦が続いている。

 そんななか今年のアウェーカードをどこで使うか、Jリーグのスケジュールが発表になるとすぐ考え出した。鹿島のもつ煮もウマイし、新潟の酒も飲みたい。ほんとは大分に行って勝利と共に湯布院に浸かりたいと考えているのだが、さすがにそんな金はない。そこそこ遠くて、楽しめる場所。

 どうしたもんかと悩んでいたのだが、ここまでの4試合を見て、わかったことがあった。

「こりゃ、強すぎる!! 横浜Fマリノスくらいしか真剣勝負にならんぞ」そして21日の試合の後、あわててチケットを購入したのである。

 その読み通り、真剣勝負になったこの日のFマリノス戦。しかし日産スタジアムは、試合前モニターに映るFマリノスの選手が予想したように、浦和サポの赤が半分以上埋め尽くしており、もはやこれは浦和レッズのホームだ。妻よ、ホームだったよ。

 試合開始から中盤・サイドで激しいボールの奪い合い、膠着状態が続く。
 あまり膠着していると我慢できない男・闘莉王が上がっていっちゃうよと心配したが、その穴は鈴木啓太がしっかり埋めており、ジーコよ、二人セットで日本代表にどうだ? たぶん闘莉王は中田英寿にも思い切り怒鳴りつけると思うぜ。

 そのまま前半が終わるのかと思ったところ、我が観戦仲間・オダッチがひと足先に席を離れ、トイレに向かった。男も40歳半ばを過ぎると膀胱が小さくなるのか、45分我慢できないようだ。そのとき突然、我が観戦仲間の鉄則を思い出す。

 オダッチがトイレに行くと、浦和にゴールが決まる。
 これ本当のことで、ここ数年でオダッチは、トイレのためにゴールを5本くらい見逃しているはずだ。よしっ、今だ浦和レッズ! イケっ!

 今回もその鉄則が破られることなく、コーナーキックから山田暢久のゴールで先制点。どよめくスタンド、慌ててチャックをあげながら戻ってくるオダッチ。「入っちゃった?」「そっちはまだ出てますよ」

 その後はいつもどおり前がかりになった敵の裏をつき、3対1の勝利。去年までだったらたぶん逆の展開になっていただろうが、いやはや強いのなんの。もはや日本に浦和レッズの敵はいないのではないか。こうなったらチャンピオンズ・リーグに出場せてくれ。

 強いぞ!! 浦和! ムフー。

3月24日(金)

「ねえ、バイトいない?」

 本日廻った書店さんで、立て続けにこんなことを聞かれた。
 実は本の雑誌社もなかなか学生アルバイトが集まらず、頭を悩ませているのだ。そうか人手不足はどこも一緒なのか。ちなみにこんなことを聞かれた書店さんは、2軒とも都内山手線沿線のお店である。

「もうさ、全然来なくて。参っちゃう。やっぱり他に較べて時給が低いからかなあ。でも払えないよね、正味下げてもらわないと。このままじゃ人が足りなくてお店開かなくなるよ。」

 そういえば僕の家の近所に今度ジャスコが出来るのだが、そのなかに入るお店の求人がここ数ヶ月新聞に挟まっていたのだが、ほとんどが時給950円以上で、1000円を越えているのもざらだし、なかには1200円なんていうのもあった。

 そしてその廻りの環境に合わせたのか、この中に出店するA書店さんもなんとなんと書店アルバイトでは破格の920円なんて時給が書かれていて、そのことを別の書店さんに話したら絶句していた。(そういうなかでヴィレッジヴァンガードさんだけが680円の設定で、こちらはこちらで大丈夫なのか?と心配してしまった)

 まあ学生にしても主婦にしても、あるいはフリーターにしたって未来の保証がないなら、当然時給が高いところに行くだろう。本が好きだから、なんて想いだけで、他より1時間200円も低い時給で働く人はほんのひと握り。そういえば先月他の書店の店長さんはこんな風にぼやいていたっけ。「もうずっとバイト募集しているよ。一日3,4時間ならっていうのはいっぱい来るんだ。なんで? って聞くと本は好きだけど、この時給じゃ食べていけないから、別のところとバイトの掛け持ちするっていうんだよね」

