8月30日(木)
昨夜は、なぜか毎月下版前になると風邪をひく浜本から突然ピンチヒッターの原稿を頼まれた。事前注文の〆切前も決算前も風邪を引かない僕は、一気に書きあげ、帰宅。すでに家族は寝ていたので、目黒さんの号泣本『渾身』川上健一(集英社)を一気に読む。
うーん……。陸奥三部作や<バッテリー>シリーズのように目黒さんと一緒に騒ぎたかったのだが、僕にはあまりピンと来ず、涙の1滴もでなかった。残念。
物語のクライマックスであり、しかも構成上無茶な!と思うほどページをさかれて描かれる奉納相撲のシーンには、確かに胸が熱くなったのだけれど、ストーリー自体が僕には甘過ぎた。
お口直しに読み出した『メキシコの青い空 実況席のサッカー20年』山本浩(新潮社)がやめられなくなり、そのまま一気読み。
マラドーナが生きながらに伝説となった、あのワールドカップメキシコ大会イングランド戦の5人抜きゴールを「マラドーナ……、マラドーナ……、マラドーナ、来たー、マラドーナァー」と実況し、こちらも伝説となったNHKのスポーツアナウンサー山本浩が、そのときの放送とともに振り返る、20年間のサッカーの歴史。
ドーハも、アトランタ五輪予選も、ジョホールバルも、98年ワールドカップも、すべてこの山本節によって見てきた僕にとっては、こちらのほうこそ号泣の一冊。ゴチック体で書かれたそのときの実況コメントを読むと一気にその時代、その瞬間が甦り、泣けてくる。
ジョホールバルでは、あの岡野雅行が延長戦に入るピッチを犬のように走り回っていた姿。そしてその後できた大きな日本代表の円陣に向かって、山本浩アナウンサーはこう話出したのだ。
「このピッチの上、円陣を組んで、今、散った日本代表は、私達にとっては『彼ら』ではありません。これは、『私達』」そのものです。」
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ちなみに本筋とは関係ないけど、このなかで描かれる、こちらも放送中にセルジオ越後と正反対のことを言いつづけケンカ状態になった伝説の解説者・松木安太郎には大笑い。まったく同じような本を松木中心で作ったら、それはもうエンタメ・ノンフの傑作になること間違いなしなんだけど。
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直行で立川へ。
本屋大賞を一緒にやっているオリオン書房ノルテ店の白川さんに、最近出版業界について考えてることを一方的に話してしまい、ご迷惑をおかけする。でも、この闇は抜けることができるのだろうか…。
サザン店のHさんと昼食後、しばし営業。そしていつもより早く会社に戻る。
本日は、なんと高野秀行さんと大槻ケンヂさんによる「マンセー・ムーノー人間」対談なのだ。これを進行できるのは、唯一社内でムーノーのある僕だけだろうと無理矢理名乗りをあげて、立ち会う。
それがもう大笑いの対談で、進行どころじゃなくただ腹を抱えているだけに終わってしまった。その「マンセー・ムーノー人間」対談は「本の雑誌」11月号に掲載の予定です。