 ここ数年、書店の現場はリストラを重ね、社員減らしが進んだ。そこでお店を支えてきたのが、アルバイトであり、契約社員なのだが、今度はその人たちが集まらないという。

 景気が良くなれば、本も売れる。
 確かにそうなのかもしれないが、結局このバブル崩壊からの10年の間に、ろくに構造改革をして来なかった出版業界には、多くのツケが残っているのだ。

3月23日(木)

 嫌な予感がしたので早めに出社。8時45分。
 その嫌な予感どおり浜田は本日になっても熱が下がらずお休み。「すみません」とか細い声で謝るが、なーに、いつもフラフラ直帰してサッカーに行ってしまう僕に較べたら、1日や2日なんてなんでもない。ゆっくり休め。ちなみに僕は来年アジア・チャンピオンズリーグを追いかける予定なので、いっぱい休みます。

 通勤本は、出たばかりの『ミャンマーの柳生一族』高野秀行著(集英社文庫)。まだ読んでいる途中だが、ミャンマーの軍事政権を日本の武家社会(徳川)に例えつつ、早稲田探検部の先輩・船戸与一と取材旅行。電車のなかで思わずクククと笑ってしまうがその間に真剣な話も織り込まれていて、まさに高野紀行本。おお、解説が我が編集長、椎名さんではないか!

 浜田不在のため一日社内に籠もりデスクワーク。
 メールを打ち、チラシを作り、FAXを送る。その合間に電話も鳴り、いやはや会社にいるのも大変だ。

3月22日(水)

 直行で船橋。
 通勤本は、『ブンブン丸の「野村野球」』池山隆寛(小学館文庫)。
 実は僕、かつては浦和レッズバカだけでなく、ヤクルトスワローズバカであり、明大ラグビーバカであったのだ。しかし娘が出来たときに、妻からどれかひとつにしてくれと言われ、泣く泣く浦和レッズを選んだのだ。

 そうそうあの頃は、国立競技場から神宮球場や、秩父宮から神宮球場という、信濃町ダブルヘッダーをやっていたのだ。ちなみに池山は僕が熱心にヤクルトスワローズを応援していた頃の中心選手で、引退時の話などは思わず電車のなかで泣いてしまった。まあ、それでも野球選手本としては『在日魂』金村義明著(講談社文庫)の方が破天荒で赤裸々で面白いかも。

 船橋では、松本から帰省されている安田ママさんと打ち合わせ。その後は新小岩、錦糸町などを営業。

 錦糸町のブックストア談さんで、最愛の青春小説『ボルトブルース』秋山鉄著(角川書店)が平積みになっていてビックリ! これ2001年に出た本で、今頃平積みしている本屋さんなんて日本中でここだけなのではないか? うーん同好の士がいるのだろうか? 本日はそのことを確認できず残念無念。

 ちなみに反対側にあるくまざわ書店さんも僕の大好きなお店のひとつ。奇をてらわず、スタンダードな中規模店。こういうお店が近所にあったら毎日寄って帰るだろう。

 3時半。本屋大賞の協賛に名乗りをあげていただいた、ユーキャンさんへ。いきなり名刺交換のときに担当のMさんに「炎の営業日誌を読んでいるんですよ」と言われノックアウト。こうなっては良いカッコをしてもバレバレなので、とにかく理事長の浜本共々、感謝を伝える。

 5時。会社に戻ると事務の浜田が高熱でこちらは正真正銘のノックアウト。彼女が二日酔いでなく早退するなんて! そんな浜田を顧問・目黒は「鬼のカクラン」なんて言っていたが、ここ数ヶ月本屋大賞の雑用で毎晩遅くてまで働いているからだろう。ゆっくり休んでください。

3月21日(火) 炎のサッカー日誌 2006.02

 ぬき足、差し足、忍び足。階段を静かに下りて、前夜、こっそりレプリカユニフォームなどの観戦グッズを詰めて込んだカバンを手にする。さあ、と玄関を開けたところで、バタバタバタッと階段を駆け下りる音が、背中に聞こえる。

「パパー、ダメだよ。私も行くよー。待ってー」

 これはやっぱり血なのだろうか?
 昨年の終盤、妻のあまりに冷たい視線を感じ、仕方なく娘を埼玉スタジアムに連れていったのだが、その娘がすっかり浦和レッズにハマってしまったのだ。うーん、5歳の女の子にサッカーが面白いんだろうか? というかボールが見えているのか?

「面白いの?」
「うん、面白い。わたしポンテが好きなの」
「ポンテ?」
 5歳にしてポンテ。もしかしてお前は生まれながらのサッカー通か?
「うんうん、パパと同じ10番だからね」

 当然、僕、娘を抱きしめ「愛してる」と呟いた。

 しかし、だ、いくらサッカーが気に入り、ポンテが好きでも、僕の見ているのはゴール裏だ。若干中心から外れているとしても、大きな旗は振られるし、そこは闘いの場、罵声だって飛ぶ。アホ! 死ね! バカ! 青と赤のユニフォームを着たチームなら「ぶっ殺せ!」なんて。いやそう叫んでいるのが父親である僕で、これほど教育上良くない場所もないだろう。

 妻にそのことを話すと、「あんたさ、家でサッカー見ていても一緒なんだから、今さら教育なんて言わないで。そもそも教育なんてする気あるの?」とまるでファールを取られたサッカー選手のように両手を上に向け「なぜ?」のポーズをされてしまう。

 まあ、仕方ない。とにかく行きたいなら連れていこう。その代わり試合の間は「絶対邪魔しない」「帰りたいといわない」。それから「本気で応援する」を約束させてママチャリに乗せて同伴出動。これで父母、兄そして娘と僕の家族は3代に渡って埼玉スタジアムにいつことになる。

 前半はドンビキのセレッソ大阪相手に攻めあぐねたが、後半開始早々、我が観戦仲間S出版のYさんが叫んだ。

「遠くからでも打て!」

 その声が聞こえたのか、小野伸二がビューティフルなミドルシュートを決めて先制。こうなりゃセレッソもドンビキを辞めて攻めざるえず、やっといくらかサッカーらしくなり、あれよあれよとワシントン、闘莉王がゴールを決め、3対0。

 いやはやこの程度の調子で3点取ってしまう今のレッズは何なんだろうか? というかこれだけ強くなったからこそ娘を連れてサッカーに行けるわけで以前だったら本当に危なくて絶対連れて来なかっただろうし、妻もOKしなかっただろう。

 とにかくこれで3勝1分け。週末は唯一上にいる邪魔者・横浜Fマリノスと頂上対決。我らが目指すはアジアナンバー1。こんなところでつまずくわけもなく、さぁ、蹴散らしましょう!

3月20日(月)

 金曜日は、杉江家代々の墓を伊豆から前橋に移すため会社を休む。骨壺7つを車に積んで走らせるという貴重な体験をする。助手席と後部座席で富士山に見とれている父母もいつかこうやって壺のなかにおさまってしまうのかと思うと、ちょっと泣けた。

 今日も休んでしまえば5連休だったのだが、本屋大賞の発表を間近に控え、そんなことができるわけがなく、当然出社。9時。

 通勤本は最近マイナス傾向にあるため『本の雑誌血風録』椎名誠著(新潮文庫)。再々再々読くらいだろうか? 仕事でつまずいたときは、これと前夜読んだ『本の雑誌風雲録』目黒考二著(角川文庫)に限る。目黒さんが飛び込みで営業し、椎名さんがダメもとで嵐山光三郎さんに原稿依頼や広告営業をしていたのだ。そして多くの助っ人さんに助けられ、今があるのだ。黎明期のこのエネルギー、例え本を通じて触れるだけでも元気になってしまう。

『本の雑誌血風録』を読みつつ、椎名誠ベスト10を考える。『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』『哀愁の町に霧が降るのだ』『風景進化論』『怪しい探検隊北へ』『岳物語』『フグと低気圧』『パタゴニア』『活字のサーカス』『土星を見るひと』『アド・バード』『水域』『武装島田倉庫』『銀座のカラス』『ハマボウフウの花や風』『にっぽん・海風魚旅』シリーズなどなど、あっという間に10を越えてしまった。

 夕方、六本木へ。
 システム会社B社と本屋大賞やWEB本の雑誌の打ち合わせ。終わったのが7時で、そのまま六本木一丁目まで歩き、南北線に乗って直帰。

3月15日(水)

 9時30分出社。僕の些細な冒険です。
 通勤本は、安田ママさん及びT書店Tさんの絶賛本『凍りのくじら』辻村深月著(講談社ノベルス)。埼京線で隣り合わせた女子高生は『夕焼けの詩―三丁目の夕日』西岸良平(ビッグコミックス)を読んでいて、何だかあべこべ?

 とある取次店から電話。
「『本の雑誌』4月号を定期分のお店に送り忘れて42冊余っているんですよ。どこのお店の分だかわからないし、問い合わせも来ないので、返品取ってくれませんか?」

 問い合わせはこちらに来ていて、すでに2軒の書店さんに直送していたりする。無責任にもほどがある。こういう経費を請求する方法はないのだろうか? 

 午後から池袋などを営業。
 J書店さんでは出版社・産学社の営業マンKさんと遭遇。この出版社が出している『最新データで読む産業と会社研究シリーズ2007年度版 出版』で、なぜか僕がインタビューを受けているのだが、その売れ行きなどを伺う。

 いつも思うのだが、文芸出版社の営業は楽だよなということ。例えばビジネス版元、例えばパソコン書版元などは、類書が山のようにあるため、場所取りが大変なのだ。週に1度は顔を出し、欠本調査を行い、補充注文をいただく。それを怠ったら、すぐ違う出版社の類書がそこに並んでしまうのだ。そして一度失った平台はなかなか戻らない。うーん、そういうきちんとした仕事が僕にできるだろうか。

 夜は北千住で、閉店してしまった東京ランダムウォーク神保町店のYさんのお疲れ様会。
 Yさん! いつか絶対どこかでまたああいうお店を作って下さい!!

3月14日(火)

 9時出社。
 僕は、どうしてこんなにモラルやルールに縛れて生きているのだろうか? 『日本はじっこ自滅旅』鴨志田穣(講談社)を読んでいると、どこにも行けない自分が哀しくなる。

 紀伊國屋書店新宿本店さんを訪問。1Fの名物企画・バトルロイヤル本コーナーでは、今月のチャンピオン本として『オシムの言葉』木村元彦著(集英社インターナショナル)が平積みされていた。自社本でもないのになぜかうれしい。そういえば、ジュンク堂の田口さんも「面白かったわ」なんて話していたっけ。

 丸ノ内線をUの字に営業。大手町のK書店でHさんや御茶ノ水のM書店Yさんから「本屋大賞お疲れ様です、すごい楽しみにしてますよ」と声をかけられ、うれし泣き。こうやって支えてくれる人がいるから続けられるのだ。

 本日の目玉新刊はもちろん『Op.ローズダスト』上・下巻 福井晴敏著(文藝春秋)。この本が来年の本屋大賞ノミネート作に入ったら大変だな。二次投票の期間を伸ばした方がいいかもなんて。

 全然関係ない話なのだが、先日会社の2階の応接ソファーで新聞社の方から「文学賞について」なんて取材を受けた。「文学賞が文学の質の向上に役立っているか?」とか「ビジネス化していることについてどう考えるか?」なんてとても僕には答えられないことばかり聞かれ、「わかりません」を連発していたのだが、そのとき窓の向こうに見えるアパートのベランダに不思議なもんが干されていることに気づく。ハラマキ? うん? 

 なんとそれは着ぐるみの馬の頭ではないか!!!
 思わず目を擦り見入ってしまったが、間違いない。馬の頭だ。
 果たしてあのアパートには誰が住んでいるのか? そしてなぜ馬の頭が必要なのか? うーん、文学賞のビジネス化よりもそっちを調べた方がいんじゃないですか? と言いたくなったが我慢した。

3月13日(月)

 9時出社。
 通勤本は『日本はじっこ自滅旅』鴨志田穣(講談社)。
 何気なく買って、何気なく読み出したのだが、いやはやこの本、無茶苦茶面白い。

 あまり目的もなく日本のはじっこ(岬)を彷徨う著者。民宿のおばちゃんや飲み屋のタイ人ホステスに人生を感じ、結局自分も自分の居場所を探していることに気づく。ああ、これは中年男性版『深夜特急』なのではないか。なーにが「LEON」だ、なーにが、ちょい悪だ! 本当の男の人生はこうだぁ!と思わず埼京線で叫びそうになってしまった。

 本日は15日搬入の新刊、目黒考二著『新・中年授業』の部決日。思わず目黒さん、鴨志田さんみたいに家族に捨てられなくて良かったですね、なんて呟きたくなってしまった。

 営業は渋谷など。リブロ渋谷店さんでは、『縷縷日記』(るるにっき)市川実和子、eri、東野翠れん著(リトルモア)が1位だった。

3月11日(土) 炎のサッカー日誌 2006.01

 例年、ホーム開幕の日には観戦仲間に「明けましておめでとうございます」なんて挨拶を交わしていたのに今年は本当にその挨拶をすべき元日から試合があったし、つい先々週も「KING OF KING」を決めるゼロックススーパーカップなんてのあって、いやはやサッカーシーズンがほとんど終わらずに新しい一年を迎えてしまった。強くなるってこういうことだったのね、なんて今さら気づく、レッズサポ1名。

 もうひとつ気づいたのは、強くなるとこんなにやっかみを受けるものなのか、ということ先日行った出版サッカーバカ飲み会では、激しいブーイングの嵐。ブーイング、するのには慣れているがされるのには慣れておらず、ちょっと落ちこんだ、レッズサポ1名。

 しかししかし、本当に強い。
 未だほとんど一緒に練習していないはずの小野伸二とワシントンが、今の段階でこれだけ活躍し、しかも「使われ&使う」両刀遣いの男・長谷部誠は小野に使われ、ワシントンやポンテを使い、いやはや一段と輝きを増している。そこにW杯に前になったら突然やる気を見せ出すアレックスが加わり、いやはや攻撃の厚みは昨年の比ではない。僕、実はマリッチ信者だったのだが、この日のワシントンを見、格の違いを理解しました。だからといってマリッチ信者をやめるわけではないけれど…。

 こんなチームが、いつまでも同じ名前が並ぶジュビロ磐田に負けるわけがなく、上がりっぱなしのDF・闘莉王やキレキレ・アレックス、そして天才・ポンテのゴールで3対1と撃破。

 右腕に抱えていた娘が一言。
「パパ、今日も勝ったから、ウィーアーダイヤモンって歌う?」
「当然だろ! これから一年ずーっと歌うんじゃ!!」

3月10日(金)

 9時30分出社。いつもより30分遅いのは、浦和レッズ自由席の前日抽選に参加していたため。金曜の前抽だというのに600人を越える列。今年の目標は、四冠及びホーム平均観客数5万人突破だぁ!
 通勤本は、『サッカーという名の神様』近藤篤(NHK生活人新書)。帯の「サッカーなしで生きていけない人々。」の文字はもちろん、たとえばこんなところで興奮してしまう。

 それはアルゼンチンの危険地帯にサッカーの取材に行ったときのこと。素人の中年男性チームの試合を観戦し、そのハーフタイム時に集合写真を撮らせてもらっていたら、あるイカツイ選手に「もういいだろ! 身体が冷えちゃうんだよ」と叫ばれるのだ。草サッカーとはいえ、本気なのだ。

 それを見て案内役が「気にするな」と近藤さんを慰めるのだが、近藤さんはそのときの気分をこう記すのだ。

「----僕は気にしていなかった。プロサッカーだろうが草サッカーだろうが、金をかけていようがいまいが、真剣にサッカーをやらない人間は昔から好きじゃない。」

 10時に山梨のR書店Nさんが来社。本当はこちらがお店に伺わなければならないのに、いやはやありがとうございます。行ったことのないお店だけど、話を伺っているだけで良いお店なのがひしひし伝わってくる。

 11時30分会社を飛び出し、新宿へ。地方小出版流通センターのKさんと食事を取りつつ、新刊搬入の打ち合わせ。ついでに本屋大賞の大衆化と消費について。今年ほど本屋大賞について深く考えている年はないのでは。

 紀伊國屋書店新宿本店さんを皮切りに、ジュンク堂さん、福家書店さん、山下書店さん、丸善さん、三省堂さん、書泉さん、啓文堂さん、ブックファーストさん、紀伊國屋書店新宿南店さん、有隣堂さんと営業。会えたり会えなかったり。こればっかりは仕方なし。

 本当は、昨日の疲れがあったので今日は若干サボリモードで、のんびり営業しようなんて考えていたのに、どこでどうスイッチが入ったのか、逆上。もうどうにも止まらず、日頃なかなかお伺いできないでいた書店さんを軒並み廻る。

 本日の話題はもちろん『ダ・ヴィンチ・コード』(角川文庫)の文庫発売! ルミネ2ではまるでハリーポッター発売日のように街頭販売をしていた。いくつかの書店さんで聞いたところ売れ行きは順調のようで、それはまあ上・中・下巻の3冊とはいえ、約1700円の安さは魅力的だ。『模倣犯』ももう少し考えれば良かったのに…なんて。

 この文庫、取引条件が責任販売制を導入しているのだが、小さな書店さんでは「いいよいいよ、それで本が入るなら」とおおむね好評の様子。今後こういう取引形態が増えるだろうな。

 それとは別に目を引いたのは福家書店さんで担当者オススメ作家として平安寿子がドーンと展開されいていたのと、ブックファースト新宿ルミネ1さんで「惑う女」というまさに事務の浜田向きなフェア展開されいたことか。このフェアのうまいところは、「仕事」「出産」「結婚」という枠の他に「自意識」という枠を足したことで、そのおかげでフェア展開されている本に厚みが出ていた。

 ところがところがそんな展開で驚いていてはならなかったのだ。なんと同じくブックファーストの新宿ルミネ2さんの方では「プライドは勘定に入れません 小説にみるヴィクトリア朝文化」なんてとんでもないフェアをやられていたのだ。しかもこれ、ミニフェアではなく、棚2本くらい使った大展開。映画に合わせたとはいえ、この企画力、そして構成力、凄い!

 帰社後、何気なくアマゾンを開いたらソフトバンクさんが新書を創刊の文字。また新書かよ?と思ったが、なんとなんと僕がもっとも尊敬する高田純次氏の本がラインナップに入っているではないか! 『適当論』。うー、楽しみ!

 さあ、これから本屋大賞実行委員会の会議。2月からはほぼ毎週集まっているような。もう一踏ん張り頑張ろう!

3月9日(木)

 直行で取次店さんへ。『新・中年授業』の見本出し。

 昨夜届いた見本を手に、表紙カバーは過去の顔と今の顔の絶妙なイラストですね、と目黒に言ったら怒られた。

 あまりに早く到着してしまったため、しばしN社さんの下のマックで100円コーヒー。

 『虎山へ』平岡泰博著(集英社)読了。椎名編集著の書かれているとおり、やっとの想いでシベリアタイガーをカメラにとらえたところは、とても感動的だった。ついでにあとがきも素晴らしく、もしあとがき大賞なんていうのがあったら、8位くらいにランクインさせたい。

 それにしてもこの番組を見ていないのが、これもまた椎名編集長同様、激しく後悔である。もしテレビ局がこういう過去の番組を300円くらいで売ってくれたら絶対買うのに…。

 おお! テレビというのは、基本的にはその場限りで言ってみれば、発売と同時に品切れ、在庫なしってことなのか。この辺、何だかとってももったいないと思うけど、どうだろう?

 例年どおり今年の3月も新刊大洪水のようで、T社さんでは予定していた搬入日を断られてしまったほど。『新・中年授業』が大洪水に流されないことを祈る。

 おお! 思い出した。とある書店さんがこぼしていたのだが、今年の5月はハリーポッターの新刊が出るのだが、その時期、他の出版社が新刊を出すのを控えるのは辞めて欲しいと。それだと結局ハリーポッターの売上でプラスマイナスにしかならないから、他の読者のことも考えてねとのことだった。

 ついでにいうと5月に新刊を出し控え、その分を6月に回そうとすると痛い目にあうだろう。なぜなら6月はサッカーワールドカップドイツ大会があり、また日本代表の試合の日は町から人が消えるはず。

 見本出しを終えてから、御茶ノ水、神保町、水道橋などを営業。僕の愛した東京ランダムウォーク神保町店が閉店していた。見たくない。

 夜は助っ人学生送別会。新宿・海森2。タテノとスズキ先輩がいなくなるなんて淋しすぎる。別れを惜しみつつも、明日は早起きなので22時30分に一足先に帰宅。

3月8日(水)

 9時出社。
 通勤音楽は、発行人浜本に借りたFREE「The Best Of Free」。通勤本は、「本の雑誌」2006年3月号で椎名編集長が紹介していた『虎山へ』平岡泰博著(集英社)。編集長と一緒で僕も積読になっていたのだが、思わず探しだし、読み出したのである。

 10時前に、『本の雑誌』4月号が到着。早出アルバイトをお願いしていたてっぺーとアマノッチはまだ着いておらず、浜田と松村の3人で社内に運び入れる。ついに椎名編集長が表紙に登場か? 暖めて来た企画「本棚プロファイリング」はやっぱり面白い。プロファイリングされたい方、写真を送って下さい。

 運び終えたところに郵便物が届く。白水社さんから届いた僕宛の封書を開けると「出版ダイジェスト」第2036号が入っているではないか! おお!! 僕が書いた「サッカー本ワールドカップ」がなんとなんと1面に掲載されている。うーん、何だかいつも「本の雑誌」に編集後記を書いているので自分の文章が活字になることに何ら感慨もないのだが、やはり他社の、それもかなり一生懸命書いた原稿だけに今回は感動も一入。WEB版出版ダイジェスト(http://www.hakusuisha.co.jp/current/digest.html)

 本日は3月15日搬入予定の新刊『新・中年授業』目黒考二著の注文〆切作業と本屋大賞の山盛りデスクワークがあるため、外回りを断念。外に出られない営業なんて存在価値がないではないか…と嘆きつつも仕方ない。

 あれやこれや事務の浜田と作業を繰り返しているとお昼。藤原がささ家にお弁当を買いに行くというので、からあげ弁当を買ってきてもらう。そういえば前日の文庫王国の取材の後、教えてやったラーメン屋に行ったの?と藤原に聞くと、もちろんと力強い返事。夕方5時に食ったラーメンは何食?と再度聞くとおやつですの答え。間違いなくこいつは胃下垂だと思う。

 2時頃、身体に変調をきたす。頭痛そして吐き気。やっぱり一日中社内にいられない身体なのだ。あわてて飛び出し、笹塚駅前のK書店さんへ。YさんやWさんと話していると身体がすっと楽になる。

 そうはいってもこのまま外回りを続けられるわけでなく、うなだれて会社に戻り、デスクワーク。こんな日が続いたら身体も本来の仕事も滞ってしまうので、今日中にケリを付けようと、助っ人を大量投入し、浜田と必死になって終わらせる。

 8時退社。電車のなかで『本の雑誌』4月号を読む。思い切り広げて、なるべく他の人に表紙が見えるようにして、読む。広告塔だ。

3月7日(火)

 9時出社。
 朝の埼京線で、読書相談室で教えていただいた『波に座る男たち』梶尾真治著(講談社)読了。その帯で恩田陸さんが書かれているとおりまさに「由緒正しきニッポンの、心優しいエンターティメント!」だ。僕、漁師に憧れているのだが、大場会長の下、任侠丸に乗りたい。

 面白そうな本の情報を拾ったので同好の士、椎名編集長にメモ。『南の探検』蜂須賀正著(平凡社ライブラリー) 。

 午前中は昨日終わらなかった本屋大賞の事務作業。案内を作って封入しの繰り返し。それを終えて会社を飛び出し、吉祥寺へ。R書店さんを訪問するがK店長さんは遅番で午後出社とのこと、ならばとL書店さんに向かうとY店長さんがちょうど新刊台を耕しているではないか。

 しばらく仕入れ部勤務されていたYさんがこうやってまた新刊台をかなり几帳面に直している姿に感動を覚え、しばし声をかけずその立ち居振る舞いを観察する。声をかけるとちょうど昼食に出るタイミングだったとのことで、そのままご一緒す。

「売れているのは『陰日向に咲く』劇団ひとり著(幻冬舎)かなぁ。あとは角川文庫が表紙と帯をつけて出した『十九歳のジェイコブ』 中上健次著とか『いちご白書』ジェームズ・クネン著が調子良いよね。連載、なんか売り場に戻ったら書きにくいんだよね~。もうちょっと待っていてね」

 おお『陰日向に咲く』劇団ひとり著(幻冬舎)は確か出てすぐのときに北千住のK書店Mさんに「奥田英朗みたいですごい面白いんですよ、芸能人本だと思ってなめちゃダメです」といわれていたのだ。次に読もう。

 しかし本屋大賞疲れの僕に「ガンバレ!」と声をかけてくれるYさんの優しさが身に染みる。

 昼食後、R書店さんへ向かうとこちらもK店長さんがちょうど新刊台を耕している最中。本屋大賞の話などしつつ、あまりに忙しそうなので足早に営業を終え、僕も3時に市ヶ谷に行かなきゃならず慌てて駅へ向かう。

 図書普及さんに今年も本屋大賞の賞品である図書カードの提供をお願いし、快く了承をいただく。うれしいかぎり。そういえば、今年からユーキャンさんが、本屋大賞の趣旨に賛同していただき協賛していただくことになったのだ。こちらも当然足を向けて寝られないほど感謝しています。

 その後は、編集部赤青人間・藤原と待ち合わせし、某所に年末発売の『おすすめ文庫王国2006年度版』の取材。想像していた以上に面白い話が聞け、これからしっかり取材していこうと決意。

 いくつかの書店さんを営業し、そのまま、ほぼ同年代同キャリアの親しい出版営業仲間で酒。いろいろと嘆きつつ、次に就きたい仕事という話題になったとき、3人の想いがピッタリ揃ったのには笑ってしまった。

「一次産業、食堂、ルート配送のトラック運転手」
 
 ようは虚業ではなく実体のあるもので仕事をしたいってことだ。しかも僕ら営業マンは虚業の上に虚の数字(納品→返品など)を追いかけているから、その想いも強くなるというもんだ。

 それでも気楽に話せる仲間と酒を飲み、かなり気持ちが楽になる。そして僕の中の甘えにも気づかされ、大いに役立つ酒であった。

 帰宅の電車では『サッカーという名の神様』近藤篤著(NHK生活人新書)を読む。さすが近藤篤、写真だけでなく、文章も鋭い!

3月6日(月)

 薄毛のくせして一丁前に伸びれば邪魔になるもので、『新・中年授業』の営業に「本屋大賞」が佳境を迎え、おまけに増刊号もついてきちゃ、床屋に行く暇も取れず岡田准一のように前髪タラリ。しかし1000円15分の時間が取れないとはこれいかに。思わず新宿から熱海方面に逃亡しそうになる今日この頃。嗚呼、本屋大賞がある限り、毎年2月末から4月上旬まで、こうやって追い込まれることになるのだ。

 まあ、それは投票している書店員さんも一緒で、全部読まなきゃならない二次投票を終え、やっとこれで好きな本が読めるよ~との声をあちこちで聞く。「ほんとは読んでないんでしょ?」なんて批判するスレッカラシの皆様、是非ともそういう声とついでに下手したら11冊本を買わなきゃならない金欠の嘆きを聞いていただけたら幸せです。

 とにもかくにも生きてます。生きて営業と営業事務と、本屋大賞の細々なことと、酒を飲んでおります。それから浦和レッズの2006年シーズンに想いを寄せております。早くゴール裏で叫び声をあげて、ついでに「○○バカヤロ~」とこっそり叫んでスッキリさせたいのですが、その前に目の前の仕事の山を片づけにゃならんわけで、ハァ、生きていくのは大変です。

 でもでも遅く帰って一人でメシ食って、風呂に入って、読みかけの本を持って寝室に向かい、家族三人の寝息を聞くのも幸せなもんです。とくに5歳になった娘は明け方になると僕にしがみついてきて「パパ大好き」なんて言うもんですから、まあ、頑張って働きます。いつかきっとこういうことを他の男に言うんだろうけど…。

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